3Dプリンターで駅舎を建設 JR初島駅での試みが完了、供用は7月予定
セレンディクス株式会社(本社:兵庫県西宮市)は4月21日、JR西日本グループと共同で、世界初となる3Dプリンター技術を用いた駅舎の建設を完成させたと発表しました。対象となるのは、和歌山県有田市のJR紀勢本線「初島駅」で、建設は3月26日に完了しています。
新駅舎は、現在行われている外構や内装工事、改札機の設置工事などを経て、2025年7月ごろに供用が開始される予定です。
■ 世界初、鉄道駅舎への3Dプリンター活用
このプロジェクトは、3Dプリンターによる建設技術を住宅からインフラ施設へと応用した画期的な試みとなります。
既存の初島駅は1948年に建設された木造駅舎で、無人駅として運用されていましたが、老朽化や維持管理の負担が課題となっていました。そのような背景の中、セレンディクスとJR西日本グループは、建設業界の生産性向上と鉄道施設の省力化を目指し、新たな技術の導入に踏み切りました。
駅舎の設計は、ヌーブ一級建築士事務所とJR西日本の大阪一級建築士事務所が共同で手がけました。構造設計にはKAP一級建築士事務所と同じくJR西日本の大阪一級建築士事務所が関わっています。施工には合同会社芳輝建築が、3Dプリンターによるパーツの製造には立尾電設株式会社が協力しました。
■ 夜間わずか6時間で完成
建設の要となったのは、「最終列車の出発から始発列車までの6時間」という極めて短い夜間作業時間に、駅舎の基礎から躯体の設置までを完了させるという挑戦的な目標でした。
駅舎のパーツは熊本県水俣市にある協力工場にて、専用の特殊モルタルを用いて出力されました。製造には7日間を要し、完成した4つの大型パーツはトラックで現地に運搬されました。
建設作業は3月25日午後11時57分の最終列車出発直後に始まり、順次トラックからクレーンでパーツを吊り上げ、約2時間で組み上げ工程を完了しました。うち45分はトラックの入れ替えに費やされ、実際の作業時間は約1時間15分だったとしています。
全工程は翌26日午前5時までに終了し、翌日以降にはJR西日本の技術確認と軽微な補修が行われています。
セレンディクスの共同創業者でCOOの飯田國大氏は、「6時間で基礎も含めて完成させる」という高い目標について、「開発関係者全員が『不可能だ』と口をそろえて言いました」と、当初の状況について述べました。
しかし、同社では既に24時間以内で3Dプリンター住宅を完成させた実績があり、「多くの協力会社の力を借りて実現しました」とコメント。通常2週間以上を要する基礎工事まで短縮できた今回の成功は、鉄道インフラのみならず住宅分野への応用も視野に入れた大きな成果だとしています。
今後、セレンディクスはこの駅舎建設における短工期とコスト削減の成果を検証し、他の駅舎や鉄道関連施設への技術展開を視野に入れるとのこと。建設業界では人手不足が深刻化している中、3Dプリンター技術を活用したロボット化が、一人ひとりの生産性向上を実現する「自働化」の鍵となると見られます。
情報提供:セレンディクス
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By おたくま編集部 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2025042409.html