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泉岳寺駅が高輪ゲートウェイシティと直結へ。市街地再開発で変わる街の姿を解説

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泉岳寺駅前地区で再開発が進行中

泉岳寺駅と市街地再開発事業の位置 ※出典:国土地理院地図を一部加工

現在、泉岳寺駅(せんがくじえき)では、駅改良事業と市街地再開発事業が一体的に進んでいる。

注目したい点の一つはその手法だ。採用されているのは、第二種市街地再開発事業であり、これは公共性や緊急性が高い場合に限定して適用される。第二種市街地再開発事業では、一般的な第一種市街地再開発で適用される権利変換方式とは異なり、用地買収方式(施行者である都がいったん、施行地区内の土地や建物を買収・収用)を用いることで、権利・利害調整の時間を短縮しながら、都市基盤の再整備と高度利用を同時に進められる。なお、国よると、これまで再開発事業地区は1,000件以上行われているが、第二種再開発についてはわずか65件(2024年3月末時点。*出典:国土交通省「都市計画現況調査」)となっている。

計画上では、JR高輪ゲートウェイ駅から続くペデストリアンデッキが泉岳寺駅まで延伸され、駅施設と街区がデッキレベルで接続される見込みとなっている。現状でも両駅間の乗り換えは比較的スムーズだが、再整備により、歩行者と車両が分離された安全な空間が整備でき、都市空間としての一体感や安全性、快適性が大きく向上することになる。

外観イメージパース(南西側) ※出典:東急不動産株式会社・京浜急行電鉄株式会社「『泉岳寺駅地区第二種市街地再開発事業』着工のお知らせ〜国際交流拠点として整備が進むエリアの新たなランドマークを創出〜」2024年11月28日を一部加工
泉岳寺南側から撮影 ※2025年5月撮影

泉岳寺駅は、都営浅草線が乗り入れる駅で、西馬込駅(大田区)から押上駅(墨田区)を結ぶ同線は、京急線・京成線との相互直通運転によって、羽田空港・成田空港の双方へのアクセス性に優れた利便性の高さを誇っている。

また、最新の統計によれば、泉岳寺駅の一日平均乗車人数は約10万人(2023年度)に達しており、コロナ禍で一時減少した利用者数も着実に回復傾向にある。この利用者増加の背景には、2020年に開業したJR山手線・京浜東北線の新駅「高輪ゲートウェイ駅」の存在が大きいといえる。泉岳寺駅は高輪ゲートウェイ駅の最寄り駅の一つとして重要性が一段と増している。

そこで本稿では、泉岳寺駅周辺で進行する都市再開発プロジェクトの全体像とそのスケジュール、さらには高輪ゲートウェイシティとの接続性や、予定されているマンション住戸の概要などを、多角的な視点から分かりやすく紹介していく。

再開発事業が行われる背景

高輪ゲートウェイシティ ※2025年5月撮影

市街地再開発事業が行われる背景には、政府が主導する都市再生プロジェクトが関係する。

2012年1月に「品川駅・田町駅周辺地域」約184ヘクタールが特定都市再生緊急整備地域に指定された。特定都市再生緊急整備地域は、都市の国際競争力の強化の観点から市街地再生整備を図ることが目的とされ、都市計画に関する土地利用規制の緩和や税財政金融支援、国家戦略特区の活用による都市計画手続きの一部省略などにより、国支援の下で都市再生プロジェクトが推進される。なお、泉岳寺駅前地区市街地再開発事業では都主体のため、国家戦略特区ではなく、通常の都市計画手法の一つである高度利用計画により容積率を緩和している。

近年は、品川駅から田町駅にかけての一帯において、積極的な再整備が進んでおり、この10年間で田町駅から品川駅にかけての沿線景色は一変した。

また、事業が行われるに至った背景として、品川駅・田町駅周辺地域では、リニア中央新幹線や品川車両基地跡地での高輪ゲートウェイ駅の開業に関連して、大規模な都市再生プロジェクトがいくつも進行していることも影響している。そのなかでも泉岳寺駅は、品川駅と田町駅の中間に位置し、高輪ゲートウェイ駅に隣接していることもあって、今後、高輪ゲートウェイシティの開発に伴い、大幅な利用増加が見込まれることも大きい。

再開発事業の概要

泉岳寺駅拡幅計画のイメージ ※出典 左図:東京都・京浜急行電鉄株式会社「都市高速鉄道第1号戦(都営浅草線・京浜急行本線)」、右図:東京都「事業概要2018パンフレット」p4

再開発では、泉岳寺駅改良工事と一体となり連動しながら工事が進められる。

はじめに、駅改良工事についてだが、現在、国道15号の地下を通っている都営地下鉄浅草線のホームの拡幅工事が行われる。ホームの改良により、ホーム幅は現在の5m から約10mへ拡張される。

泉岳寺駅の現況 ※2025年5月撮影
泉岳寺駅前地区市街地再開発事業と高輪ゲートウェイシティとの関係 ※2025年5月撮影

駅からは地下改札から市街地再開発ビルへアクセスすることが可能となる。さらに、エスカレーターやエレベーター、ペデストリアンデッキを通じて高輪ゲートウェイ駅とも直結する予定だ。再開発では、この再開発ビルである施設建築物のほかに、憩いの場となる広場や地下駅前広場、歩道状空地なども整備される予定だ。

都市計画では、高度利用を図るための手法として高度利用地区が指定され、容積率の上限は1000%が設定されている。施設建築物は、地下3階、地上30階建て、最高部分の高さは約144mを予定している。施設建築物の用途は、住宅や事務所、店舗、地下鉄駅施設、子育て施設などが予定されている。

施行者は東京都、特定建築者(施設建築物を施行者の代わりに建築する事業者)は、東急不動産株式会社と京浜急行電鉄株式会社が担う。また、工事施工者ならびに設計は鹿島建設株式会社が行う。

現在工事が進められている現地に行くと、駅改良工事、高輪ゲートウェイシティの再開発ビル(THE LINKPILLAR 2)の建築工事、本再開発の建築工事の3つが同時に進められている光景を目にすることができる。事業完了により泉岳寺駅周辺の景色は一変するはずだ。

計画建物の概要

商業機能(地下1階、地下鉄駅前広場) ※出典:東急不動産株式会社・京浜急行電鉄株式会社「『泉岳寺駅地区第二種市街地再開発事業』着工のお知らせ〜国際交流拠点として整備が進むエリアの新たなランドマークを創出〜」2024年11月28日を一部加工

施設建築物は、地下部分に駐車場、低層階には店舗や業務(事務所)が、高層階は住宅となる。計画建物の概要は次のとおりとなる。
〈計画建物の概要〉
・建築敷地面積:約8,490m2
・建築面積:  約5,400m2
・延べ面積:約11万2,300m2
・階数:地下3階、地上30階
・建蔽率:約 65%
・容積率:約1,000%
・用 途:住宅、事務所、店舗、地下鉄駅施設、駐車場
・構 造:鉄骨造(制振構造)、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造
・高 さ:約144m
・総事業費:約1,215億円

また、再開発ビルでは住宅約380戸が計画されており、都心での住まい探しをしている方にとっても注目のエリアとなるかもしれない。現在計画されている住宅の規模や間取りは、約40m2以上で、1LDKから3LDKを中心としたプランが予定されている。なお、住戸部分の詳細については現時点において未定であり、今後、特定代行者である東急不動産等により何らかの発表があると想定される。

オフィス機能(エントランス前) ※出典:東急不動産株式会社・京浜急行電鉄株式会社「『泉岳寺駅地区第二種市街地再開発事業』着工のお知らせ〜国際交流拠点として整備が進むエリアの新たなランドマークを創出〜」2024年11月28日を一部加工

再開発と高輪ゲートウェイ駅との関係性

交通結節点イメージ(泉岳寺駅〜高輪ゲートウェイ駅への接続) ※出典:東急不動産株式会社・京浜急行電鉄株式会社「『泉岳寺駅地区第二種市街地再開発事業』着工のお知らせ〜国際交流拠点として整備が進むエリアの新たなランドマークを創出〜」2024年11月28日を一部加工

泉岳寺駅周辺では現在、駅の改良工事と併せて市街地再開発事業が進められており、その成果として「高輪ゲートウェイシティ」との一体的な都市空間が形づくられつつある。これにより、泉岳寺駅と高輪ゲートウェイ駅は、見た目にも機能的にも、より強くつながるエリアへと生まれ変わろうとしている。

これまでも両駅は至近距離にあり、乗り換えが極端に不便というわけではなかったが、やや分かりにくい動線や高低差など、改善の余地があった。今回の再整備によって、段差の解消や視認性の向上、さらにペデストリアンデッキやエスカレーターなどの導入が進むことで、泉岳寺駅の利便性は飛躍的に高まる見込みだ。駅利用者にとっては、高輪ゲートウェイ駅開業後、課題とされていた乗り換え動線の改善が実現しつつある。

なお、高輪ゲートウェイシティでは、2025年3月27日に“まちびらき”が行われたが、部分的な開業にとどまっている。全体計画の完成はまだ少し先であり泉岳寺駅と高輪ゲートウェイシティとをつなぐ新たな歩行者デッキや、残る建築区画については、現在も工事が進行中だ。

事業スケジュール

工事中の泉岳寺駅前地区第二種市街地再開発事業 ※2025年5月撮影

建築工事は2024年11月に開始している。

工事の完了は2031年度を予定している。泉岳寺駅改良工事についても同様に再開発ビルと一体的に工事が行われる関係上、同様のスケジュールとなっている。なお、現計画よりも着工時期が遅れており、また、完了予定時期についても当初の2027年度から2031年度に変更となっている。近年、市街地再開発では資材や人件費の上昇、人材確保の課題により工期遅延がたびたび生じている。このため、本プロジェクトについても、さらなる工期の遅延が生じる可能性もある。

再開発による泉岳寺駅周辺の変化

泉岳寺から高輪ゲートウェイシティを望む ※2025年5月撮影

泉岳寺駅と聞いて、多くの方がまず思い浮かべるのは、赤穂浪士ゆかりの地として知られる泉岳寺ではないだろうか。駅の西側には47士の墓所を擁する同寺があり、供養や歴史観光で訪れる人も多く、駅名そのものが地域の歴史的アイデンティティを映し出している。

その一方、泉岳寺という駅名からは高輪ゲートウェイエリアとの接続性がイメージしづらいかもしれない。しかし実際には、泉岳寺駅と高輪ゲートウェイ駅はわずか300m程度の至近距離に位置し、現在進められている高輪ゲートウェイシティの全面開業後には、歩行者デッキやペデストリアンネットワークにより一体的に接続される。

このため、今後は泉岳寺駅も広域的な拠点としての重要性を高め、乗降客数や人の流れの変化に応じて、駅周辺でも再開発が進展する可能性がある。すでに同駅や高輪ゲートウェイに近接した位置にある「野村HD高輪研修所」は野村不動産へ売却したことが報道されており、大規模開発が想定されている。

最後に、歴史的に“高輪”と呼ばれてきたこの一帯には、泉岳寺だけでなく、大木戸の石垣や築堤跡、江戸時代の海岸線に近い地形を思わせる高低差のある街並みなど、文化的・景観的な資源も多く残されている。そのため、都市再生プロジェクトでは、今後も利便性の向上や経済合理性に加えて、地域の記憶や文化的な文脈との共存をどう図るかが問われることになるだろう。

街の表情が変わっていくなかで、この街がどのように“高輪らしさ”を受け継ぎながら新しい街像を描いていくのか。歴史と先進性が共存するエリアの将来が期待される。

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