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「小学生年代で身につけておいて欲しいライフスキルとは?」内野智章×菊池健太対談

サカイク

毎年、春と夏に開催しているサカイクキャンプ。サッカーの技術、戦術だけでなく、ライフスキル(リーダーシップ、コミュニケーション、感謝の心、考える力、チャレンジ精神)の向上にも重点を置き、子どもたちの成長へと繋げています。 

今回は、サカイクキャンプやシンキングサッカースクールで長くメインコーチを務める菊池健太コーチと、興國高校サッカー部監督として、30人以上のプロ選手を輩出し、現在は奈良クラブアカデミーのテクニカルダイレクター兼U-18コーチを務める、内野智章氏による対談を行いました。

前編のテーマは「小学生年代で身につけておいて欲しいライフスキル」について。サカイクキャンプやシンキングサッカースクールでたくさんの子どもたちを指導してきた菊池コーチ、プロになる選手を何十人と見てきた内野氏は、ライフスキルの重要性をどう感じているのでしょうか?
(取材・構成 鈴木智之)

 

■いかに上手くコミュニケーションをとれるか

菊池:サカイクキャンプでは、2017年からライフスキルプログラムを導入しています。子どもたちに習得してもらいたいのは、リーダーシップ、コミュニケーション、感謝の心、考える力、チャレンジ精神の5つです。

 

内野:いいですね。

 

菊池:なかでもコミュニケーションは重要で、キャンプの会場で初めて会う子ども同士が多く、どう打ち解けて、自分の意見を言えるかが課題になっています。内野さんは高校生を長く指導されましたが、高校年代では、どういったコミュニケーション力が求められますか?

 

内野:高校に入ってきたときもそうですし、高校から大学、プロへと進んでいく中でもそうですが、いかにして、年上の選手と上手くコミュニケーションをとるかは重要だと思います。年上に"かわいがられるキャラ"でいる方が、いいのかなという気がしますね。

 

菊池:僕はサカイクキャンプやスクールを通じて、たくさんの子たちと触れ合っていますが、いまの子たちはオンラインでのコミュニケーションが多い環境で育っているので、サッカーを通じて人と会話したり、勝ち負けの感情も含めて、自分を出せる環境がもっとあるといいなと思うんです。

 

内野:日本の場合は「空気を読むこと」が大事ですよね。初めて集まる人たちの中で、どうコミュニケーションを取るか。サカイクキャンプやワンデイのスクールなど、初めて合う人達がいるコミュニティに連れて行くことは、コミュニケーション能力を高める方法のひとつだと思います。

 

 

■自己主張の重要性

内野:ただ、日本では自己主張だけしていると難しいですよね。海外でプレーしている選手と話すと、どれだけ馬鹿騒ぎの中に入れるかという、大阪の芸人さん的な能力と、その中で相手の空気を読む力が求められると言っていました。海外の場合、自己主張しないと、ミスをしても「自分は悪くない」と言ってくるから、そこで引いてしまうと全部自分が悪いことになる。文化の違いを読み取れるかどうかが大事ですね。

 

菊池:僕は東北や関東でもサカイクキャンプをやらせてもらってますが、大阪の子たちの自己主張の強さは、飛び抜けているなと感じます(笑)

 

内野:それは僕でも思いますよ(笑)。大阪人が他の地域より自己主張が強いというわけではないですが、比較的そうですよね。主張がうまい人が多い。

 

菊池:僕も、話し終えたあとに「ほんで?」とかよく言われます(笑)。大人と会話できるのはすごく大事なコミュニケーションで、サカイクキャンプだと、自己主張をあまりしない子もいます。チームでもおとなしかったり、最初は2人組を作ることすら難しい子がいる中で、自分を出していくことや誰かと関わることの重要性を、サッカーを通じて伝えています

 

■「チャレンジを大切」に背中を押す

内野:海外の選手に話を聞くと、一発芸ができるかどうかで受け入れられるスピードが全然違うそうです。大阪では、下のカテゴリーから上がってきた選手が、あいさつとともに一発芸をすることがあって、そこで滑り倒すと怖いものがなくなります(笑)。永長鷹虎がフロンターレに練習参加したとき、言われていないのに、自己紹介のときに一発芸をやって滑り倒したのがウケて、めちゃくちゃかわいがられた話を聞きました。

 

菊池:それは最高ですね(笑)

 

内野:最初に思いっきり恥をかいたら、怖いものがなくなるんです。日本の子は恥ずかしがったり、失敗や人前で恥をかくのを嫌がる傾向が強いですよね。

 

菊池:そう思います。ミスをして恥をかくのが嫌だから、そつないプレーを選んだり、横パスから入ることが多かったり。なので、サカイクキャンプでは「チャレンジ」を大切に、子どもたちの背中を押すような接し方や声かけを心がけています。

 

内野:それはすごくいいことだと思います。「失敗する勇気」をどう持たせるかが大事です。僕は「ウチノメソッド」を通じて、子どもたちに技術やコーディネーションを教えていますが、観察していると、できないことが恥ずかしいのか、リフティングの課題を途中で止めてしまう子もいます。そのときに「できないことは悪いことじゃないけど、チャレンジしないのはよくないこと。できないから練習するんだよ」と声をかけています。

 

■積極的に失敗しよう

菊池:できない自分が恥ずかしいから止めてしまうのか、悔しいから練習するのかで、その後の成長が変わってきますよね。なぜうまくいかなかったのかを考えて、頭の中を整理してチャレンジすることが大切なわけで。コーチの関わりで前向きにさせていくことや、一緒にチャレンジしていくことも必要かもしれないですね。

 

内野:コーチが最初に手本を見せて、ミスをするのもありだと思うんです。「最初はできなくていいよ。積極的に失敗しよう」って。とにかく日本人は失敗を恐れています。常に失敗を恐れているのと、周りの目が非常に気になる。

 

菊池:それはよくないですよね。とくにサッカーではマイナスに働きます。

 

内野:自己主張に関しても、日本は自己主張が過ぎるとダメな空気なんで。「あいつ出しゃばってる」とか「うるせえ」ってなっちゃう。「自己主張が和を乱す」と言われたり。

 

菊池:学校教育の問題になるんですかね、大きく考えると。

 

内野:学校は難しくなってきてますよね。これ言っちゃいけない、あれやっちゃいけないがすごく増えてきているので、難しいんだろうなとは思います。

 

■個性豊かな選手がプロになる

 

菊池:できるだけはみ出ないように、みんな同じ形に育っていきますね。とがってる部分をそぎ落とされて、みんな丸くなっていく。

 

内野:先生がそうなんで、みんなを丸くしていくんですよ。当たり障りないように、問題が起きないようにって。学校内でもそうですし、保護者に対しても、生徒に対してもそうです。どんどん個性を殺していく傾向にあるんで。自分の個性が消えていっちゃってる人に教えてもらうと、個性的ではなくなっていきますよね。

 

菊池:高校で活躍する子は、個性豊かな選手が多いですか?

 

内野:そこはほぼ間違いないんじゃないですかね。活躍する子は大変な子が多い。一言で言ったら「変わってんな、あいつ」みたいな子の方が多いですね。全員じゃないですけど。ポジションによるかな。ボランチとかはしっかりしてますけどね。

 

菊池:個性というか、自分の良さをしっかり持てる子ですよね。指導をしていると、どうしてもダメなところの指摘が多くなってしまうと思うんです。

 

内野:仕方のないことでもありますけどね。

 

菊池:僕らはサカイクキャンプで、その子のキラリと光る部分だけを伝え続けて、悪いところを直していくというよりは、いいところをどんどん伸ばしていく。「いまのプレーはよかったね」とか、「シュートが得意ならどんどん打ってこう」という話をしていって、できるだけ得意な部分を伸ばして欲しいという想いを持っています。

 

<後編に続く>

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