【夏バテ注意】「エアコン必須」「息苦しくなる」“暑さ”が暴力的な映画5選:おすすめ
暑い……、とにかく暑い。連日続く記録的な暑さに、早くも「参りました」と白旗をあげたい気分ですが、そうは問屋が卸さぬとばかりにこの暑さはしばらく続きそうです。
ところで、2025年6月から配信中のNetflix映画『ストロー:絶望の淵で』は、経済的困窮のどん底にいるシングルマザーの姿を描きながら、単なるサスペンスとしてではなく、現代社会の「苦しみ」や「やるせなさ」を浮き彫りにした考えさせる作品でした。
未見の方は是非チェックしてもらいたいのですが、その衝撃的な結末もさることながら、目を引いたのは「暑さ」の描写。エアコンを止められた室内の様子は観ているこちらも思わず息苦しさを感じるほどです。
そこで今回は、暑い夏にあえて観たい(?)、「暑さ」が画面からにじみ出てくるような映画5選を紹介します。
観ているだけで夏バテ注意!?
『狼たちの午後』
公開年:1975年
監督:シドニー・ルメット
主演:アル・パチーノ、ジョン・カザール、チャールズ・ダーニング ほか
【あらすじ】
ニューヨーク、猛暑の白昼。銀行強盗に失敗し、人質を取って立てこもることになった男ソニー。蒸し暑い銀行内で、彼は警察との交渉を続けながら、次第に追い詰められていく。時間が経つにつれて銀行内の温度は上がり続け、人質たちとの奇妙な絆が生まれていき――。
【おすすめポイント】
シドニー・ルメット監督の傑作として名高い本作は、密閉された銀行という限られた空間での暑さの描写が圧巻です。アル・パチーノの額に浮かぶ汗、蒸し暑い空気に包まれた銀行内の息苦しさ、そして登場人物たちの心理的な重圧が、暑さという物理的な不快感と見事に重なり合います。実際の事件を基にした作品でありながら、ルメット監督は暑さを単なる背景ではなく、主人公の絶望感や焦燥感を表現する重要な演出手法として活用しています。特に、汗だくなパチーノの演技は、観る者にも同じような息苦しさを感じさせる名演です。
『野良犬』
公開年:1949年
監督:黒澤明
主演:三船敏郎、志村喬、淡路恵子 ほか
【あらすじ】
戦後間もない猛暑の東京。村上刑事は満員電車でピストルをスリに盗まれてしまう。慌てて犯人らしき人物を追うが見失ってしまう。奪われたピストルには7発の実弾が残っている。ベテラン刑事の佐藤とともに必死にピストルをを探す村上だったが……。
【おすすめポイント】
黒澤明監督初期の傑作で、戦後復興期の東京の蒸し暑い夏を背景に展開される犯罪ドラマです。三船敏郎演じる村上刑事の額に浮かぶ汗、照りつける太陽の下での聞き込み捜査、蒸し暑い闇市の雑踏など、暑さの描写が物語全体を支配しています。村上が犯人を追って街を歩き回るシーンで、汗だくになりながらも必死に捜査を続ける姿は、彼の使命感と責任感を見事に表現。暑さを単なる季節感の演出ではなく、主人公の心理状態や社会の混乱を象徴する重要な要素として巧みに活用して、観る者に強烈な印象を残します。
『ドゥ・ザ・ライト・シング』
公開年:1989年
監督:スパイク・リー
主演:ダニー・アイエロ、スパイク・リー、ビル・ナン ほか
【あらすじ】
その年一番の暑さを記録することになったブルックリンの一日。ピザ屋で働く配達員ムーキーの周辺でちょっとしたことからトラブルが発生。それはやがて人種間の衝突といえる暴動に発展し――。
【おすすめポイント】
スパイク・リー監督の出世作としても知られる本作。ブルックリンの蒸し暑い夏の一日を舞台に、気温の上昇と人々の感情の高ぶりが完全にシンクロしています。登場人物たちの汗ばんだ肌、アスファルトから立ち上る陽炎、開け放たれた窓から聞こえる扇風機の音など、画面に映し出される映像的要素が暑さを感じさせます。また、暑さが単なる物理的な不快感ではなく、人種間の緊張関係を象徴する重要な演出装置としても機能していると言えるでしょう。
『フロム・ダスク・ティル・ドーン』
公開年:1996年
監督:ロバート・ロドリゲス
主演:ハーヴェイ・カイテル、ジョージ・クルーニー、クエンティン・タランティーノ ほか
【あらすじ】
全米各地で強盗殺人を繰り広げたゲッコー兄弟は、むき出しの太陽光が降り注ぐ中、メキシコへの逃亡途中で牧師一家を人質に取る。国境を越えた先にあるバー「ティッティー・ツイスター」で一夜を過ごすことになるが、そこには恐るべき秘密が隠されていて……。
【おすすめポイント】
ロバート・ロドリゲス監督とクエンティン・タランティーノがタッグを組んだ本作は、メキシコ国境近くの砂漠地帯の乾いた暑さが印象的です。前半のクライムサスペンス部分では、逃亡中の緊張感と砂漠の灼熱感が絶妙にマッチしており、登場人物たちの汗ばんだ表情がジリジリと画面を焦がすかのようで、「もう勘弁してよ」と唸ってしまいそうです。一転、後半の怒涛展開を過ぎた後は、疎ましい太陽が安らぎに見える、かも。
『フォーリング・ダウン』
公開年:1993年
監督:ジョエル・シューマカー
主演:マイケル・ダグラス、ロバート・デュヴァル、レイチェル・ティコティン ほか
【あらすじ】
ロサンゼルスの猛暑の中、交通渋滞に巻き込まれた中年男性が、突然、車を乗り捨てて歩きだす。しかし、その道中で次々と理不尽な出来事に遭遇し、彼の怒りは爆発寸前まで高まる――。
【おすすめポイント】
ジョエル・シューマカー監督による社会派サスペンスで、ロサンゼルスの灼熱の暑さが主人公の心理状態とシンクロした本作。特にオープニングシーンでの、マイケル・ダグラス演じる主人公の額に浮かぶ汗、アスファルトから立ち上る陽炎、車のエアコンが効かない状況など、暑さの描写が主人公だけでなく、観客をも精神的に追い詰めていくかのうようです。暑さが単なる気候条件ではなく、現代人のストレスや社会への不満を象徴する重要な演出手法として用いられた、観る者に強烈な印象を残す一本です。
それぞれ異なる時代と場所を舞台にしながらも、「暑さ」という共通の要素を巧みに活用する映画5選でした。猛暑の夏だからこそ、エアコンの効いた部屋で心穏やかに「暑い」映画を堪能してみるのはいかがでしょうか?