知ってそうで知らない【アジ・サバ・イワシの見分け方】意外な体の構造の違いとは?
防波堤でのサビキ釣りでよく釣れるのがアジ、サバ、イワシですが、これらの魚について「見分け方がわからないけれど今さら聞きづらい」という人がいるかもしれません。たしかにいずれも細長い体をしており、釣りをはじめたばかりの初心者の方には「見分け方がわからない」という方も多いようです。ですが、これらの3つの分類群はポイントさえつかめば容易に見分けることができます。
(アイキャッチ画像提供:サカナトライター・椎名まさと)
サビキ釣りでお馴染みの魚たち
サビキ釣りは防波堤や海釣り公園からのファミリーフィッシングにはぴったりです。群れさえ入ってくれば高確率で魚が釣れるため、子供たちも飽きません。よく釣れるのはアジの仲間やサバの仲間、さらにイワシの仲間が多いと思います。
この3つのグループはそれぞれ全く違う姿形をしていますが、どれも体が細長く似ている所があるため、上手く見分けている方は多くはないと思います。今回はこのアジの仲間・サバの仲間・イワシの仲間の見分け方をご紹介します 。
アジ科の魚の特徴
アジ科の魚は日本では60種以上の種が知られています。背鰭は2基ありますが、種類によっては第1背鰭が小さく、鰭膜(背鰭の鰭条をつなぐ膜)がなく、1本1本が独立した棘になっているものもいます。
アジ科の魚のうち、臀鰭の2本の棘は遊離しているのも特徴です(一部の種では小さい)。
中にはムロアジ属の魚や、オニアジのように第2背鰭の後方と臀鰭の後方に「小離鰭」と呼ばれる小さな鰭を有するものもいます。この小離鰭はムロアジ属では各ひとつ、オニアジでは各7~10あります。
腹鰭と胸鰭の位置は「胸位」、つまり腹鰭は魚の胸部の下方にあり、胸鰭がやや高い位置にあります。スズキ目やカレイ目などの魚は概ね腹鰭と胸鰭は胸位です。
一方サケやコイなどは「腹位」といい、腹鰭は魚の腹部にあり、胸鰭は低い位置にあります。
アジ科の多くに共通するもうひとつの特徴は体側の側線上の鱗列です。これは稜鱗といいますが、釣り人であれば「ぜんご」、「ぜいご」という名前でもお馴染みでしょう。
この稜鱗の数や範囲は種で異なり、マアジの稜鱗は側線の全域にわたって見られますが、マルアジなどは側線の後方、直線的な部分のみに見られます。ブリなどのように側線に稜鱗のない種もいます。
本州~九州のサビキ釣りで釣れるのはマアジが多く、マルアジも混ざります。マアジは全身が黒っぽい「クロアジ型」と、黄色っぽい「キアジ型」が知られますが、サビキ釣りで釣れるのはキアジ型が多いようです。
琉球列島ではこれらはメアジやクサヤモロに置き換わり、タカサゴ科の魚も混ざることがあります。いずれも刺身や塩焼きで美味しい魚です。
サバ科の魚の特徴
サバの仲間は日本で21種が知られますが、サビキ釣りで釣れるのはごくわずかな種です。サバ科の魚は背鰭が2基あり、第2背鰭・臀鰭の後方に小離鰭があります。
アジ科ではオニアジをのぞき小離鰭の数は背鰭・臀鰭後方に各1つあるだけですが、サバ科のマサバやゴマサバでは各5つあります。サバ科の魚もアジ科の魚と同じく腹鰭と胸鰭の位置は胸位です。
その一方アジと異なり、体側に稜鱗はありません。一方で背中には小さな虫くい状斑紋があります。
美味しい魚ですがアジ科の魚よりもずっと痛みが早いので、釣れたらすぐに締めてしまいたいところです。できればこのときに内臓も出してしまいましょう。内臓は釣り場に放置せず、別のビニール袋に入れて持ち帰ってから捨てます。
日本では九州以北ではマサバとゴマサバが見られますが、琉球列島ではグルクマに置き換わってしまうようです。ゴマサバは沖縄県でも漁獲されますが深場にすんでいるらしく、沿岸のサビキ釣りでは釣れないようです。
イワシの仲間の特徴
「イワシ科」という分類単位は存在しません。北海道~九州に至る日本近海で見られるのはほとんどがマイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシで、これらはそれぞれニシン科ニシン亜科・カタクチイワシ科・ウルメイワシ科ないしニシン科ウルメイワシ亜科となります(ただしもっと細かく分けている研究者もいる)。
イワシの仲間はアジ科やサバ科と異なり、胸鰭と腹鰭の位置は「腹位」といい、腹鰭は腹部にあり(つまり、アジ科・サバ科よりも後方にある)胸鰭の位置も下方にあります。
カタクチイワシは口が大きく、マイワシやウルメイワシとは容易に見分けることができます。夏の終わりから秋にかけて群れが岸近くによってきます。またこのカタクチイワシを狙う肉食魚も見られ、本種を餌にして大物を狙うのもよいでしょう。
マイワシとウルメイワシはよく似ていますが、マイワシの体側には目立つ黒色斑列があるので見分けられます。ただしマイワシでもこの黒色斑列が目立たないこともあり、注意が必要です。またマイワシとウルメイワシは背鰭と臀鰭の位置関係も異なり、ウルメイワシの臀鰭はやや後方にあります。
マイワシやカタクチイワシなどは煮物や焼き物、よく知られるように干物などで極めて美味ですが、新鮮なものの刺身は絶品です。幼魚は「しらす」として販売され生のまま食べたりちりめんじゃこにして食べます。
また養殖魚の飼料としてもイカナゴなどとともによく使われ、用途が極めて広い魚です。
一方でこれらの魚は琉球列島には見られません。カタクチイワシのみ、沖縄県にもいるようで『沖縄さかな図鑑』(下瀬環著・沖縄タイムズ社・2021年)の中では与那国島のカタクチイワシについての記述が見られますが、釣れるほどはいないと思われ、ミズン、ヤマトミズン、ホシヤマトミズン、ミナミキビナゴといった種が九州以北に見られるイワシの仲間のニッチをしめます。
「イワシ」ではない「イワシ」
サビキ釣りをしていると、たまにイワシのような魚がかかることもあります。写真のような魚はトウゴロウイワシ科の魚です。名前に「イワシ」とついていますが、イワシの仲間ではなく、トウゴロウイワシ目に含まれています。この目の中にはアクアリストにはよく知られている「レインボーフィッシュ」なども含まれています。
トウゴロウイワシ科の魚とイワシの仲間との見分け方はとっても簡単。トウゴロウイワシ科の魚は小さい背鰭が2基ありますが(写真・矢印)、イワシの背鰭は1基しかありません。また腹鰭と胸鰭の位置関係はイワシと異なる胸位です。
九州以北(~関東地方)では概ねトウゴロウイワシ、ギンイソイワシが、琉球列島ではオキナワトウゴロウやミナミギンイソイワシなどが釣れ、ヤクシマイワシなどのようにどちらでも釣れる魚がいます。調理方法は簡単で、頭と鱗、および内臓を落とした後、唐揚げ粉をまぶして揚げれば最高です。
なおトウゴロウイワシ科の魚以外にも、名前に「イワシ」とついていてもイワシの仲間ではない魚がいますが、それはまた別の機会にご紹介します。
覚えたい「アジ・サバ・イワシ」
サビキ釣りではお馴染みのアジ・サバ・イワシたち。いずれも美味しい魚たちです。
食べる前にぜひこの記事を参考に見比べてみてください。
(サカナトライター・椎名まさと)