「正体不明の大物が突然ヒット!」堤防小物釣り最中にヒットした大物の正体を執念で追ってみた
長く釣りをしていると突然正体不明の魚に糸を切られた、そんな経験があると思う。私も先日近所の海へ小物釣りに出かけた際に思わぬ大物に遭遇した。
堤防で小物五目釣りを満喫
冬にしては珍しく風もなく暖かい日曜日だった。賞味期限切れのシーフードミックスとコーン、残り物のV9他の撒き餌を持って近所の海に出かけた。
釣り方は簡易的な団子釣り。団子が撒き餌を兼ねてくれて小魚を集めやすく、余った食材や餌の消費もできるので、時々この釣り方で小物の五目釣りを楽しんでいる。
小魚が連発
この日は小魚たちも活性が高い様で、団子を投入してすぐに竿先に小さな反応が現れた。ベラ、フグ、チャリコ、カサゴ、グレ、全部手のひらサイズだが色々な魚が次々に釣れる。
突然の大物ヒット到来
「楽しい!大物じゃなくても釣りは十分楽しいのだ!」
なんて思っていたら、いきなり竿が大きく引き込まれた。
「な、何だ!」
驚きつつ慌てて合わせを入れるも手応えはない。巻き上げると餌が取られていた。どうやらタイミングが遅すぎたようだ。
「何だったんだ?今の……」
餌をつけ直して再投入、なんとまたすぐに食ってきた。今度は素早く合わせるとわずかに手応えがあった。が、次の瞬間にはまたしても竿は軽くなってしまった。今度はタイミングが早すぎたらしい。
正体を執念で追う
「正体は何だかわからないが、間違いなくデカいヤツがいる!もう絶対釣る!!」
10分前まで「大物じゃなくても釣りは楽しいもんね〜」なんて言っていた人とは思えない変わりようだ。
しかし私の張り切りとは対照的にその後だんだんと魚からの反応は薄くなっていった。
エサを変更してみる
小魚の反応すら少なくなってきたところを見ると、どうやらエビ餌に飽きたらしい。コーンに変えてみるが、先ほどの大物どころか餌取りの小物すら反応しない。どうやらこの辺りの魚は野菜嫌いらしい。
アサリに変更
「何でもよく食べないと大きくなれませんよ」とお母さん目線で注意をしつつアサリに変更する。しばらくすると小物のあたりが出始めた。やはり野菜より肉好きらしい。20分が経過したが、あの大きく引き込むアタリはまだ無い。ヤツはアサリも嫌いなのだろうか、好き嫌いの多いやつだな。
再度大物のアタリ到来
「何でも食べないと……」と再びお母さん登場の瞬間、竿が大きく曲がった。
「来た!」素早く合わせるもまたまた空振り……。
仕掛けを見ると、ヤツは針のない箇所である餌の下半分だけを狙って食べていた。思った以上に賢い、もしかしたら有名大学を出てこの海に就職したエリート魚なのかもしれない。
くだらないことを思いながら次の手を考える。
針やエサ付け方を微調整
どうやらヤツは仕掛けと餌がよく見えているようだ。警戒心の強い魚に対しては糸を細く、針も小さいサイズに変更するのがセオリー。ついでに餌も小さくつけて一口で食わせてしまうことにした。
これなら口元に掛からなくても釣れる可能性は上がるだろう。飲み込まれても針外しで取れば良いし、万が一弱らせてしまったら持ち帰って晩御飯のおかずにすればいい。しかしこの作戦にも幾つか欠点がある。
欠点
欠点その1は『針も餌も小さいので餌取りたちが今まで以上に釣れてしまう』だ。ヤツが来る前に小魚が掛かりすぎてしまう。そこで離れたところに撒き餌を打ち小魚をそちらに寄せてから、その隙に仕掛けを沈めることにした。
ついに針掛かりするもバラシ
辛抱強く待つことさらに20分、またまた大きく竿が曲がった。「ヨシッ!」今度はしっかりと手応えを感じる。ついにヤツをかけたのだ。それにしても強い引きだ、元々柔らかい筏竿だが根元近くから曲がっている。
魚は下へ下へとどんどん仕掛けを引き込んでゆく。ドラグ調整と竿さばきでどうにかしのいでいたが、急に手応えが無くなった。作戦の欠点その2『細い糸は切られる可能性あり』である。
オリジナル仕掛けを自作
巻き上げた仕掛けを見ると道糸とハリスの結束部から切れていた。どうやら0.8号の糸ではヤツの引きと重さに耐えられないらしい。そこで針も糸も元の2号に戻しつつ、仕掛けを工夫してみることにした。
餌の中の針のない部分だけを狙って食べるなら餌の中を全て針にしてみれば釣れるんじゃない?というその場の思いつきで図のような仕掛けを試してみることにした。
エサだけ取られる
しばらくすると餌取りの小さいアタリの中に時々強いアタリが混じるようになった。間違いなくヤツだ。が、今までのようにいきなり大きくは引き込まない。どうやらこの変な仕掛けをかなり警戒しているようだ、さすがエリート。
それでも時々来る強めのアタリにタイミングを合わせるが、毎回しっかりと餌だけ取られてしまう、実に悔しい。それにしても隙間なく針が入っているのにどうやって餌だけ食っているんだろ?ヤツには手でも生えてるんじゃなかろうか。
犯人は誰だ?
ここで今までの状況からようやくヤツの正体を考えてみることにした。ターゲットを決めて釣り方を絞るのだ。実はここまで3時間もヤツと戦っている。もっと早く気付くべきである。
カワハギ?
ヤツは餌をとるのがうまい。また植物性より動物性の餌が好みのようで特にアサリに反応が良い。アサリ餌といえばカワハギだが、いきなり引き込む大きなアタリと糸が切られるほどの重さからは少々考えにくい。
シーバス?
次に気になるのは糸が切れた箇所。切れていたのは道糸とハリスの結束部だった。歯の鋭い魚がハリスを噛み切ったのではなく、引きの強さと自重で糸が引き千切られたのだ。ここらの海で強い引きと重さのある魚といえば最初に思いつくのはシーバスだが……。彼らアサリとか食いましたっけ??
目が良いサカナ
針のない箇所の餌を狙って食べたりと、目が良く警戒心が強い。針2個の変な仕掛けを試した時は目に見えて反応が変わった。ま、自分が魚でも警戒しそうなヤバい見た目の仕掛けではあるが……。
チヌが大本命
考察からヤツの正体をちょっと良いサイズのチヌと推測した。目が良く餌を取るのが上手い、警戒心が強いわりに何度も餌を食ってくるほど貪欲、引きは竿を大きく曲げるほど強く重い、総合的に考えておそらく間違いないだろう。
ただ雑食性なのにコーンだけ全く食べなかったのは少し気になるが、まぁ中には野菜嫌いのチヌもいるんだろう。
ついに掛けた!
仕掛けを元の1本針に戻し、餌に小さめのアサリを付ける。ついでに団子のサイズも少し小さめして投入。しばらく待っていると竿先に強めのアタリが出始めた。間違いない、ヤツが餌を突いている。
ここで合わせるとまた空振りするので、じっくりとチヌのタイミングで待つ。次に来た強めのアタリにわずかに糸を送り込んでから大きく合わせた。「ノった!」
慎重にやり取り
相変わらずすごい引きだ、またしても竿が満月に曲がっている。今度は完全に針がかりしているし、糸も2号の通しにしているので切れる心配はないが、何度も逃げられているので慎重にやり取りする。
いつもより弱めに設定したドラグで時間をかけながらゆっくりと巻き上げてゆく。格闘すること数分、ようやく魚体がぼんやりと見えてきた。「ん……??」
正体はデカフグ!
魚は水面近くまで上がって来ている。ぼんやりと見えるその魚体はやはりデカい。……のだが、何かがおかしい。しばらくしてその違和感の正体に気がついた。シルエットだ!チヌみたいな細身じゃない……何か妙に四角い気がする。
「……まさか、あなたはフグさん……ですか?」
思わず敬語になるくらいデカいが、どうやら間違いないようだ。フグは相変わらずグイグイ引っ張っているが、何だか急に体の力が抜けてしまった。デカすぎて抜き上げられそうもないので、最後はお隣りの釣り人からタモを借りてようやく釣り上げた。
ヒガンフグ
それにしてもデカいフグだ。お馴染みのクサフグは可愛い手のひらサイズだが、このフグは余裕で30cmを超えている。どうやらヒガンフグという種類らしい。ヒガンは彼岸の意だろうか?何だかおっかなそうな名前である。ついでに顔つきも迫力あって怖い。
釣り上げた達成感もそこそこに撮影だけ済ませて早々にお帰りいただくことにした。何度も釣られてここまで成長したフグなら貪欲さと重い魚体とパワー、そして意外なほどの警戒心や慎重さをも身につけるのかもしれない。
試行錯誤が楽しい!
今回は予想外のサイズのフグに驚いたが、正体の分からない魚相手の釣りはいつも以上に楽しい。試行錯誤の後、その魚をようやく釣り上げられたりするともう最高である。ただ食べれる魚だともっと良かったと思わなかったわけでもないのだが……(笑)
<夏野/TSURINEWSライター>