散居村の原風景残る砺波平野 築130年の古民家で味わう郷土料理【農家レストラン大門】主役は手延べ大門素麺
伝統的な農村の原風景が残ると言われる砺波平野の散居村。
一面に広がる田畑の中に、風雪を避けて東向きに建つ「アズマダチ」家屋と周囲を守る屋敷林が点在するようすは、四季折々の自然とそこで暮らしてきた人の知恵や営みを象徴する景色です。
そんな砺波の大門(おおかど)地域に、この地域で受け継がれる郷土料理を築130年の民家で味わえる農家レストランがあります。
築およそ130年の伝統家屋で郷土食「農家レストラン大門」
「農家レストラン大門」は、1897(明治30)年に建てられたアズマダチ家屋をこの地に移築し、改装したお店。
2025年でオープンから10年を迎えます。
見るからに立派で重厚な造りで、中に入っても富山の伝統的な家屋といった雰囲気。
太い柱や梁が存在感を放ち、広くてがっしりと安定感のある空間です。
床の間に飾られた人形や仏壇なども、信心深く様式を大事にするこの地の暮らしぶりを再現していて、地元の人だけでなく、帰省した家族や観光客にとっても富山らしいおもてなしの場として人気のレストランです。
腕をふるうのは郷土料理を知り尽くす「とやま食の匠」
「農家レストラン大門」で提供されるのは、大門地域の特産品として知られる大門素麺をはじめとした砺波の伝承料理の数々。
腕をふるう女将の境嘉代子さんは、富山の食文化について卓越した知識や技術を持つと県に認められた「とやま食の匠」の伝承の匠。レストランでの仕事のほか、普段から県産食材を活用した郷土料理を広めるための活動をしています。
それでは、「農家レストラン大門」で味わうことができる、砺波のハレの日の御膳の料理を紹介します。
昼メニューの御膳「恋茜」
昼メニューの御膳「恋茜(こいあかね)」です。
同じ砺波市の特産であるチューリップの品種名から名づけられました。
主役は大門地域の名物「大門素麺」
メインは砺波市大門地域の名産品「大門素麺」。富山らしく渦巻きかまぼこが添えられています。
大門素麺は、江戸時代から続く伝統の手延べ製法で作られる素麺。強くよりをかけて作られ、農閑期を利用して作られたことから冬の冷たい空気にさらすのが特徴で、しっかりとしたコシとなめらかなのどごしに仕上がります。
長い麺を切らずに丸まげ状に丸めた形状も独特で、「丸まげ素麺」とも呼ばれます。
細くてもコシがある麺は、噛むほどに1本1本の弾力を感じられ、キリッとした生姜との相性も抜群です。
ダシには玉ねぎの甘みとしいたけの風味をたっぷりと活かし、素朴ながら深い味わい。ダシととるために使った玉ねぎとしいたけは具として盛り付けられ、決して食材を無駄にせず大切にいただこうという丁寧な心が感じられます。
葛きり、いとこ煮… 膳を彩る小鉢の数々
華やかな3色の葛きりは、添えられたわさびを煎り酒に溶き、出汁をつけていただくおかずとしての1品。
べっこう、えびすとも呼ばれる北陸地域の郷土料理「ゆべす」。
ダシと溶き卵を寒天で固めたもので、この地域のゆべすは生姜の香りがさわやかです。
こちらは、いとこ煮。お盆や正月、法要などで食べられてきた富山の郷土料理のひとつです。
小豆、カボチャ、ニンジン、里芋、大根、豆腐など、かたいものから順に煮ていく料理で「追い追い煮る」の意味から、「追い追い」と「甥々(おいおい)」と掛けた洒落で、「いとこ煮」と呼ばれるようになったのだとか。
名前の由来は諸説あり。ごはんにあう「よごし」
こちらは、「よごし」。
大根の葉やナスなどを茹でて細かく刻み、味噌で味付けした郷土料理です。
季節によって小松菜や人参の葉をつかうこともあり、家庭によっても煎りゴマや醤油、砂糖、ゴマ油を加えるなど、味付けの特徴が違います。
ごはんによくあう、富山の家庭の味と言える副菜です。
味噌で汚すように調理することから「よごし」という説もあれば、作り置きして翌日に食べるため、「夜を越す=夜越し」が名前の由来という説もあります。
のどかな風景とともに伝承料理を味わえる農家レストラン大門。
1皿1皿にまつわる歴史や文化と一緒に味わうと、郷土の食の魅力をより深く感じられそうです。
出典:KNBテレビ「いっちゃんKNB」
2025年6月17日放送
記事編集:nan-nan編集部
【農家レストラン大門】
住所 富山県砺波市大門165
営業時間 11:00~14:00
17:00~22:00
(10名様以上の団体は要予約)
(夜の部はすべて要予約)
定休日 年末年始