「みんなが好きになっちゃうような二人に」柿澤勇人、矢崎広、桜井玲香、海乃美月らが出演!ミュージカル『ボニー&クライド』製作発表会見レポート
ミュージカル『ボニー&クライド』が2025年3月10日(月)から東京・シアタークリエほか上演される。開幕を前に、1月31日(金)、本作の製作発表会見が都内で行われ、出演する柿澤勇人、矢崎広、桜井玲香、海乃美月、上演台本・演出の瀬戸山美咲が登壇した。約50名の一般オーディエンスも会見を見守った。会見の様子を、写真と共にお伝えする。
1930年代、世界恐慌下のアメリカ中西部で銀行強盗や殺人を繰り返した実在の人物、クライド・バロウとボニー・パーカー。社会からはみ出した彼らの無軌道な生き様は、後のハリウッド映画に多大な影響を与えたアメリカン・ニューシネマの第一号として、今も語り継がれる名作『Bonnie and Clyde』(邦題:『俺たちに明日はない』)で描かれている。
この伝説のギャング・カップルを題材に、『ジキル&ハイド』『笑う男 The Eternal Loveー永遠の愛ー』『デスノート THE MUSICAL』『ケイン&アベル』などを手掛けた作曲家フランク・ワイルドホーンが、ジャジーなサウンドとポップなリズムで新たに創造したミュージカル『ボニー&クライド』は2011年12月にブロードウェイで上演し、翌12年に日本初演された。その後、ブラッシュアップされ、2022年ロンドン・ウエストエンドで再演、23年に日本で宝塚歌劇団雪組にて上演された。そしてこの度、満を持して、今年3月からシアタークリエで新演出版を上演する。
この日の会見は、歌唱披露から行われた。
1曲目は「ピクチャー・ショー」。クライドとボニーがそれぞれに、今の貧しい暮らしから逃れて、いつか必ずビリー・ザ・キッドやアル・カポネのような大物に、クララ・ボウのような映画スターになってみせると夢を歌うナンバーだ。そして、2曲目は「残すのさ名前を」。ボニーの協力で刑務所を脱獄したクライドがボニーと車に乗り、逃避行を始めるときに「2人の名前を世界に残そう」と歌う、1幕ラストを飾るナンバー。それぞれWキャストであるボニーとクライド4名が歌うということで、本番では見られない特別なパフォーマンスとなった。
続いて質疑応答が行われた。
ーーお一人ずつにご挨拶をいただきます。
瀬戸山美咲(以下、瀬戸山):映画『俺たちに明日はない』が私はもともと大好きでした。乾いた雰囲気だったり、ボニーとクライドの焦燥感のある、刹那的な生き方というものにすごく惹かれるものがあって、このお話をいただいたときはとても嬉しかったです。
ミュージカル版では、現実や映画とはまたちょっと違った、夢と現実のコントラストが色濃く描かれています。今皆さんに歌っていただいたフランク・ワイルドホーンさんの力強い楽曲が、 彼らの「どこかに行きたいけれどもいけない。でも飛び立ちたい」というエネルギーをものすごく表現している作品になります。疾走感のある、エネルギーに満ちた作品にしたいと思います。
柿澤勇人(以下、柿澤):カンパニー一同、一生懸命稽古に励んでいる毎日でございます。 疾走感あるストーリーと共に、「抜け出したい」「飛び出したい」「世の中をひっくり返したい」みたいな、そんな爆発力のあるクライドとボニーを中心に、カンパニー一同で素敵な作品に仕上げようと努力しています。期待していてください。
矢崎広(以下、矢崎):カッキー(※柿澤さんの愛称)も言ってましたけど、今本当に『ボニー&クライド』という2人のドラマに全力で、みんなでぶつかって稽古してる毎日です。取材の皆さまもそうですけど、今日は潜入捜査に来てくださった皆さまもいて! ボニーとクライドは本当に民衆に応援してもらった2人なので、 ぜひ今日はたくさんの同志になっていただき、ここからまた色々広めてもらって、たくさんの方に応援していただけるようなミュージカルになっていければいいなと思います。
桜井玲香(以下、桜井):初披露だったので、すごく緊張もしたんですけれども、こんな感じでとても疾走感があるスピーディーな作品になっています。ボニーとクライドは、皆さんもおっしゃる通り、世界中でかなり熱狂的なファンがたくさんいるカップルということで、観に来てくださった皆様に好きになってもらえるような2人を演じられたらいいなと思っております。
海乃美月(以下、海乃):私は今回の作品が宝塚を卒業してから初めての作品になるんですけれども、皆さまとても温かいカンパニーで、毎日エネルギッシュな稽古をさせていただいております。 この作品は、世界恐慌の時代にアンチヒーローとして有名になったこの2人の作品なんですけれども、エネルギーというか、2人の愛と信念みたいなものが混ざり合った人生のお話だなと感じているので、私も全力で生き抜きたいなと思います。他のキャストの皆さまもとっても魅力的な方々がたくさんいらっしゃるので、楽しみに観に来ていただけたら嬉しいなと思います。
ーー柿澤さんと矢崎さんに質問です。今の歌からもとても情熱的な人物像というのが伝わってきたんですけれども、クライドの情熱的な部分の原動力はどういったところにあると思われますか。
柿澤:いろんなものがあるとは思うんですが、1番大きいのは、僕が考えるに、「怒り」の感情なのかな。この1930年代は世界恐慌や禁酒法など、ある意味抑圧された何かがあって、でもそれを変えるにも変えられない。もうみんな諦めている。希望の光も見えてない。もう諦めて生きていこう。神も救ってくれないし、みたいな。ざっくり言うと、そんな時代だと思うんです。クライドはそこに対して反逆というか、犯罪を犯してしまうんですね。だからその原動力は怒りなのかなと思います。もちろん僕らはその時代をリアルには知らないんですけど、やっぱり生きててね、「どうしようもない」とか「おいおい!なんだよこれ!ふざけんなよ!」みたいなことって、たくさんあるじゃないですか。だから、そういったものをぶつけられたらなと思います。
矢崎:クライドは、「なんで今自分はここにいるんだろう」「俺が今いる意味はなんなんだろう」ということを実はすごく自問してる人。俺は何者なんだ、もっと大物になるんだという、結構それだけの部分も実はあるんじゃないかなと思っています。その中でボニーと出会って、さらにその気持ちが加速していく。自分が持っていた情熱に、さらに気持ちが乗っかって、どんどん止まらなくなっていった2人なんじゃないかなと僕は思います。
ーー桜井さんと海乃さんに質問です。キービジュアルからのボニーという存在を大変力強いようなエネルギーを感じるんですけれども、現時点でお二人はどのような人物像だと捉えていますか?
桜井:(クライドとボニーを題材にした数ある作品のなかで)すごく真面目な素直な女の子という描写があったり、かたやすごくセクシーな女性だったり、ちょっと危ない片鱗が見えたり、いろいろな面が書かれていますが、ボニーは小さい頃から人を惹きつける魅力を持っていた女の子だったみたいなので、観ている皆さんが気になってしまう、目が離せない、そういう女性が近いのかなと現時点で私は思っております。
海乃:玲香ちゃんが仰っていたみたいに、とにかく幼少期から、いろいろな人にすごく好かれるボニーという像がまずあるんだなと思っています。その中で文章や詩を書くのが好きだったり文学的な才能もあって。きっと想像力がすごく豊かな女性だったんだろうなと。家庭環境だったり真面目な部分もあるんですけれども、だからこそクライドみたいな人に出会ったときに、すごく心が揺れ動いて惹かれて、むしろ惹かれすぎてしまうぐらい惹かれるところがあるのかなと思います。クライドと出会ってからは、自分の夢、そしてそれを引っ張ってくれるクライドの勢いとの相乗効果で、どんどん、どんどん前に進んでいく。この世界恐慌の時代を駆け抜ける存在になっていくので、信念の強さみたいなものも大事に演じていけたらいいなと思っております。
ーー瀬戸山さんにお伺いします。犯罪に手を染めた2人がアンチヒーローとしてどのように人気者になって、背景をどのように描きたいかを教えてください。
瀬戸山:もともと犯罪者として生まれているわけではなく、他の人より少し欲望が大きかったり、もしくは持って生まれた人を惹きつけるような才能があったり、そしてそれをちょっと持て余していたり。求めているものは違うけれど、生きている体温、求めているものの大きさが似ている2人。そういう2人が出会ってしまったからどんどん増幅し、こういう風になってしまった。それをまずしっかり描きたいなと思います。
その2人が何が魅力的だったかというと、2人が対等な関係だったこと。最初はクライドの方が犯罪を始めたかもしれないけども、ボニーがそれを引っ張っていった瞬間もある。アメリカの人たちが熱狂したのは、そんな2人なんですよね。それぞれが欠けもせず主導もせず、2人が合わさったときに圧倒的に格好よく見えたんです。今回は2人のそういう過程をしっかり描きながら、周りの人たちがどういう風に熱狂していったかということ、その民衆のパワーのようなものも、きちんと段階を踏んでお見せしできたらいいなと思っています。
――ご登壇が4名の俳優としての魅力だったり、演じているときの魅力を教えてください。
瀬戸山: 柿澤さんは、もう本当に爆発力がすごいなと感じています。まだ前半の方の明るいシーンの稽古をしている段階なんですけども、怒りとか悲しさとか寂しさとか、すごくヒリヒリする感情が瞬間瞬間垣間見えて、そこがとても魅力的だなと今思っています。
矢崎さんは、実は10年前に1度ご一緒したことがあって。そのときからとても楽しい俳優さんだったんですけども、すごく大人になられて。そして今もまた楽しい俳優さんなんですけど(笑)、今回の作品の背景だったり、クライド像をすごく掘り下げて考えていらっしゃる。常に稽古場でちょっと面白いことをトライしようという気概で溢れていると思います。
桜井さんは、ボニー的というか、こういう役がお得意だなと前から思っていました。なんか満たされない感じとか、 世の中に対する反発心とか、そういう精神が真ん中に実はあって……今やってもらっていても、彼女のなんとも言えない、もがいてる感じがすごく魅力的だなと思っています。
海乃さんは最初に歌を聞いたときに、明るさにびっくりして!それがすごくいいなと思ったんですね。なぜクライドはボニーに惹かれたんだろうと思ったら、やっぱり輝いていたからで、この明るさに惹かれたのかなと思いました。で、その一方で、稽古をしていると、突然殺気みたいなものを感じるときもあって。ボニーの残酷さみたいなものが一瞬見えたりして、面白いと思ってます。海乃さん自身が今新しい入口に立たれてると思うので、それがボニーがまた新しい扉を開けるというのとうまくシンクロしていったらいいなと思っています。
ーーすでに稽古始まっているということで、稽古場ではどう過ごされているんですか?
矢崎:僕が本当のことを言いましょうか(笑)。カッキーはもうめっちゃ自由です。さすが柿澤勇人だなというぐらい稽古場のいろいろなところにいる。気づいたらストレッチしていたり、気づいたら芝居に打ち込んでたり。本当に掴みどころがない。地面にいたり、高いところにいたり、お猿さんみたいだよ?(笑)
柿澤:よく言われる(笑)
矢崎:で、僕はこんな感じでマイペースで、アゲでもサゲでもない。そして、桜井さんはまだ多分様子見ている感じで、海乃さんは、今のところクソ真面目です。
柿澤:僕が思うに、ぴろし(※矢崎さんの愛称)は本当にクソ真面目ですよ。いろいろなシーンをやるんですけど、とにかく新しいことをトライする姿勢。それは本当に真面目だなぁと思うし、正解を決めないで、何が自分にフィットするんだろうと常に考えている。クライドに関しても、この時代のアメリカのことに関しても、ものすごく勉強をされていて。2人になると、ぴろしは芝居のことしか僕に言わないんですよ。「そこのシーンはこうだよね?だからここでこうコントロールして、こうだった」みたいな。で、僕は一切そういう話しないんですね(笑)。僕は「もう今日帰ったら何するの?」とか、「どこかいいサウナない?」とか、芝居以外のことばかり喋っている。ま、和気藹々としてますね。同い年ですし、本当に気を遣うことなくやってます。
海ちゃんはね、 本当真面目ですけど、とにかく明るいですね。僕がすごく驚いたのは、宝塚を退団されて初めての舞台で、今回の稽古場には、瀬戸山さんのご要望でインティマシー・コーディネーターさんが入ってくださっているんですね。ボニーとクライドですから、キスシーンや密接なシーンが何個かあるんですけど、それがどういう風に見えるのかとか、どうやったら効果的なのかなみたいなことを、ちゃんと僕らだけの時間をとってくれて、ディスカッションして細かく決めながらやっている。海ちゃんは、男性と芝居をすることも初めてでしょう?
海乃:はい、初めてです。
柿澤:だから多分、僕は全然想像もできないですし、実感もできないんですけど、絶対緊張するというか、違和感みたいなものを感じていたりすると思うんです。でも、それでもニコニコ、ポジティブに向き合っている。その姿はとても美しいですし、格好いいなと思いますね。で、玲香ちゃんは共演の回数は結構多いんですけど、確かにいつもよりニコニコしている(笑)
ーー最後に観客の皆さまに一言お願いします!
瀬戸山:『ボニー&クライド』というと、映画でも描かれたように、死んだときの状況がすごく有名だと思うんですけど、 死んだときの状況よりも、生きた彼ら彼女たちの姿をしっかり届けたいなと思っています。時代は全然違いますが現代と通じるところもあって、彼ら彼女らが、私にとっては友達みたいに感じる瞬間があって。ご覧になった皆さんにも友達の姿を見ているような、そういう感覚になってもらえるような作品にしたいと思っています。劇場でお待ちしております。
海乃:とても楽しくお稽古させていただいておりますが、私もボニーを自分にもっと落とし込んで、ボニーに近づくというよりかは、お互い寄せ合って、すごくリラックスした状態で、身近に感じて演じられたらいいなと思っております。今回のこの舞台では、ボニーとクライドが培ってきた、生きてきたものをすごく丁寧に描いてくださっているので、そこの部分をしっかりお客様にお見せできるように稽古をしっかり頑張っていきたいと思います。どうぞ楽しみにご覧になってください。
桜井:ミュージカル版『ボニー&クライド』は、特に人間味のある2人を描いている脚本になっているかなと思います。なぜギャングになったか、ちゃんと理由があって、いろいろな気持ちがあって……というのを丁寧に描いている作品になっているので、ぜひ皆さんにこの2人のことを知ってもらいたいです。私が強く思うのは、とても悲しいストーリーではありますが、とにかく楽曲やビジュアルが格好よくて、憧れられるような、好きになっちゃうような、そんな2人を演じられたらということ。最後、観終わった後に「スカッとしたな〜!」「最高に気持ちよかったな〜!」と思ってもらえるような作品にできたらいいなと思いますので、皆さん、ぜひスカッとしに劇場に来ていただけたら嬉しいなと思います。
矢崎:ボニーとクライドのこの刹那的な物語を本当に丁寧に描いていて。悪いことはしたんですけど、それでも皆さまに愛していただけるような2人になっていければいいなと思います。作品自体もすごくポップな曲もあり、素敵なバラードもあり、作品自体が、僕はすごく格好いいなと感じるんですね。それをお客様にもぜひ劇場で体感していただきたい。「すげえ悪い奴らだったけど、すげえなんか好きになったわ!」と思って帰っていただきたい。それを目指して、今、一生懸命稽古を頑張りたいなと思っています。劇場でお待ちしてますので、ぜひ来ていただければなと思います。
柿澤:ボニーとクライドは本当に犯罪を犯した悪人ではあるんですけれども、史実では、ボニーの葬儀にはファンの人たちが2万人?3万人?そしてクライドの葬儀には1万5000人?……なんでクライドの方が少ないんですか?(笑)。いや、その数はいいとして、それくらいの人たちがアンチヒーローとして、「暴れてくれてありがとう!」ではないけど、多分ポジティブな意味で、いろいろな感情を抱いていた。それは矛盾していることではあるんですけどね。僕たちもシアタークリエで皆さんに観ていただいた方に「なんか悪いことばっかやっているけど、頑張れ!」とか「なんか死なないでほしい」とか、そういういろいろな感情を持っていただけるように、これから稽古して頑張りたいと思います。
2025年3・4月上演! ミュージカル『ボニー&クライド』プロモーション映像
取材・文・撮影=五月女菜穂