初めての釣りで出会った<フナ> 釣りと魚の世界に足を踏み入れるきっかけに【私の好きなサカナたち】
Webメディア『サカナト』には様々な水生生物好きのライター(執筆者)が所属しています。そんなライターの皆さんが特に好きなサカナ・水生生物について自由闊達に語らう企画「私の好きなサカナたち」。今回はサカナトライター・東ガイさんによる「私の好きなサカナたち」をお届けします。
筆者が魚に夢中になるきっかけを与えたのは、釣りを始めて最初に出会ったとある魚でした。
それは、日本の童謡歌「故郷」にもでてくるフナです。この魚をきっかけに、筆者は魚と釣りの世界へ足を踏み込んでいくことになりました。
今でも大好きなその魚は全体的に丸っこく、シンプルな銀色で構成されたその魚体は、どこか愛着が湧く感情を思わせてくれます。
釣りはフナに始まりフナに終わる
魚の図鑑をめくっては絵を描くといった日々を送っていた子ども時代。そんなある日、父親の部屋にあった『釣りキチ三平』の漫画をふと手にしました。
魚釣りがしたくてたまらない自分を家族が見かねて、「釣りはフナに始まりフナに終わる」という格言の元、祖父からフナ釣りを教わることになりました。ここで筆者はフナに出会い、魚と釣りが好きになっていきました。
田んぼの横を流れる小水路に、蒸かしたサツマイモをエサに竿を構える。何もかもが初めてであることにワクワクしていたことを今でも覚えています。そして、ウキが沈んだのを合図に心地の良い竿の曲がりを楽しみ、あがってきたフナにしばらくの間見とれていたことも覚えています。
ここで釣れたフナはギンブナと呼ばれる種。日本各地に分布する魚であり、河川の下流域や田んぼの水路、池や沼などでよくみられます。釣りの基礎となる技術を学べる魚でもあるので、老若男女問わず、多くの釣り人に愛されている魚でもあります。
口をパクパクさせている姿にはどこか愛着が湧き、筆者に至っては初めて見た魚なので、特別な思い入れがあるのです。
様々な魚や釣りを覚えてきましたが、全ての原点はこのフナ。この魚に出会っていなければ、魚に対しての思いが今とは違うものになっていたかもしれません。
ミステリアスな生態
そんなフナですが、未だ解明されていない生態をもつミステリアスな一面があります。
フナの仲間であるギンブナは、そのほとんどがメスなのです。
生物である以上、オスとメスがいなければ種を残せません。しかし、ギンブナのメスは他のフナの仲間のオスと交配することで、子孫を残すのだそうです。
本来は他種魚との交配では“交配種”と呼ばれる種が生まれますが、ギンブナに限ってはオスの遺伝情報は使われず、純粋なギンブナが生まれるのです。しかも生まれたギンブナは、もちろん全てメス……。
この事実を知った時は、驚きという一言では足りない感情になりました。本当に面白い魚です。
この時期になると筆者は小さな水路へ行き釣りをしますが、何度釣っても「また会えたな」と思わせてくれる魚です。今年もたくさんのフナと出会えるように、色んな川や水路に赴きたいと思います。
(サカナトライター:東ガイ)