【東レ・ベルテの公式戦共同開催】相乗効果で集客力アップ!地域活性化にも期待!静岡のプロチームによる県内初の試みを紐解きます!
静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「東レ・ベルテの公式戦共同開催」。先生役は静岡新聞の寺田拓馬運動部長が務めます。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」2025年4月10日放送)
(寺田)バレーボールSVリーグ男子の東レアローズ静岡とバスケットボールBリーグ2部(B2)ベルテックス静岡のリーグ戦が4月5、6日、静岡市駿河区の草薙このはなアリーナで初めて、同じ日に同じ会場で時間をずらして行われました。バレーもバスケも体育館を使うアリーナ競技ということは共通しているので、集客などで相乗効果を狙うという挑戦的な試みでした。別の競技のプロチームが同じ日に同じ会場で公式戦を行うのは、おそらく県内で初めてだったんですよ。
(山田)そうですか。確かに、聞かないですもんね。
(寺田)日曜日に取材に行きましたが、大変会場は賑わって、盛り上がっていました。東レとベルテの両方のチームを応援している方は「今まで試合が重なるとどちらか選ばないといけなかったけれど、同じ会場で観戦できて嬉しい」と、喜んでいました。共同開催限定のグッズ販売や両チームのマスコットとの記念写真を撮れる撮影会なんかも人気でした。
(山田)いいですね。
(寺田)土日とも先に東レが午前11時から試合をして、その後観客は1回外に完全に外へ出て、コートもバレー用からバスケ用に設営し直し、午後4時半からベルテックスが試合を行いました。バレーからバスケへコートを入れ替える作業は、なかなか大がかりだったんですよ。
リハーサルを積んで本番に臨んだそうで、当日混乱はありませんでした。バレーのSVリーグには、審判の判定に対して映像判定を求める「チャレンジ」があるんですが、そのために、コートの前にはたくさんのカメラが設置され、配線もあります。だから、入れ替えと言っても、「ただバレーのネットを外してバスケのゴールを持ってくればいい」というわけではなく、難しさがあったんですよ。
(山田)ライン引き直せばいいって話ではないわけですね。
(寺田)バスケも、多くの電子機器を使っていますよね。それでも、はたから見てる限りでも、スムーズでした。その前のご苦労はあったと思うんですが。
ファン層が違うからこそ、意味がある
(寺田)共同開催のメリットは、どんなところにあると思いますか?
(山田)バレーボールしか知らなかったファンがバスケットボールを知る。その逆もありますね。同じ静岡のチーム、しかも体感スポーツで共通する部分があるから、相乗効果になるんじゃないかなと思うんですよね。
(寺田)まさにそういうことがあると思います。まず、同じアリーナを使えば、会場の取り合いをしなくていいですよね。設営などの経費も折半できるメリットがあります。
また、集客の相乗効果も大きいと思うんです。私が会場で見た分析なんですが、男子バレーの東レって、女性ファンが多いんですよ。男女比だと女性が6から7割ぐらいです。最前列に陣取ってるのは、20代から30代の女性が目立ち、推し活なんでしょうか、熱心に声援を送っている人もいました。
(山田)本格的なカメラを持って、選手を撮っている方も結構いますよね。
(寺田)一方で、男子バスケのベルテは、もちろん女性の方も数多くいましたが、やっぱり若い男性ファンが目に付きました。男女比でも、やや男性が多かった印象で、ビール片手に観戦という方もいましたね。
東レとベルテでは、ファン層に違いがあるんですよ。違うからこそ、同日同会場で両方のファンを互いに取り込めば、かなり集客を図れるんですよね。
(山田)すごいですね。
(寺田)その上に経費も削減できる。うまくいけば、まさに一石二鳥なんですよ。
(山田)ちゃんとファン層が違うってところがミソですね。
バレーとバスケの間の過ごし方、どうする!?
(寺田)この話は、静岡市にとっても大きな可能性を秘めています。ご存知の通り、静岡市はJR東静岡駅北口の市有地に次世代型のアリーナ建設を計画していますね。今回の会場は草薙のこのはなアリーナだったんですが、バレーとバスケの試合だって、先ほど説明したように準備や設営でどうしても数時間以上かかります。今後も共同開催を行う場合、観客の皆さんにこの空き時間をどう有効に使ってもらうかが、課題になってくるんですよ。
(山田)なるほど!ただ体育館の周りで3時間待つのは大変ですからね。
(寺田)今回も、会場には飲食ブースは出ていましたが、観客からは、「もっと近くに立ち寄れる商業施設があれば、より楽しめるはず」っていう声もあったんですよ。
集まった観客が空き時間に食事をしたり、買い物したりできれば、さらに経済効果が見込めますよね。東静岡周辺にはそこそこ商業施設がありますが、新しいアリーナができて、東レとベルテが共同開催すれば人が集まってくるということで、新しくお店を開こうとか、そういう人が出てくるかもしれないじゃないですか。
(山田)そうなったらいいな。
(寺田)更なる地域活性化に繋がっていく可能性があると思います。
他の競技でもできる可能性
(寺田)何回も話していますが、静岡はスポーツ王国です。多くの競技でプロチームがあるので、バレーとバスケだけではなく他の組み合わせでも共同開催ができると思いますし、スポーツを軸にした地域経済の活性化の可能性は、静岡市だけでなく他の市町でも探れると思うんですよ。
確かに。体育館で言ったら卓球のジェイド静岡も、可能性もありますしね。屋外競技だったらサッカーの後にラグビーもできそうですね。
(寺田)そういう可能性もありますよね。初めての試みを成功させて、ベルテの広報担当者は「東レさんとはね、仲間として一緒に静岡のアリーナスポーツを盛り上げたい」と話し、手応えを感じていました。東レの広報担当者の方も、「あそこに行けば、何か楽しいことがあるということで、1日お祭りのようにできたら」と、来年の開催にも意欲を示したんですよ。
バレーとバスケでは盛り上げ方も違ったりします。スポーツ自体だけでなく、会場の雰囲気も違うので、これも面白いんですよね。1日で二つの試合を見れたので、そういうのも楽しかったです。
東レの顔、米山選手の引退セレモニーも
(寺田)実は、今回の試合って共同開催として話題になっただけでなく、特別な試合でもあったんです。
実は、東レの顔として19シーズンチームを引っ張ってきたアウトサイドヒッターの米山裕太選手が今季限りで現役を退くんですが、この試合が地元最終戦、つまり引退試合だったんです。
(山田)そういうことか。
(寺田)米山選手は40歳で、これまでに東レを2度のリーグ優勝に導いて400試合出場を達成し、日本代表としても活躍しました。今、日本の男子バレーは世界で戦える力がついていますが、その礎を築いたレジェンドなんですよ。
(山田)寡黙な感じの多くを語らない選手ですけども、いい選手ですよね。
(寺田)そうなんですよ。この日の試合では、米山選手はスタメンで出場するといきなり全盛期を彷彿させるスパイクをコート中央に打ち込んで、チーム最初の得点を決めたんですよ。
(山田)それはしびれますね。
(寺田)現役でセッターとしてコンビを組んだ阿部監督は「思い切り振り抜いたヨネの姿を見て、清々しい気持ちになった」って熱くコメントしたんです。でも米山さん本人は、試合後その場面について質問された際、「あの1本に特別な考えはないし勝つことだけを考えた」と話していて、実直な人柄が出ていましたね。調子が悪くて70%の力しか出せなかったとしても70%を出し切る。常に目の前の試合、次の1本にベストを尽くす。この姿勢があったからこそ、19年間現役を続けられたと思います。
米山選手は身長185センチで一般の人からしたら大きいんですが、バレーのアタッカーとしては小柄なんですよ。決してエリート街道を歩んで歩んできたわけではなく、東レに入団したとき、当時監督だった篠田歩さんは「トップで通用するかな」って思ったそうなんです。それでもそこからコツコツと努力し続けた結果、大成したんですよね
(山田)なるほど。
(寺田)この試合は負けてしまいましたが、その試合のセレモニーでは、観客は会場に残って、大きな拍手を送りました。米山選手と同期入団で、今チームスタッフを務めている富松崇彰さんが花束を持って登場し、抱き合ったら、思わず涙があふれていました。また、サプライズで米山選手の、まだ幼い子供達が手紙を読み上げて感謝状を渡したんです。会場中が温かな雰囲気に包まれて、すごく良い日だったんですよね。
(山田)見に行った方からも、「感動で泣きました」というコメントがあります。バスケファンはもしかしたらヨネさんのこと知らないかもしれないけれど、見ててここだけでも泣けてきますよね。
(寺田)最後は、チームメイトに胴上げされていました。若手の見本として、本当にチームの中の信頼が厚かったんだなって思いましたね。
(山田)今回、このベルテと東レの共同開催を見て、改めてどうでしたか。
すごく可能性を感じましたね。スポーツを見る幅も広がるし、違う競技なんですが、比べてみるとそれぞれのスポーツの良さもわかったりしましたね。
(山田)しかもやっぱり、二つのスポーツが同じ日に見られるっていうのがいいですね。またやってもらいたいですね。今日のニュースはこれでおしまい!