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呉に行ったら、絶対に寄りたいおいしい店7選。朝から夜までたっぷりと

さんたつ

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軍港の街、呉。戦艦「大和(やまと)」の影を追いながら歩けば、時代の波にもまれた街の記憶がそこかしこに残る。いまも息づく昭和の薫りと地元ならではの味を求めて、呉の朝から夜まで楽しみたい。

文具のひろば ポプラドー

思い出に浸る昭和のやさしい喫茶店『珈琲館 飛鳥』

大和をテーマにした戦艦大和プリンサンデー800円、飛鳥ブレンド480円。
2代目の沖野誠さん。注文を受けてからサイフォンでコーヒーを淹れる。

モーニングから地元の人でにぎわう喫茶店。古きよきテーブルやイス、レトロな照明など、昭和37年(1962)創業時から受け継がれるインテリアが印象的。デザートのみならず、グラタンやオムライスなどの食事メニューも人気を集める。

『珈琲館 飛鳥(あすか)』店舗詳細

珈琲館 飛鳥(こーひーかん あすか)
住所:広島県呉市中通3-3-32/営業時間:8:00~18:00/定休日:金/アクセス:JR呉線呉駅から徒歩10分

この世界の片隅で心ほどける一膳を『森田食堂』

湯豆腐300円。出汁は音戸産のいりこでとったやさしい味。
3代目として店を守る女将の森田鈴子さん。

大正2年(1913)に旅館として創業したが、昭和20年(1945)に呉空襲を受け、戦後に食堂として再開した。冷蔵ケースにずらりと並ぶ一品料理はセルフで取り、店内に貼られた麺類やご飯メニューは口頭で注文するシステム。

店は呉駅を出てすぐ。
忙しく働く人々が短時間で食べられるようにと考えられた、呉名物の細うどん350円。

『森田食堂』店舗詳細

森田食堂
住所:広島県呉市中央1-9-3/営業時間:8:30~21:00/定休日:日と第1・3月/アクセス:JR呉線呉駅から徒歩2分

ずっしり重い呉の味を焼きたてで『メロンパン 本店』

定番のメロンパン243円を筆頭に、全種類が購入できる。
副社長の中塩愛子さん。

呉市発祥のラグビーボール型メロンパンで知られる。昭和11年(1936)、初代の中塩春馬さんが創業し、現在も変わらないレシピで味を守り続ける。本店では、他県になかなか出回らないサンドイッチ類なども多数そろう。

鮮やかなメロン色が目を引く建物は、創業時と変わらない場所に。
土曜に登場するドーナツ120円~。左のシナモンは、過去に販売していたシナモンパンのパウダーを復刻。

『メロンパン 本店』店舗詳細

メロンパン 本店
住所:広島県呉市本通7-14-1/営業時間:6:30~売り切れ次第終了/定休日:日/アクセス:JR呉線呉駅からバス11分の本通7丁目下車、徒歩1分

酒と駄菓子でゆるっと過ごす夜『駄菓子横町三丁目』

ブラウン管テレビや懐かしのゲーム機もあり、昭和の世界が広がる。
店主の安井陽介さん。

懐かしい約100種のお菓子が食べ放題の駄菓子酒場。サブカル好きの店主・安井さんの趣向がぎっしり詰まった空間で、まったりとお酒と会話を楽しめる。同じビル内には、ゲストハウスやレンタサイクルの店も。

チャージ料500円で駄菓子食べ放題に。写真のドリンクはガリガリ君サワー800円。

『駄菓子横町三丁目』店舗詳細

駄菓子横町三丁目
住所:広島県呉市本通4-1-10/営業時間:20:00~24:00/定休日:不定休/アクセス:JR呉線呉駅から徒歩18分

呉独自の酒場カルチャー発信地『鳥八茶屋』

鳥皮の味噌煮390円、刺身盛り合わせ1430円、「雨後の月」など呉の日本酒も豊富。
生け簀には瀬戸内島しょ部、九州から直送される魚が泳ぐ姿が。

呉市内の焼き鳥店を名乗る名店で、創業は昭和38年(1963)。現社長の上かみ瀬せ 正嗣(まさつぐ)さんの父が、店内に生け簀を置くスタイルを初導入した。2013年に店舗老朽化のため改装リニューアル。モダンな雰囲気に生まれ変わった。

着物姿で迎えてくれる女将の上瀬理子(あやこ)さん。「鳥皮の味噌煮はお土産としても販売中です」。

『鳥八茶屋』店舗詳細

鳥八茶屋
住所:広島県呉市中通3-3-12/営業時間:17:30~22:00/定休日:月と月2回の日/アクセス:JR呉線呉駅から徒歩15分

温かさとユーモアでおもてなし『屋台 かさ』

店主の坂本さんは常連客も一見客も分け隔てなく迎えてくれる。 
やわらかく茹で、網焼きで提供する名物の豚足700円。

57年の歴史をもつ、呉屋台で一番の老舗。現在は2002年に2代目となった坂本博史さんが一人で店を切り盛りする。創業者の母の味をそのままに、メニューはむかしと変わらず、良心的な価格も魅力だ。えんじ色の暖簾を目印に。

ベーシックで飽きのこない豚骨醤油味の中華そば700円。

『屋台 かさ』店舗詳細

屋台 かさ
住所:広島県呉市中央3丁目周辺/営業時間:19:30~24:00/定休日:木、そのほか不定休/アクセス:JR呉線呉駅から徒歩13分

酔いをふんわり包む真心こもった一杯を『メキシコ』

おでんは7種類。右手前のすじ盛り600円。野菜や練り物などは各200円。
2002年に屋台を始めた店主の森川浩三さん。真摯な人柄にファンが多い。

店名の由来は、店主の母が営んでいた喫茶店の名前から。昆布、あご出汁、倉橋島の江後醤油が効いたラーメンは、飲んだあとでも胃もたれなし。「わふうらぁめん」の文字を目印に。メキシコ料理はないのでご注意を!

お好み焼から構想した和風らーめん650円。キャベツや豚バラがのる。

『メキシコ』店舗詳細

メキシコ
住所:広島県呉市中央3丁目周辺/営業時間:19:00~24:00/定休日:木、そのほか不定休/アクセス:JR呉線呉駅から徒歩13分

ハイカラでローカル色が強い? 奥深き呉の懐へ

呉と聞いて想像するのは、軍港、造船、海上自衛隊、戦艦「大和」や映画のロケ地だろうか。どれも間違いではない。

明治22年(1889)に海軍が呉に軍港を開いて以来、軍港都市として急速に発展。戦後は鉄鋼業や造船業で繁栄した。その残像がいまでも街のあちこちに見てとれる。

現在の呉について正直に話すと、中心地の商店街はシャッターが目立ち、かつての活気に比べると人通りは少ない。取り壊された建物の跡地は駐車場になり、ビルの壁には年月を刻んだ傷や色褪せが残る。

しかし、そこかしこに激動の時代とともに積み重ねられた日常が確かに息づいている。その代表が、戦中の海軍への納品や戦後混乱期の流れを受けた、県内屈指の実力派グルメだろう。

呉市のキャラクター呉氏。得意技はダンス!
呉市の名物店がそろうパルス通り。映画館が多くあったことから、もとは劇場通りという名だったとか。

【ひる呉】街の来し方を伝える素晴らしき名店たち

江戸時代創業の蔵元『三宅本店』の基幹銘柄「千福(せんぷく)」は、赤道付近を往復しても味が変わらなかったと海軍から品質優秀の証明書が送られ“酒王”と呼ばれるまでに成長した。

紡錘形のパンを「メロンパン」と呼ぶのは呉っ子の常識だ。そのもとは当時メロンと呼ばれていたウリ科のマクワウリ。お腹いっぱい食べてもらいたいという初代の思いをいまに受け継ぐ。本店で買ったパンは、ずしっと重くほのかに温かい。

『森田食堂』では、壁に並ぶ品書きの良心的な値段に誰もが目を見張る。女将の森田鈴子さんの酔った客のあしらいもお手のもの。決して媚びず、でも気遣いがある。場をなごませるチャーミングなツンデレ具合がとてもいい。

ほどよく落ち着ける喫茶店もあるし、時計店、刃物店、たばこ屋など独立した商店も健在。まさによくできた昭和の街だ。

一方、粋でハイカラな雰囲気も漂う。「人口規模のわりに、かつては劇場や呉服店も多かった」と納得の答えをくれたのは、『ポプラドー』の店主・山本茂樹さん。呉に海軍があらゆる文化を持ち込んだのだ。

店で御朱印帳ならぬ、呉の店めぐりに便利な呉趣印巡(ごしゅいんめぐり)帳を発見。市内の某カフェ店主が、旅客と地域の交流のきっかけにと考案したものだとか。

呉は三方を山に囲まれ、眼前には海というまるで密閉室のような地形だ。それゆえ、街も人もどこかローカル色が強いように思う。しかし、一度打ち解ければ垣根は驚くほど早く取り払われる。何げない店がむかしから続く侮れない名店だったりする。実に奥深い。

文化6年(1809)築、旧長ノ木街道に面した旧澤原家住宅、通称「三ツ蔵」。アニメ映画『この世界の片隅に』にも登場した。

鳥皮味噌煮と生け簀と屋台。深くて渋い呉の酒場

標高737mの灰ヶ峰展望台から。呉市街の夜景は、中四国三大夜景の一つ。

呉の夜も実におもしろい。「ザ・昭和遺産」と呼ぶにふさわしい、むかしの風情のまま営業を続けながら地元客でにぎわう店が多くある。

市街地には、さまざまな路地が縦横に点在。気になる店に気持ちの赴くまま入るがいい……と言いたいが、旅人には少しハードルが高い。

商店街から一歩それると、絵になる昭和な路地があちこちに。

【よる呉】「ザ・昭和遺産」な店をはしご酒

心細さを感じたら『駄菓子横町三丁目』へ。店主の安井陽介さんがフランクに迎えてくれる。「レンタル呉の夜を案内する人」としても活動中だ。

呉には、店名に「鳥」がつく店が多い。単なる焼き鳥店ではなく、みんな、活魚を食べに行く。しかも必ずといっていいほど店内に生け簀がある。『鳥八茶屋』に入ると、そこはまるで水族館……!

なのだが、まず鳥皮の味噌煮、通称「みそ」を注文するのが正解。魚が豊富に獲れる倉橋島出身者が始めて根づいた、呉ならではの摩訶不思議な酒場文化だ。

蔵本通り沿いの敷地には、屋台が9軒。恐る恐る『屋台 かさ』の暖簾をくぐると、拍子抜けするほど明るい店主の坂本博史さんが迎えてくれた。「みんなでバカ笑いしよるときが一番楽しいよ」。店の歴史の一部になりたいと心から思った。

夜を彩る雑居ビルの集合看板。レトロモダンなフォントが目を引く。

【番外編】ここにも寄りたい!!

旧海軍も愛した一杯いかがです? 『千福 ギャラリー三宅屋商店』

酒蔵の象徴、大正12年(1923)に建てられ、呉空襲の被害を唯一逃れた約26mの煙突がいまも残る。  
店長の宮田昌和さん。

「千福」の銘柄で知られる、安政3年(1856)創業の蔵元「三宅本店」施設内の直営店。日本酒のほか、純米酒配合の石鹸などグッズの販売、兵役を終えた軍人に贈られた軍盃などの展示も。工場見学は2日前までに予約を。

直営店限定販売の「千福 無濾過(むろか)生原酒たれくち」720ml1298円
千福をはじめ、3種の酒を楽しめる利き酒体験は400円~。

『千福 ギャラリー三宅屋商店』店舗詳細

千福 ギャラリー三宅屋商店
住所:広島県呉市本通7-7-1/営業時間:12:00~16:00/定休日:土・日・祝/アクセス:JR呉線呉駅からバス11分の本通7丁目下車、徒歩3分

いつでも頼もしいまちの文具屋さん『文具のひろば ポプラドー』

呉趣印巡帳は2200円。
右から。2代目の山本博さん、3代目の茂樹さんと妻の幸子さん。「わからんことがあったらいつでも寄りんさい!」。

昭和21年(1946)に山本文具店として創業。「かゆいところに手が届くお店」を掲げ、文具や事務用品の販売はもちろん、各種印刷も手がける。筆記具に好みの文字入れができる名入れも好評。一般文字入れは無料で対応できるものもあり。

万年筆用オリジナルインキの夕呉2950円は、呉市の夕景のマジックアワーをイメージ。各艦艇の色を模して塗り、名入れを施した刻印ボールペン各3850円。有料で完全オーダーもできる。

『文具のひろば ポプラドー』店舗詳細

文具のひろば ポプラドー
住所:広島県呉市本通1-2-11/営業時間:9:15~19:00(土は~18:30、祝は11:00~17:00)/定休日:日/アクセス:JR呉線呉駅から徒歩15分

取材・文=大須賀あい 撮影=中野一行
『旅の手帖』2025年7月号より

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