-10℃でも車を「避難所」にできる技「車中泊が趣味」の防災士が楽しみながら実践&伝授!
いざというとき、1台の車を快適空間に…!
そんな方法を紹介してくれるのが、HBCウェザーセンターの篠田勇弥気象予報士です。
「趣味は車中泊をしながら広い道内をドライブすることです」
そう話す篠田さんは普段、HBCのお天気コーナーを担当するだけでなくSitakkeでも天気情報などを連載しています。
そして実は防災士の資格も持っているんです。
「食べることが好き」だと話す篠田さんは、函館や帯広などによく遠出するそうですよ。
「遠くまで行くと日帰りは本当に無理なので、そのなかで車中泊をよくします。ことしの流氷シーズンは網走に行って、流氷を見に行ったりもしています」
今回はそんな篠田さんに、災害時に車を避難場所として活用する技を紹介していただきます。
正しい知識とグッズがあれば、冬の車内でも避難生活を送ることができるんです。
【特集】“じぶんごと”防災
大雪だって「災害」要チェック!冬の基本装備
まず初めに、確認するのは「冬の基本装備」。
スノーヘルパーやスコップ、牽引ロープ、そして防寒着などです。
冬のあいだは路面状況や視界が目まぐるしく変わって、スタックなど立ち往生の危険性があります。
災害に関係なく、これらの装備は車に備えておくようにしましょう。
実際に車を「避難所」にすると…?
道内で初めて震度7を観測し44人が亡くなった2018年の胆振東部地震を経て、厚真町では、新たな防災備蓄倉庫が完成するなど、地震の教訓を生かす取り組みが全道的に進められています。
一方、札幌で直下型の地震が起きると、最大で5万7千戸の建物が全壊または半壊する可能性があります。
2016年の熊本地震では、避難所も被災し、約7割の人が車での避難生活を余儀なくされました。
そこで冬の災害時、車を避難所にした場合、どんな備えが必要でしょうか。
篠田さんにポイントを聞いてみました。
冬の災害時におけるポイント
篠田さんがまずポイントとしてあげたのが「なんといっても寒さを防ぐこと」。
冬の車内は-10℃を下回ることもよくあります。
そこで、篠田さんが紹介するお役立ちアイテムは5つ。
使い捨てカイロやポータブル電源、窓用断熱シートにエアーマット、そして寝袋です。
それもホームセンターでそろうものばかり!さっそく見に行ってみることに。
①カイロ
おなじみのカイロはお手軽ですでに備えている人も多いかもしれません。ですが、冬本番を前にチェックしてほしいというのが「使用期限」です。
「期限が切れてしまうと発熱時間が短くなったり、温度が安定しなかったりしますので、定期的に確認しましょう」
②ポータブル電源
キャンプでもおなじみのポータブル電源。
冬にエンジンをかけっぱなしにすると、雪で排気ガスが車内に充満し、一酸化炭素中毒の恐れがあります。
そのためエンジンとは別に電源を確保することが大切です。
「ソーラーパネルがあれば充電もできますよ」と篠田さんがアドバイスします。
そのポータブル電源選び、注意点が3点あります。
まずは「使用可能温度」。
北海道で使うには「-10℃以下」を目安にしましょう。
気温が-10度に下がっても実際に電源が使えるということになりますので冬でも安心です。
次に「定格容量(Wh)」。
これはは、1時間で供給できる電力量を表しています。
篠田さんが選んだのは1000Wh以上のもの。
「これぐらいの容量があればスマートフォンが100回ほど充電できますし、電気毛布であれば半日ほど使える計算となります」
最後に「定格出力」。1500W以上あると安心です。
家のコンセントと同じ感覚で使えるので、電子レンジやケトルなどで温かい食事や飲み物をとることができます。
このポータブル電源、大事なのは保管の方法。
高温になりがちな夏場は車内に放置すると危険です。
車に乗らないときは自宅で保管しましょう。
③窓から断熱
防災グッズは買うだけではなく、手作りでも用意することができます。
篠田さんが手に取ったのは…。
「お、ありました。お風呂の保温シートです」
こちらの保温シートはお風呂の浴槽に入れて使うものなんですが、今回は窓の断熱に使います。
専用のものは高価になってしまうので、手作りに挑戦!
必要なものは、お風呂の保温シートに吸盤、ハサミ、先のとがったドライバー、メジャーです。
窓のサイズをメジャーで測ったら、シートをハサミでカットしますが、ここにもポイントがあります。
「サイズはかっちり作らなくても、むしろ大きいなぐらいの方が窓全体を覆うこともできるので」
あえて大きめにざっくり作ってOK!
四隅にドライバーで穴を開け、そこへ吸盤を取り付けて完成です。
案外簡単にできることに驚き!
この断熱シート、冬は銀色の部分を室内側に向けると効果的だそうですよ。
「生きる防災」にするために
いざというとき、どうやって健康で快適な避難生活を送ることができるか。
ヒントは案外、すぐそばにあります。
さらにそのヒントを実践に移すことが、生きる防災につながります。
篠田さん自身も、車中泊の経験が何度もあるものの、最初のころはちょっとした段差で眠れなかったり、周りの目が気になったりと、普段と異なる環境に苦労したそうです。
それでも先ほどご紹介した断熱シートのように、ちょっとした工夫で車内の環境をすごく良くすることができると話します。
最後に防災において、大切なことを話してくれました。
「『防災』とは備えて安心というものではありません。本当に大切なのは、災害が起こったときにそれらが本当に使えるものかどうか、ということです。これを機会に家族と話し合って、そして何よりも楽しんで実践していただければと思います」
【特集】“じぶんごと”防災
文・編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は取材時(2025年11月)の情報に基づきます。