今田美桜さんスペシャルインタビュー【NHK連続テレビ小説「あんぱん」主人公・朝田のぶ役】
2025年前期の連続テレビ小説「あんぱん」は、アンパンマンの作者であるやなせたかしさんとその妻・小松暢さんをモデルとした物語。戦前から戦後の激動期をバイタリティーいっぱいに駆け抜ける主人公・朝田のぶを演じるのは、今田美桜さんです。
3月末に発売し、売れ行き好調につき早速の重版が決定した『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説あんぱん Part1』。今回は本書より、主演・今田美桜さんのインタビューを一部ご紹介します。
(※NHK出版公式note「本がひらく」から抜粋)
サプライズで伝えられた、ヒロイン決定
ヒロインののぶ役に決まったと伝えられたときの驚きは忘れられません。「最終面接をしたい」と連絡があり、緊張して朝8時にNHKに伺ったんです。するとあんぱんとコーヒーが用意されていて、制作統括の倉崎憲さんや演出の皆さんがクラッカーを鳴らして「ヒロイン役に決まりました!」と(笑)。不意打ちだったので一瞬混乱し、状況が理解できた途端に涙があふれました。
朝ドラのヒロインオーディションはこれまでに何度か受けています。「おかえりモネ」でヒロインの同僚役を演じたときは、祖母がとても喜んでくれて、そういう意味でも朝ドラは憧れの場所。ただ今回は、グループ選考の時点でほかの方々のすばらしいお芝居を見て「多分落ちたな」と思っていました。だから逆に最終カメラテストは気負いなく楽しむことができて、それを経てのサプライズだったので、なおさらうれしかったです。
「おかえりモネ」のときは物語の途中からの参加でした。でも今回は放送開始のずっと前から衣装合わせなどが始まり、スタッフの皆さんの準備の過程を長い期間かけて見てきたので、朝ドラがいかに大きな作品であるかを改めて実感しています。
収録は高知ロケからのスタートでした。緊張せずにリラックスして撮影に入ることができたのは、ひとえにスタッフの皆さんや高知の皆さんが心地よい空気で迎えてくださったおかげです。高知の大自然にも感動しました。
のぶは男勝りの「ハチキン」だけど、家族思いの繊細な女の子
のぶのモデルである小松暢さんは、チャレンジ精神にあふれ、いろいろなことに興味を持ってマルチに活躍された方。ドラマののぶもまさにそうで、圧倒されるほどのバイタリティーです。そしてよく走る(笑)。土佐ことばで「ハチキン」は、男勝りの女性という意味。のぶは「ハチキンおのぶ」と呼ばれています。男女が対等でないことに納得できない性格は、確かに勝ち気といえるかもしれません。でも同時に快活で正義感が強く、家族思いで、人の気持ちに寄り添うことができる繊細な女の子だと思います。
幼少期ののぶを演じる永瀬ゆずなちゃんのお芝居を見学させてもらいましたが、阿部サダヲさんが演じる草吉さんを勝手に「ヤムおんちゃん」と呼んで質問攻めにするシーンが印象的でした。その強引さや旺盛な好奇心がいかにものぶっぽいなと。一方で健気でひたむきなところも感じられて、そうした部分を自分も大事に引き継いでいきたいです。また、のぶの父・結太郎が幼いのぶに向けた「女子も遠慮せんと、大志を抱け」という言葉も大切にしています。いつも心にその思いを抱いて、のぶを演じています。
子どものころののぶは、嵩のお弁当をねらう悪ガキの岩男を蹴散らしたり、実母の登美子に置き去りにされて落ち込む嵩を「うちが守っちゃる!」と励ましたり。そうした関係は思春期になっても変わりません。それと同時に、北村匠海さんと一緒にお芝居していると、嵩の優しさに包み込んでもらっているようにも感じます。でも、どうやらのぶは恋愛感情に疎いようなので、恋ではなさそうなんですが(笑)。むしろのぶにとって嵩は、恋愛対象以上に大きな存在で、心の底から信じられる人。2人の友情が深まれば深まるほど、お互いに唯一無二の存在になっていくのだろうと思います。
嵩のモデルであるやなせたかしさんの晩年の映像を拝見すると、穏やかでユーモアあふれる方という印象を受けました。北村さんもとても穏やかで、ときどきボソッとおもしろいことを言うんです。晩年の嵩を演じられるのはずっと先ですが、共通点を感じて楽しみにしています。
『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説あんぱん Part1』では、当インタビューの完全版や今田美桜さんと北村匠海さんの対談を始め、脚本家・中園ミホさんや豪華出演者のインタビュー、モデルとなったやなせ夫妻の歩みや、ドラマ内の美術解説など、ドラマがもっと楽しくなるための独自企画も満載。朝ドラファン必携の1冊です。
取材・文/髙橋和子
今田美桜(いまだ・みお)
1997年生まれ、福岡県出身。主な出演作に、映画「東京リベンジャーズ」「わたしの幸せな結婚」、ドラマ「悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~」「トリリオンゲーム」「いちばんすきな花」「花咲舞が黙ってない」など。NHKでは、連続テレビ小説「おかえりモネ」などに出演。