“運動不足”が招く冬場の「糖尿病」リスクとは?#医師解説
初期には自覚症状がなく、気づいたときには進行していることも多いとされる「糖尿病」。糖尿病専門医の松本和隆先生によると、冬場には糖尿病のリスクが高くなる傾向があるため、より注意が必要なのだそうです。今回は、その理由と予防のためにできることを教えていただきました。
教えてくれたのは……松本和隆(まつもとかずたか)先生
三重県生まれ。医療法人松徳会・松本クリニック院長。日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医。
2016年、三重県松阪市に医療法人松徳会松本クリニックを開院。地域では数少ない「糖尿病専門医」として毎日多くの患者の診療を行っている。著書出版、講演、テレビ出演など多数。
「糖尿病」とは、どのような病気?
松本先生:糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が過剰になる病気です。通常、食事で摂取した糖質はブドウ糖に分解され、インスリンというホルモンの働きによって細胞に取り込まれ、エネルギーとして利用されます。しかし、インスリンの分泌量が不足したり、インスリンがうまく作用しなくなったりすると、ブドウ糖が細胞に取り込まれずに血液中に留まり、高血糖状態が続きます。これが糖尿病です。
糖尿病を発症しやすい年代と主な原因
松本先生によると、糖尿病には発症しやすい年代があるとのこと。考えられる原因は多岐にわたり、生活習慣が大きく影響するのだそうです。
松本先生:発症しやすい年代は、40代以降から加齢とともに増加傾向にありますが、最近では若年層でも生活習慣の乱れなどから発症するケースが増えています。
主な原因は、遺伝的な要因に加えて、過食、運動不足、肥満、ストレスなどの生活習慣、加齢などが挙げられます。特に、過食や運動不足はインスリンの働きを低下させ、肥満はインスリン抵抗性を高めるため、糖尿病のリスクを高めます。
冬に「糖尿病」のリスクが高くなる理由と予防策
冬場は糖尿病のリスクが高くなる可能性があるうえに、糖尿病の方にとっても注意が必要な時期なのだと、松本先生は言います。その理由について、教えていただきました。
松本先生:冬は寒さから外出を控え、運動不足になりがちです。運動不足は、筋肉でのブドウ糖の消費量が減少し、血糖値が上昇しやすくなります。また、運動不足はインスリンの感受性も低下させるため、インスリンが効きにくくなり、血糖コントロールが悪化する可能性があります。
さらに、冬は気温が低いため、血管が収縮しやすく、血流が悪化する傾向にあります。糖尿病の方は、もともと血管がダメージを受けやすい状態にあり、血流の悪化は合併症のリスクを高める可能性があります。
そのため、冬場でも意識的に体を動かすことが大切です。室内での軽い運動やストレッチ、ウォーキングなどを取り入れるように心がけましょう。
松本先生によると、冬の間でも特に要注意なのは年末年始なのだそうです。次回の記事では「生活習慣で意識すべきこと」と「感染症による影響」について、ご紹介します。
shukana/webライター