元ヤングケアラー・樅山さん 「家族が幸せになれる仕組みを」 条例施行で支援協議会委員に、計画策定へ
「ケアをされる人もする人も自分らしい生き方ができる藤沢づくり条例」が1日から、藤沢市で施行された。高齢者や障害者などの家族を日常的に介護する「ケアラー」を社会全体で支えようと、市は施策の実現に向けた支援計画の策定を進め、幅広い人材から意見を募る支援協議会も設置する。その委員の一人が、樅山(もみやま)枝里さん(横浜市在住・34)。近年課題となっている18歳未満でケアを行うヤングケアラーだった。
樅山さんは3人家族。母が統合失調症で幼少期から看病に加え、父が働きに出る日中は掃除や洗濯、皿洗いといった家事をこなす日々を送った。「当時世間ではヤングケアラーという言葉も知られておらず、福祉支援もなく、家庭内で解決するしかなかった。それが当たり前だと思っていた」
独り言をつぶやいたり他人を凝視しながら笑いかけたり。母の体調には波があったが、家庭訪問時の教員や遊びに来る友人など、常に周りの目を気にしながら生活した。幻聴が聞こえる母は時に娘の言葉で自身をののしられたと思い込み、言ってもいないことで揉めることも。「助けて」。高校受験の勉強に励む中、母が涙ながらに何かを訴え、真夜中に古い友人に電話を掛けようとする。ケアされる側もケアする側も限界だった。父と話し合った結果、高校に入ると母を精神科の病院へ長期入院させることに。
樅山さんは大学3年で統合失調症の親と向き合う子ども向けボランティア団体「ひとりやないで!」を発足。家族会や勉強会などを開いてきたほか、精神保健福祉士として現在は障害者を雇用する企業への人事支援を行う会社に勤めている。
「ケアラーの現状を多くの人に知ってほしい。精神・身体・知的障害、難病、親が外国籍など、ケア内容は家庭ごとに違う。家族が幸せになる仕組みを作っていけたら」