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TVアニメ『ワンダンス』原作者・珈琲先生、モーションキャプチャを担当する伊折役のYOUTEEさん、壁谷役のYU-KIさん、Shigekixさんにインタビュー|ブレイキン、そしてコミュニケーションとしてのダンスについて語る

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

2025年10月より放送開始となるTVアニメ『ワンダンス』(原作/講談社『月刊アフタヌーン』連載中)は、ストリートダンスをテーマにした青春ストーリー。4月には、主人公・小谷花木(こたに かぼく)役を内山昂輝さん、ヒロイン・湾田光莉(わんだ ひかり)役を羊宮妃那さんが担当することが発表されました。

『ワンダンス』には、吃音症を抱える高校生・小谷花木(カボ)が、ダンスに没頭する同級生・湾田光莉(ワンダ)との出会いをきっかけに、自分の殻を破り、言葉では伝えきれない想いをダンスで表現していく姿が描かれています。

本作をアニメ化するのは、名門スタジオ・マッドハウスとCG演出に定評のあるサイクロングラフィックスのタッグ。そして、ダンスプロデューサーには世界的ダンサー・RIEHATA氏。作中でも重要な存在となるダンスシーンは、RIEHATA氏監修の下、実力派ダンサー達が実際にパフォーマンスした動きをモーションキャプチャーによって、アニメ化。圧倒的なリアリティを追求していることが伝わってきます。

今回はアニメ化を記念して、原作者・珈琲先生とプロブレイキンチームKOSÉ 8ROCKS(コーセーエイトロックス)から『ワンダンス』のモーションキャプチャダンサーを担当するYOUTEEさん(伊折役)、YU-KI(壁谷役)さん、そしてブレイキン日本代表としてオリンピックにも出場されたShigekixさんの4名にインタビューを実施。

作品への想いや表現としてのダンス、そしてアニメ『ワンダンス』の見どころまで、クロストークで語っていただきました。

【写真】『ワンダンス』珈琲×YOUTEE×YU-KI×Shigekixインタビュー

距離を置いた経験が強み

ーーまずは珈琲先生に、『ワンダンス』のアニメ化が決まったときのお気持ちをお伺いさせてください。

珈琲先生(以下、珈琲):「本気ですか?」と思いました(笑)。漫画で描くのもめちゃくちゃ大変な作品なんですよ。それをアニメにするなんて……作画が本当に大変だろうなと。実際に制作工程を説明していただいたんですけど、想像以上でした。衣装の揺れやシワ、観客のリアクションまで、全てをモーションキャプチャーで収録していると聞いて、「ここまで手間をかけてもらえるんだ」って。本当にびっくりしましたし、ありがたいです。

ーー珈琲先生ご自身も、もともとダンスをされていたと伺っています。

珈琲:……ちょっとだけ、ですね。こんなにすごいダンサーの皆さんの前で「ダンサーです」なんて言えないレベルですが(苦笑)。19歳くらいで一度ダンスを辞めたんですよ。あの頃は「もうダンスとは無縁の人生になるだろうな」と思っていました。

ーーそこから、ダンスを題材にした漫画を描こうと思われたきっかけは何だったんでしょうか?

珈琲:漫画家になって、でも漫画もあまり売れていなくて。「せっかくなら人生で一つくらい、自分の“集大成”になる作品を描こう」と思ったんです。自分にはダンスの経験と、学生時代に吃音症だったという背景があって、その二つを持っている人間ってなかなかいないと思ったんです。だったらそれを活かして、物語にしてみようと。

ーーそのダンスの経験が、こうして漫画という形で表現されるとは思っていなかった?

珈琲:本当に、思っていなかったです。というか、自分でも「ダンスを漫画にするなんて無理でしょ」と思っていました。でも、「やるしかない」と自分を奮い立たせて、半ば無理やりやった感じです。

ーーそんな中で、今回、実際に活躍するプロのダンサーの皆さんとインタビューを受けているというのは……?

珈琲:めちゃくちゃ不思議な気持ちです。僕がダンスをあのままやっていたとしても、きっとこのトップダンサーの3人には会えなかったと思うんですよ。

Shigekixさん(以下、Shigekix):いやいや、会場で会っていたかもしれませんよ?

珈琲:いやいやいや……。会場で同じ場所にいたことがあったとしても、直接話すような機会はなかったはずです。

ーーダンスと漫画、それぞれ全く違うアウトプットの形ですが、両方をミックスすることで“表現の楽しさ”を感じられているのでしょうか。

珈琲:楽しさ……そうですね。表現としては、おそらく僕しかやっていないことが多いと感じています。あまりやっていないことに挑戦できるっていうのは、やっぱり楽しいですね。

ーーそれはダンスにも言えることだと思うのですが、どうでしょう?

珈琲:特にB-BOYたち(ブレイクダンサー)にとっては“シグネチャームーブ”(自分だけのオリジナルの動き)をすごく大事にしていますから。誰もやっていないようなことを発見したときって、すごく興奮するものなんですよ。

一同:そうですね。

ーーやっぱりそういう世界なんですね。YOUTEEさん、YU-KIさんは、伊折役、壁谷役として作品に直接携わられています。『ワンダンス』という作品に触れたときの第一印象はいかがでしたか?

YOUTEEさん(以下、YOUTEE):第一印象としては、「ダンス経験者も未経験者も楽しめる漫画」と感じました。間口が広い中で、ダンス経験者が“それめっちゃわかる!“確かにそうだよね”って深く頷くようなマニアックな表現も織り込まれていて。本当にいろいろな方に楽しんでもらえる作品だなと。

珈琲:ちなみに、具体的に何かひとつ教えていただけませんか?(笑)どうしても知りたいです。

一同:(笑)

YOUTEE:個人的にすごく好きなシーンがあって。コンテストのシーン(原作第10話)で伊折が「音のこだわりはダンスに出る」といったことを言うんですよね。

僕はDリーグをやりつつ、コンテストにも出ているのですが、やっぱり音楽って一番こだわる部分なんです。ダンスは音楽がなければ成り立たないので、こだわりを持って作っていきます。そのお話の中で、音源の圧縮形式、たとえばWAVかMP3、MP4か……というところまで掘り下げられていたんです。

WAV形式だと音がクリアなんですが、MP3だと圧縮されて音質が落ちるんです。大きな会場で聴いたときにそれが顕著に出るので、やっぱり僕自身、WAVを選ぶのですが……そういう細かいこだわりが描かれていて、「うわ〜、めっちゃわかる!」と思いました。

珈琲:嬉しいです、ありがとうございます。

ーーお二人とも大きくうなずかれていましたね。

Shigekix:B-BOYの中でもYOUTEEはかなりマニアックな人なので(笑)。今の話を聞いていて、確かに“音”に触れているからこそ見える視点があるなと。ダンスを知らない方が読むのと、彼のような人が読むのとでは、同じ作品でも感じ方が全然違うんだなって。

ーー音楽では漫画では直接表現できない部分だからこそ、その他の描写にすごく気を遣うのかなと感じました。

珈琲:正直、「マニアックな人にしか伝わらないかも」と思いながら描いた部分もあります。でも『ワンダンス』は、ダンスを全く知らない人でも読めるし、同時にダンスをめちゃくちゃ好きな人が読んでも納得してくれるような漫画にしたかったんです。そういうふうに受け取っていただけて、本当にありがたいです。

ーーYU-KIさんにも、『ワンダンス』という作品に触れたときの第一印象をおうかがいさせてください。

YU-KIさん(以下、YU-KI):さっきYOUTEEが言ったことに重なるんですが、僕も「ここめっちゃやばいな!」って思った部分があって。(原作第7話で)「“フィーリング”を出すには環境がすごく大事」って描写があるんですけど、僕自身、福岡でずっと練習していて、すごくいい環境だったんですよ。東京に出てきてからはまた違う環境にいるんですけど、それでもやっぱり「環境が人を育てる」と実感することがあります。作品を読んで「自分に置き換えて考えられるな」と思いました。

珈琲:例えば、オーディエンスのリアクションでしょうか?

YU-KI:それもありますし、成長する上で、環境や人って本当に大事だなって。人ってやっぱり、互いに影響し合って成長していくものですよね。

ーー皆さん、本当に深く作品を読み込んでいらっしゃるのが伝わってきます。

YOUTEE:ダンサーには全員に読んでほしいですね。ティッキングという動きが作中に出てきたときに「そこまで描くんだ!」と驚きました。ポップダンスというひとくくりにされがちなんですけど、その中にも、アニメーション、ブーガルー、さらにヒットという技があって、さらにティッキングがあって……。そういうディテールまでしっかり説明されていたのはすごいし、「ヒットってどうやってやるの?」と思っていた人にも伝わる内容になっている。本当に分かりやすいんですよ。

珈琲:ティッキングを見たことある人には「ああ、あれね」って伝わると思うんですけど、知らない人には動きがイメージできないかもしれないですよね。だからそこは「各々、YouTubeとかで見てみてください」と思いつつ描いてます(笑)。

ーー私自身は素人なのですが、視覚的にも伝わりやすい作品になっていると感じました。

Shigekix:そう思います。さっきの話とも少しかぶりますけど、ダンスを知らない方でも理解できますし、僕らみたいな現場の人が読んでもちゃんと楽しめるのはすごいなと。お話を伺っていて、珈琲先生が一度ダンスから離れて、距離を置いた経験があるというのも、むしろ強みになっているんじゃないかと思ったんです。

珈琲:おお……。

Shigekix:ずっとダンスにどっぷりの人だと、こだわりがどんどん強くなって、どうしても内側からの目線で「そっちには刺さるけど、あっちには刺さらない」みたいなものーー外側の人に響かないようなものを作りがちになってしまう気がするんです。でもこの作品は、そのバランスが絶妙なんですよ。

実際僕自身、たとえば映像やCM、プロモーション映像を作るときに「ダンサーが見ても“おっ”と思うもの」を入れたいと思ってしまうんです。でも、そうなると今度は一般の方が引いてしまう場合もある。そのバランスを取るのが大事だと日々感じています。「どこまで攻めて、どこで引くか」のバランス感覚が必要なんです。そういう意味でも、『ワンダンス』は、いろいろな人に届く絶妙なバランス感覚を持っていると思います。漫画として一般の人にどう伝えるか、ダンサーとしてどう刺さるか。その目線というのは、珈琲先生のバックグラウンドが効いているんじゃないかなと。

珈琲:ありがとうございます。Shigekixさん、お話が本当に上手いですよね。

一同:(笑)。

珈琲:オリンピックのときも思ったんですけど、よくこんなに綺麗に喋れるなって。

Shigekix:いやいや、もともと話すのが得意だった訳ではないんですよ。小さい頃はもの静かなタイプで、最初にYOUTEEやYU-KIに会ったときも、今ほど喋る感じではなかったと思います。でも、ダンスを通じて表現する、アウトプットする術を覚えていくと、自然とコミュニケーションにも慣れていったというか。喋る場面でも少し社交的になった気がします。

ーーやはり「表現する術を覚える」という部分が、言葉の面にもつながっていくんですね。

Shigekix:そうですね。ブレイキンやダンスを通じて、自分の思いや考えを“見せつける”ことに対するこだわりや喜びみたいなものを感じたんですよね。最初は「見せるのが恥ずかしい」「否定されたらどうしよう」という気持ちもありましたが、今では「どう思われようが、表現すること自体が素敵」と実感しています。

珈琲:アートもやられていますよね。

Shigekix:そうですね。僕はアートもやっているんですが、そういうところにも影響が出ていると思います。

ーーやってみることで感じる喜びが大事なんですね。

Shigekix:本当にそう思います。どうですか?

YOUTEE:その通りですね(笑)。僕たちはD.LEAGUEという舞台で活動していますが、やっぱりダンスひとつで人を笑顔にできるというのは……自分の場合は、ダンス以外ではできないというか。他のどんな手段でも感じられない魅力だと思っていますし、自分の好きなダンスで、誰かの生活を少しでも豊かにできたら、本当に素晴らしいことだと思います。

悔しいことが「好き」である事実を突きつける

ーーさきほどShigekixさんが、珈琲先生がダンスから離れた時期があったことが良かったんじゃないか、というお話をされていました。珈琲先生の実感としてはいかがですか。

珈琲:まさにそうですね。ダンスを一度辞めて俯瞰で見られたからこそ、当時19歳のときに先生から言われていたことが、10年経ってようやく理解できたということもありました。例えば「自分、全然音を聴けてなかったんだな」とか。改めて自分の昔のダンスを見て、「ああ、これは言われるわ……」って。でもその気づきがあったからこそ、「ダンスを知らない人を引き込むにはどうすればいいんだろう?」と考えられるようになったんです。一度離れるというのは、人生の選択肢としてアリだなと。ただ、これは自分の場合だけで、皆さんはダンスを辞めていた時期ってあるんですか。

一同:ないですね。

珈琲:やっぱりトップを目指す人って、基本的には辞めないんですね。

Shigekix:僕たちは始めたのが早かったので、多分3人とも「ダンス辞めて何しよう?」みたいな(笑)。そういう状態になると思います。

ーーすごく素朴でナンセンスな質問ではありますが、「辞めたいな」と思ったことってありますか?

YOUTEE:僕は中学生のときに少しだけ思ったことがあります。部活や友達と遊ぶ姿を見て、なんとなく「自分も遊びたい」って一瞬思いましたけど……。でも振り返れば、辞めなかったのはよかったです。

珈琲:そのときはどうやって続ける決心をしたんですか?

YOUTEE:自制心と、自分の中の責任感ですね。周りに「続けろ」と言われた訳ではなかったので、自分で決めたことをやり抜こうと。

珈琲:それ、すごくいいですね。

YU-KI:僕は、辞めたいと思ったことはないです。

Shigekix:僕も正直、ないですね。ただ、魂を込めて準備してバトルに挑んだのに結果が出なかったとき、「うわ、やってらんない」って気持ちにはなるんですよ。「ええ?」みたいな(苦笑)。でも、その瞬間「どれだけ自分がダンスを好きか」に気づくんですよね。真剣であればあるほど、めっちゃ悔しい。子どもの時は、悔しすぎて、このまま嫌になったらどうしようって思っていたんですけど、それって好きな証拠なんです。なんならその帰り道には練習場所に向かっていたりして(笑)。本当にそういう時期があっても、完全に「辞めたい」と思ったことはないですね。

自分らしく表現して欲しい

ーーところで、YOUTEEさん、YU-KIさんモーションキャプチャーに参加された際、珈琲先生から何かリクエストなどはあったのでしょうか?

珈琲:いや、全くなかったです。僕が内心で思っていたのは、とにかく現場で“自分のダンスを出してほしい”ということでした。「キャラクターはこういう動きするだろうな」とかは考えずに、ちょっとアクシデント的な、即興的なものをどんどん出してほしいと。

YU-KI:実際、「自由に踊ってください」と言われました。本当に自由に踊らせてもらいましたね。

珈琲:ありがたいです。例えば、帽子が落ちたりして、それをうまく拾って次の動きにつなげたり……ってあるじゃないですか。機材が壊れても、それすら使って遊ぶくらいでいいと思っていて。やっぱり、アニメでバトルを描くにあたって、決まりきった振付ばかりしていたらバトルっぽくない。だから即興性を多く取り入れてほしかったんです。

YOUTEE:僕たちのダンスを知っている人からしたら、一瞬で「これYOUTEEだ!」って分かると思います。結構本気でバトルしました。なんかこう……“伊折が僕”みたいに感じているんです。伊折もブレイキンから始めてハウスダンスをしているんですけど、僕自身もブレイキンから始めて、いろいろなジャンルをやって、今はブレイキンとハウスを同時進行しています。最初は少しプレッシャーもありましたけど、伊折が自分に近い役ということもあって、好きに踊らせていただきました。

ーー作品だけでなく、キャラクターにも共感する部分があったんですね。

YOUTEE:ありますね。キャラクターごとに抱えているものが違っていて、バトルが得意な人もいれば、コンテストが得意な人もいる。それぞれの得意・不得意があるからこそ、感情移入しやすいし、それがリアルに描かれていると思います。

珈琲:伊折くんは“バトルメイン”の人で、ショーとかはあまり好きじゃないっていう設定なんですよね。そこにも共感したということでしょうか?

YOUTEE:そうです。

珈琲:そんなこと言って大丈夫ですか?(笑)

YOUTEE:大丈夫です(笑)。ダンスって、文化的にはもともとバトルから始まっているんです。もちろん今はショーも好きですけど、スタートがバトルだったので、やっぱりそのルーツには思い入れがあります。

ーーYU-KIさんは壁谷役として演じるうえで、プレッシャーのようなものはありましたか?

YU-KI:いや、そこはあまり考えてなかったです。意識したことと言えば、原作を読んだときに「壁谷って結構尖っているな」という印象があったので、バトルシーンでもその尖り、オラオラを考えつつ動きました。ムーブはもう、自分のままって感じです。

珈琲:ちなみに壁谷くんのムーブって、B-BOYから見てどうですか?

YU-KI:アニメならではだと思うところもありつつ、逆に「これやってみたい!」と思わせるようなムーブやつなぎがあるんですよね。絵として見てもすごいと思いました。

YOUTEE:YU-KIは全部できますよ。片手で回ってピタッと止まるみたいなムーブも。

Shigekix:2人のスタイルが全然違うというのも、良いポイントじゃないでしょうか。映像を見れば、本当に一目で「誰が誰か」分かるんじゃないかなと。良いダンサーほど、モーションキャプチャーやシルエットになったとしても、「あ、この動き方はあの人だな」って分かるんですよ。そのくらい身体の仕草に個性が宿っている。だから、今回の2人の参加はすごく楽しみです。間違いないと思います。

珈琲先生から3人に質問タイム「2on2を組むなら…」

ーー折角の機会なので、皆さん同士で聞いてみたいことがあればぜひ。

珈琲:質問というより、伝えたいことなんですけど……Shigekixさんを高校生のときにテレビで見て、めちゃくちゃ感動したんですよ。たしか、高校に芸人のダイアンさんが来たことがありましたよね?

Shigekix:ありました。かなり前のことですが(笑)。

珈琲:たまたま見ていたんですけど、ダイアンの津田(篤宏)さんが鈴木雅之さんの歌を歌っていて、そのバックでShigekixさんがブレイキンをしていたんです。

津田さんが歌っている間はずっとトップロックしていて、曲がブレイクに入った瞬間にフロアに入って。完全にブレイキンの起源を体現しているじゃないですか。誰にも伝わらない可能性だってあるのに、「ここまでやるのはすごい」と思いました。

Shigekix:いや、そこに注目していただけたことがすごいです(笑)。

珈琲:無意識かもしれませんけど……そうですよね?

Shigekix:そうです。大前提として、本当にブレイキンを好きな人たちに「その感じでブレイキンが世の中に伝わっちゃうんだ」と思われるのは避けたいと思っていて。特に、オリンピックが近づくにつれて、いろいろな場所でブレイキンをやる機会が増えたんです。それはすごくありがたいことですけど、だからこそリアルにこだわりたかった。

例えば、J-POPを踊るとしても、そのままではなく、リミックスしてブレイクビーツを入れてもらうとか、ブレイク部分で踊るとか。1年前、郷ひろみさんと「紅白歌合戦」で共演したときも、そういう“特別バージョン”で対応していただきました。あくまで「これはブレイキンだ」と思える内容にしたかったんです。格好良いと思えるものであれば、新しい試みとして受け取っていただけるというか。いろいろなカルチャーを取り入れていくのが、ブレイキンやヒップホップカルチャーの良さだと思うので。

バスケのユニフォームを着るとか、バッシュを履くとか。カルチャーを取り入れること自体はむしろポジティブ。でも、“取り入れ方がイケてるかどうか”って、めちゃくちゃ重要視するところなんですよ。そこを間違えると、リアルじゃなくなってしまう。それは当時からずっと意識していました。

珈琲:すごい。高校生の段階でそこまで考えているというのは……。

ーーそれをテレビ越しに偶然見ていたというのも、すごいご縁ですね。

珈琲:そうなんです。ダイアンさんが好きなんですよ(笑)。それでたまたま観ていて。

Shigekix:一番うれしいです(笑)。無作為なタイミングで出会えるって、何よりありがたいことだと思います。

珈琲:もうひとつ、3人全員に聞いてみたいんですけど『ワンダンス』のキャラの中で2on2を組むなら、誰と組みたいですか?

YU-KI:みんな上手すぎて、迷いますね……。

珈琲:YU-KIさんは、パワー系が得意ですよね?

YU-KI:そうですね。だから自分とスタイルが違う人でもいいなって思っていて。たとえば湾田さん。壁谷役として選ぶのであれば、(壁谷と)同じ要素を持っていたり、噛み合うところもあれば合わないところもあったり……。そういう関係性も面白いと思います。

YOUTEE:僕は恩ちゃんです。ダンスの感じ方、音楽に対するアプローチとか、すごく共感できる部分があって。伊折役として、一緒にポップをやってみたいと思います。

Shigekix:僕は伊折としてのYOUTEEと組んでみたいですね。質問から逸れてしまって申し訳ないんですけど、YOUTEEとは同世代で、小さい頃からよく一緒になる機会があったんです。でも活動の仕方がさまざまで、今やっと「KOSÉ 8ROCKS(コーセーエイトロックス)」として一緒に活動できています。メンバーのISSEIもそうなんですけど、面白い形で交わっているので、2on2で出てみたいって思います。

珈琲:それはもう、今すぐ見たいですね。

Shigekix:じゃあ次はモーションキャプチャーの中で……(笑)。

珈琲:最高です(笑)。もうひとつ、漫画で「B-BOYがすげえ!」となるような要素、何か取り入れたら面白いネタってありますか?

技じゃなくてもいいんですが、「これってB-BOYならではだよね」みたいなやつがあれば教えてほしいんです。たとえばフットワークのときって、みんな手を地面につけるじゃないですか。あれを素人がやると、めっちゃ痛いんですよ(笑)。でもそういうことって、読者は意外と知らないように思っていて。あるいは、自分だけのシグネチャーでもいいし、マニアックな“つなぎ方”があったらぜひ教えてください。

YOUTEE:既に“あるある”はふんだんに入っていると思います。

YU-KI:ですね。

Shigekix:そうですね……例えば「壁で踊る」とか?

僕たちは小学生のとき、学校の壁とかを使ってつないだりしていました。それと、温泉やプールに入ったときに浮きながら動きを試すとか(笑)。シミュレーション的なことが結構好きで、そこからヒントを得てクリエイトしていますね。 

珈琲:へええ……! 無重力状態だからこそできる技を、ってことですよね。それを実際に試したらできることもあるんですか?

Shigekix:大体できないです(笑)。理想が先行しているので。ただ、そこにもヒントがあるかもなと。実際にやりながら、「あ、これいけるかも」と試していくような方法と、想像してからやってみる方法が半々くらいなんです。常に想像はしているので、「できなかったから、もう少しこうしてみよう」みたいな感じで、“想像→試す、想像→試す”がルーティンになっています。ブレイキンは「やってみよう」でやると、怪我することもあるので、ちゃんと想像してから段階を踏んで試します。彼(YU-KI)なんかは特に、命がけなこともあるので。

珈琲:じゃあ、頭に思い浮かんでも、いきなり本番ではやらないですか。

YU-KI:やらないです。足の甲で着地するアクロバットがあるんですけど、それをやりすぎたせいか、整体で「足の甲の靭帯が薄いですね」と言われたことがあります(苦笑)。(Shigekixに)怪我したことある?

Shigekix:僕は比較的少ない方でしたけど、ちょうど1年前くらいに練習で“ワープ”っていう動きをやっていた時に肩を脱臼したことはありましたね。スタイルに依ると思います。

ーー最後に『ワンダンス』の放送を楽しみにしている皆さんに向けて、お一人ずつメッセージをください。

YOUTEE:ダンスにはすごく大きな力があると思っています。作中でも描かれている「ダンス=コミュニケーション」という部分は、僕も実感していて。僕は英語が全く話せなかったんですけど、海外に行ったとき、ダンスだけで現地の人たちと繋がれて、コミュニティもどんどん広がっていきました。自己表現が苦手な人にもダンスは本当におすすめなので、作品を通して、そんなダンスの魅力にぜひ没頭してくれたら嬉しいです。

Shigekix:実際に踊っているシーンはもちろん注目していただきたい部分ですけど、踊っている瞬間だけがダンスじゃないんですよね。ブレイキンやダンスのコミュニティって、カルチャーそのものなんです。テクニックだけじゃなくて、そこから生まれる出会いや学び、コミュニケーションで、そういう全てを含めてのカルチャー。僕は普段からそういうことをよく言っているんですけど、『ワンダンス』のように、物語や登場人物がいて、それぞれが成長していく姿を通じて、観る人にも自然とそういったメッセージが届くんじゃないかなって。アニメ化によって、動きそのものの魅力もより感じていただけると思います。

YU-KI:僕はすごく人見知りで、もともと無口なタイプなんですけど、ダンスがあったからこそ、人とコミュニケーションを取れるようになったんです。だからこそ、『ワンダンス』を読んでいて自分を見ているような気持ちになりました。いろいろな登場人物がいるので、自分を重ねながら観られる作品になっていると思います。これをきっかけにダンスを始めてくれる人が一人でも増えたら嬉しいです。ぜひ観てください。

ーー珈琲先生、最後にいかがでしょう?

珈琲:いや、もう全部言っていただきました(笑)。みなさんもこう言ってくれているので、ぜひご覧ください。

一同:(笑)

[インタビュー/逆井マリ 撮影/胃の上心臓]

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