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上野駅のおすすめ待ち合わせ場所11スポット~相手を待ちながら上野の歴史に思いを馳せてみる~

さんたつ

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「待ち合わせ」、それは情緒あふれる響きである。ところがスマホが浸透した現在、ひとは特に「待ち合わせ」をしなくても、なんとなく会えるようになってしまった。それでも駅に行けば、今日も多くの人たちが、誰かを待っている。皆はなぜ駅で待ち合わせるのだろう、そして駅のどこを目印にすれば相手に会えるのだろう。美術館や博物館へ向かう人、商店街で楽しむ人など、さまざまな目的で利用する人々が行き交う“北の玄関口”上野駅で、おすすめ待ち合わせスポットを探っていきたい。

文化施設から商店街まで、向かう先はさまざま

「上野駅」と聞くと、「北の玄関口」という言葉が思い浮かぶ。かつて北関東や東北、信越地方と東京を結ぶ列車の多くが、上野駅を始発・終着としていたからだ。特に高度経済成長期、東北から集団就職で上京する「金の卵」と呼ばれた中学生たちは、臨時列車に乗って上野駅の18番線ホームに到着し、新しい生活の一歩を踏み出していった。

1964年に発表された井沢八郎「あゝ上野駅」の歌碑。集団就職がモチーフとなっている。広小路口を出てすぐのガード下に設置されているので、待ち合わせ場所にしてもいい。

いまの上野駅は、美術館や博物館などの文化施設に行く人、アメ横など活気ある商店街で買い物を楽しむ人など、さまざまな目的で利用する人が行き交う。地上3階(+M2階)から地下4階までの8階構造、4つの改札に9つの出口と、大変複雑なつくりになっているJR上野駅。どこで待ち合わせをするのがいいのだろう。

石川啄木の歌碑/朝倉文夫「三相の像」【JR上野駅改札内(1階)】

まず、一番大きな1階・中央改札付近から見てみる。「北の玄関口」を象徴する、上野駅始発の列車が発着する13~17番線の地平ホームに最も近い改札だ。また、地下の東北・山形・秋田・北海道・上越・北陸新幹線へののりかえ口にも近い。現在上野駅を始発とする特急は激減し、この地平ホームに到着する電車も数少なくなっているため、中央改札付近はがらんとした印象を受ける。それでも、「北の玄関口」を象徴するような石川啄木の「ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人ごみの中に そを 聴きにゆく」という歌が刻まれた碑や、

上野駅地平ホーム15番線の車止め付近に設置された石川啄木の歌碑。岩手出身の啄木も、やはり上野駅で「ふるさとの訛」を聴いたのだろうか。

朝倉文夫の作である「三相の像」など、待ち合わせに最適なスポットが多くある。

中央改札外にある「翼の像」と同じ、彫刻家・朝倉文夫の作。3人の女性は「智・情・意」をあらわすとされる。

猪熊弦一郎「自由」/平山郁夫「ふる里・日本の華」/朝倉文夫「翼の像」/希望の木【JR中央改札周辺】【広小路口】

中央改札を出ると、猪熊弦一郎「自由」や、

さまざまな人々や動物が描かれた猪熊弦一郎「自由」。さまざまな人が行き交う上野駅中央改札にふさわしい(2022年撮影)。
2025年8月現在、修復のため見ることができなくなっている。

自動券売機上部にある平山郁夫原画のステンドグラス「ふる里・日本の華」など、

東北・上越各県の花や風景を盛り込んだという、平山郁夫の大作。

印象的な壁画作品が多く目に入るが、いずれも頭上にあり横に長いので、待ち合わせ場所として最適なのは朝倉文夫作「翼の像」であろう。

手を伸ばした女性の姿が印象的な「翼の像」。そもそも「待ち合せ場所」と書いてある。

中央改札からまっすぐに進んで、広小路口を出たすぐ左手に「希望の木」(ポレイア広場)と題されたモニュメントがある。これも待ち合わせには良さそうな目印なのだが、なぜか周囲が柵に囲まれていて近づくことができない。

説明板には「アトレ上野店開業10周年を記念して建てられたモニュメント」とある。なぜ柵で囲まれているかはわからない。

ジャイアントパンダ像/ジュエリーブリッジ/上野動物園の案内板【パンダ橋口】【公園口】

JR上野駅3階には、入谷改札と公園改札の2つの改札がある。入谷改札を出てすぐの出口「パンダ橋口」は、上野公園方面とを結ぶ「パンダ橋」につながる。

上野公園側のパンダ橋のたもとには、橋名を刻んだ石が設置されている。パンダをイメージさせる白黒の石である。

ここでひときわ目立つのが「ジャイアントパンダ像」だ。

1984年に設置された巨大パンダ。2022年時点では、子パンダをおなかに抱えていた。
日のあたる場所にいるので、少し黒い毛があせている。2025年8月現在、子パンダはお出かけ中とのことで、どこに行ったのだろう。

一方、東上野方面に向かうペデストリアンデッキは「ジュエリーブリッジ」と名付けられ、オレンジ色の巨大オブジェや、

遠くからでも目立つオレンジのポール。付け根部分に「ジュエリーブリッジ」と刻まれている。

銀の球を戴いたオブジェなどが設置され、待ち合わせ場所としてもわかりやすそうだ。

こちらも比較的目立つオブジェ。ジュエリーブリッジの名称は、宝石店街のある御徒町が近いからだろうか。

上野動物園や国立西洋美術館、東京文化会館などの多くの文化施設に行くには、公園改札が最も便利だ。駅から最も近い待ち合わせ場所としては、公園改札を出てすぐのところにある、象のお尻をかたどった上野動物園の案内板が目立つ。

遠目に見ると何かの動物の顔かと思いきや、近くに来ると尻尾があるので、お尻とわかる。

開業当初の回転改札の複製/ステンドグラス「上野今昔物語」(宮田亮平)【地下鉄銀座線上野駅】

上野はまた、昭和2年(1927)に、東洋で初めて地下鉄が開通した駅でもある(東京地下鉄道《現在の銀座線》上野‐浅草間)。地下鉄銀座線のJR上野駅方面改札には、その開業当初に使用されていた回転改札の複製が設置されている。

銀座線上野駅の構内には、あちこちに創業時を思わせるアイテムが点在している。

向かい側には宮田亮平原画のステンドグラス「上野今昔物語」があり、上野駅の歴史に思いを馳せながら待ち合わせをすることができる。

銀座線改札を出るとパッと目を引く大きなステンドグラス。何が描かれているかを眺めながら人を待つのもいい。

「川柳の原点 誹風柳多留発祥の地」碑/ルイス・ニシザワ「風月延年」【京成上野駅前】

JR上野駅から京成線・京成上野駅へ乗り換える場合には、徒歩数分を要する。その際に便利な待ち合わせ場所としては、上野公園の階段下・京成上野駅入り口横に設置された「川柳の原点 誹風柳多留発祥の地」碑がある。

金のあひるが立っている桶部分には、「羽のある いいわけほどは あひるとぶ」という川柳が書かれている。

羽を広げた金のアヒルが特徴的だ。また、京成上野駅入り口の壁面にあるルイス・ニシザワ作「風月延年」も、目を引くレリーフで、待ち合わせ場所に適しているだろう。

鯉の口から出てきた子供が風車を吹いている、ダイナミックな作品である。

絹谷幸太作「故郷の星」/ときめき広場【JR上野駅・新幹線コンコース(地下3階)】

ところでJR上野駅は、1985年の東北新幹線上野駅延伸に伴い、新幹線始発駅としての役割も担うこととなった。その6年後、1991年に東北新幹線が東京駅に乗り入れることとなり、現在では上野駅始発の新幹線は数少なくなっている。

新幹線始発駅であったころの名残からか、上野駅の新幹線改札内コンコースはかなり広いスペースがとられている。地下3階のコンコースには、以前は地平ホームの天井から吊るされていた絹谷幸太作「故郷の星」が設置されており、目立つ待ち合わせ場所となっている。

広い新幹線B3コンコースの中でひときわ目立つ星。足元のタイルには「仰ぎみれば故郷の星ここにあり きらめく星ふれあいの星わが心をうるおす」と刻まれている。

そして私が上野駅で最も好きな待ち合わせ場所も、この地下3階新幹線コンコースにある。それが「ときめき広場」である。

無造作に置かれた椅子、掲示ボード以外何一つない壁面、そして「ときめき広場」。命名者にその由来を聞いてみたい。

ここには「ときめき広場」というキラキラしたネーミングを連想させるものは何もない。ただ椅子と、がらんとした空間があるのみだ。なぜここに「ときめき広場」という名前がついたのか。そんなことを考えながら、「ときめき広場」の椅子に座って相手を待つ時間も悪くない。それはまた、「北の玄関口」としての上野駅の役割、その変遷を考えることにもなるのかもしれない。

イラスト・文・撮影=オギリマサホ

※石川啄木の「啄」の表記は、本来はキバ(点)付きが正当です。

オギリマサホ
イラストレータ―
1976年東京生まれ。シュールな人物画を中心に雑誌や書籍で活動する。趣味は特に目的を定めない街歩き。著書に『半径3メートルの倫理』(産業編集センター)、『斜め下からカープ論』(文春文庫)。

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