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【2024年最新】介護保険サービスの中には医療費控除対象になるものも! 条件や申告方法も解説

「みんなの介護」ニュース

小島 章彦

介護費用はかなり家計を圧迫するものです。厚生労働省によると、介護サービス利用者の1人当たり平均利用額は約17.6万円にも上ります。

月々の介護費用にお困りの利用者の方やそのご家族の皆さま、医療費控除について正しく理解していますか? 実は、多くの介護サービスが医療費控除の対象となり、確定申告の際に合わせて申告することで税金の還付を受けられる可能性があります。本記事では、2024年最新の情報を基に、医療費控除の対象となる介護サービスとその活用方法について具体例を踏まえながら詳しく解説していきます。

医療費控除と介護保険サービスの関係性

医療費控除とは?

医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告を通じて所得控除を受けられる制度です通常、確定申告のタイミングで手続きを行います。

国税庁の「申告所得税標本調査」によると、2021年分の確定申告における医療費控除の適用件数は約189万件、平均控除額は21万2000円でした。この数字からも、医療費控除が多くの方々にとって重要な節税手段となっていることがわかります。

なお、医療費控除は、1年間(1月1日から12月31日まで)に支払った医療費から保険金などで補填された金額を差し引いた額が10万円を超える場合に適用されます。全額が控除対象ではない点に注意が必要です。

医療費控除が適応される介護保険サービスも

実は、医療費控除の対象となる費用には、医療機関での診療費や薬代だけでなく、介護保険サービスの自己負担分も含まれます。

介護サービス利用者の1人当たり平均利用額は約17.6万円/月にものぼります(厚生労働省「令和4年度介護給付費等実態統計」)。医療費控除を正しく理解することによって、介護を必要とする高齢者ご本人ごやその家族の経済的負担を軽減できるかもしれません。

なお、介護保険サービスの中でも、医療系のサービスのうち一定の条件を満たすものが医療費控除の対象となります。

具体的には、以下のようなサービスが医療費控除の対象となります。

訪問看護
訪問リハビリテーション
通所リハビリテーション
短期入所療養介護
居宅療養管理指導
介護老人保健施設でのサービス
介護医療院でのサービス

※詳細は国税庁HPにてご確認ください。

医療費控除で介護費用を節税する仕組み

そもそも、「医療費控除の対象になる」と言われても、それがどのように家計を助けるのかがわからない、という方もいらっしゃるかもしれませんので、仕組みを解説していきましょう。

医療費控除を受ける場合、所得税の課税対象となる所得金額が減少し、結果として納税額が少なくなります。

この仕組みをより詳しく説明すると、以下の通りです。

年間の総医療費(介護費用を含む)を計算する
その総額から10万円(または総所得金額の5%のいずれか低い方)を引く
残った金額が医療費控除の対象額となる
この控除額を総所得金額から差し引き、課税所得を計算する

例:年収500万円の方が150万円の医療費(介護費用含む)を支払った場合

控除対象額:150万円 - 10万円 = 140万円
新しい課税所得:500万円 - 140万円 = 360万円

この結果、140万円分の所得に対する税金が軽減されることになります。

医療費控除の対象となる介護保険サービス

それでは、具体的にどのような介護保険サービスが医療費控除の対象となるのか、詳しく見ていきましょう。

医療費控除対象となる居宅サービス

居宅サービスの中で、医療費控除の対象となる主なものは以下の通りです。

訪問看護:看護師等が自宅を訪問し、療養上の世話や診療の補助を行うサービス
訪問リハビリテーション:理学療法士や作業療法士が自宅を訪問し、リハビリテーションを行うサービス
通所リハビリテーション:介護老人保健施設や病院・診療所に通ってリハビリテーションを受けるサービス
短期入所療養介護:介護老人保健施設などに短期間入所して、看護や医学的管理下での介護、機能訓練などを受けるサービス
居宅療養管理指導:医師、歯科医師、薬剤師等が自宅を訪問し、療養上の管理や指導を行うサービス

これらのサービスは、利用者が支払った自己負担額の全額が医療費控除の対象となります。また、訪問介護(ホームヘルプサービス)や通所介護(デイサービス)なども、医療系サービスと併用している場合に限り、控除の対象となる場合があります。

例:Aさんが1年間に以下のサービスを利用した場合

訪問看護:月2回 × 12カ月 = 24回(1回の自己負担額3000円)
通所リハビリ:週1回 × 52週 = 52回(1回の自己負担額2000円)

年間の自己負担総額: (3000円 × 24回) + (2000円 × 52回) = 176000円

この場合、176000円が医療費控除の対象となります。

医療費控除対象となる施設サービス

施設サービスについては、以下の施設での介護サービス費用が医療費控除の対象となります。

介護老人保健施設:リハビリテーションを中心とした医療ケアと生活サービスを提供
介護医療院:長期的な医療と介護を必要とする高齢者のための施設
特別養護老人ホーム:常時介護が必要な方のための生活施設

これらの施設サービスでは、介護費、食費、居住費の自己負担分全額が控除の対象となります。ただし、特別養護老人ホームの場合、控除対象となるのは支払った額の2分の1ですのでご注意ください。

例①:介護老人保健施設での1年間の自己負担額が120万円の場合

控除対象額 = 120万円 - 10万円 = 110万円

例②:特別養護老人ホームでの1年間の自己負担額が120万円の場合

控除対象額 = (120万円 ÷ 2) - 10万円 = 50万円

医療費控除の対象外となる介護サービス

医療費控除の活用方法

なお、以下のようなサービスは、原則として医療費控除の対象外となるため、注意が必要です。

福祉用具貸与:車いすやベッドなどの福祉用具をレンタルするサービス
特定施設入居者生活介護(有料老人ホームなど):特定の施設に入居して受ける日常生活上の世話や機能訓練
認知症対応型共同生活介護(グループホーム):認知症の方が共同で生活しながら受ける介護

ただし、これらのサービスでも、医療系サービスと併用している場合や、特定の医療行為(たんの吸引や経管栄養など)が行われている場合は、一部控除対象となる可能性がありますので、必ずご自身で確認することをおすすめします。

例えば、グループホームに入居しながら訪問看護を利用している場合、訪問看護の費用は医療費控除の対象となります。また、特定施設入居者生活介護を受けている方が、施設内で医療行為を受けた場合、その医療行為に関する費用は控除対象となる可能性があります。

医療費控除の活用方法

医療費控除を効果的に活用するために、押さえておくべきポイントをご紹介します。

確定申告時の申告手順

先述した通り、医療費控除は所得税の確定申告に合わせて行います。

申請の方法は以下の通りです。

1. 医療費控除の明細書を作成する

年間の医療費と介護費用を項目別に集計し、明細書に記入します。介護サービスの場合、サービスの種類や利用した施設名なども記入が必要です。

2. 確定申告書の医療費控除欄に金額を記入する

作成した明細書の合計額から10万円(または所得の5%のいずれか低い方)を引いた金額を、確定申告書の医療費控除欄に記入します。

3. e-Taxやマイナポータルを利用して電子申告を行う、または税務署に書類を提出する

電子申告の場合、マイナンバーカードを使用してe-Taxで申告できます。書面で提出する場合は、確定申告書と医療費控除の明細書を税務署に持参または郵送します。

ただし、以下の点には気を付ける必要があります。

1.高額介護サービス費の払い戻しを受けた場合、その金額は控除対象外

高額介護サービス費制度により払い戻しを受けた金額は、医療費控除の対象から除外する必要があります。これは二重控除を防ぐためです。

2. おむつ代は、6ヵ月以上寝たきりで医師の証明がある場合のみ控除対象

おむつ代を医療費控除の対象とするには、医師が発行する「おむつ使用証明書」が必要です。ただし、2年目以降は「おむつ使用確認書」で代用できる場合があります。

3. 介護保険の利用限度額を超えた部分も控除対象

介護保険の利用限度額を超えて全額自己負担となった部分も、医療系サービスであれば医療費控除の対象となります。

4. 医療費控除と社会保険料控除の併用が可能

介護保険料は社会保険料控除の対象となるため、医療費控除と併せて申告することで、さらなる節税効果が期待できます。

領収書と医療費控除明細書を正しく管理しよう

確定申告に備え、日頃から支払った介護サービス費用の領収書や明細書を適切に管理することが重要です。以下の点に注意しましょう。

1. 領収書は必ず5年間保管する

税務署から照会があった場合に備えて、領収書や明細書は最低5年間保管する必要があります。デジタル化して保管するのも一つの方法です。

2. 介護事業者が発行する領収書には「医療費控除対象額」が記載されているので、確認する

多くの介護事業者は、領収書に医療費控除の対象となる金額を明記しています。これを確認することで、控除対象額の計算が容易になります。

3. 介護サービス以外の医療費も合わせて管理する

介護サービスだけでなく、通院費や薬代なども含めて総合的に管理することで、より多くの控除を受けられる可能性があります。

4. デジタルツールの活用

スマートフォンアプリやエクセルシートなどを使って、日々の医療費や介護費用を記録する習慣をつけると、年末の集計作業が楽になります。

介護に関する医療費控除の活用事例と効果的な節税テクニック

最後に、医療費控除を最大限活用するためのテクニックをいくつかご紹介します。

1. 複数の家族の医療費を合算して申告する

同一生計の家族(配偶者、子供、親など)の医療費や介護費用を合算して申告することで、控除額が増える可能性があります。

例:夫の介護費用が70万円、妻の通院費が50万円の場合

合算した医療費:120万円

控除対象額:120万円 - 10万円 = 110万円

2. 介護サービスと併せて通院や薬代なども含めて計算する

介護サービスだけでなく、通院費、薬代、医療器具の購入費なども合わせて計算することで、控除額が増加します。

例:介護サービス費80万円 + 通院費20万円 + 薬代10万円 = 合計110万円

控除対象額:110万円 - 10万円 = 100万円

3. 介護タクシーの利用料金も、一定の条件下で控除対象となる

通常のタクシー代は原則として控除対象外ですが、介護タクシーの場合、医療機関への通院や介護サービス利用のために使用した場合は控除対象となる可能性があります。

4. 年末に医療費や介護費用の支払いを集中させる

年間の医療費が10万円に届きそうにない場合、年末に予定していた医療機関の受診や介護サービスの利用を前倒しすることで、その年の医療費控除の対象に含めることができます。

5. 2年分の医療費をまとめて控除する方法を検討する

「セルフメディケーション税制」を利用すると、2年分の医療費をまとめて控除できる場合があります。ただし、条件や控除額の計算方法が通常の医療費控除とは異なるため、よく確認が必要です。

例:Aさん(70歳)が1年間に支払った介護サービス費用が80万円、通院や薬代が30万円の場合

合計医療費:110万円

控除対象額:110万円 - 10万円 = 100万円

※この場合、100万円が所得から控除されることになります。

まとめ

介護にかかる費用は家計に大きな負担をもたらしますが、医療費控除を適切に活用することで、その負担を軽減できる可能性があります。多くの介護サービスが医療費控除の対象となるため、この制度を理解し活用することが重要です。

医療費控除は、介護を受ける高齢者本人やその家族の経済的負担を軽減するだけでなく、より質の高い介護サービスを受けるための資金確保にもつながります。訪問看護や訪問リハビリテーション、介護老人保健施設でのサービスなど、多くの医療系介護サービスが控除対象となります。

効果的に医療費控除を活用するためには、家族全員の医療費を合算したり、介護サービス以外の医療費も含めて計算したりするなど、戦略的なアプローチが必要です。また、年末に支払いを集中させたり、2年分の医療費をまとめて控除する方法を検討したりすることで、より大きな控除額を得られる可能性があります。

ただし、医療費控除の申請には複雑な側面もあります。高額介護サービス費の払い戻しを受けた場合の扱いや、おむつ代の控除条件など、注意すべき点が多々あります。そのため、不明点がある場合は税理士や介護支援専門員に相談することをおすすめします。

医療費控除を最大限に活用するためには、日頃から領収書や明細書を適切に管理し、年間を通じて計画的に医療費や介護費用を把握することが重要です。これにより、長期的な視点での家計管理と介護の質の向上を両立させることができます。

医療費控除は、介護に関わる経済的負担を軽減し、より充実した介護生活を送るための重要なツールとなります。各自の状況に合わせて積極的に活用し、介護の質の向上と経済的負担の軽減を目指すことが大切です。この制度を理解し適切に利用することで、介護に関わる皆様の生活の質を向上させる一助となることでしょう。

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