不登校リスクをAIが予測?
いま、全国的に不登校児児童が増えていて、しかもここ10年ずっと増加傾向、昨年の時点でその数なんと29万人。この先、不登校児を増やさないため、ある取り組みが埼玉県戸田市で行われていました。詳しく、戸田市教育委員会 秋葉 健太さんに伺いました。
不登校児をAIで予測
戸田市教育委員会 秋葉 健太さん
全国的にもそうなんですけれども本市の方でも不登校の増加が課題となっておりました。また不登校の子供たちのSOS、これをキャッチすることについてこれまでだと教師だとか、保護者などの子供を取り巻く大人の気付きだけに頼っていたところです。学校に行けなくなってしまう前に、子供たちからのSOSがデータなどに表れているのではないかなというふうに考えたところです。子供たちの不登校等の予兆検知するために、本市で過去不登校になったケース、これをAIを使って分析することで、分析結果を踏まえた予測モデルを構築した。例えば、直近で1ヶ月以内とか2ヶ月以内の間に欠席の割合が増えてきてるとかそういった情報を捉えながら、リスクスコアってのが算出されるというもので、継続して予測を行っていくことで、モニタリングするような指標として見ていくってことができるんじゃないかなというふうに思うので、取り組みを続けていく価値はあるんじゃないかなと考えております。
●不登校児の低年齢化も最近の特徴と言う事で、早期にリスクを予測して対応するべきだと始まった取り組み。
●過去不登校になってしまった児童の傾向と照らし合わせて、生徒たちの直近の出欠率、例えば最近いきなり休みが数日続いてるなど、また学力のデータ、学校内で行ったアンケートの回答など多角的な視野からAIが分析して、生徒たちの「リスク」スコアを出して、事前に防ぎましょうというもの。
●市内全小学校12校、中学校6校、合わせて18校で実施。生徒の人数としては1万2000人弱、一人一人のスコアを出し、それを基に学校側に対応を促したと言う事ですが・・・
●実際この「リスクスコア」などを活用してどうだったのか、市内の小学校の校長先生にお話しを伺いました。
市内の小学校の校長先生
今どの学校でもそうなんですけども、教職員の方の年齢構成がバラバラで最近は特に経験の浅い若い教員が多くなっている状況です。担任は何とか自分の学級のことは自分でやろうとする傾向が強く、どうしても不登校のこともそうですけども他の問題も1人で抱え込んでしまうような傾向があります。そうした意味でも、担任から情報が上がってくるのを待つだけでなく、管理職側からアプローチしていけるっていうところが、このデータベース不登校リスクスコアを活用するっていうところの大きなメリットであると考えています。月1回の校内委員会において、リスクスコアの高い子たちの状況を継続的に確認を行っていて、早めに担任から保護者に電話や面談で連絡を入れるように促しているようなところがあります。
●このモデル自体が令和4年の準備期間を経て令和5年度に構築したもので、まだ目に見えて不登校児が大幅に減少した、など結果に繋がっているわけではないとのこと。
●ただ、リスクスコアが高いお子さんなどは、サポートルームと言う場所で保護者と面談しながら一緒に過ごしたりするなど、保護者の理解を得ながら居場所作りなどに務めているそう。
●また、多様性の時代に、フリースクールやホームスクーリングなど、学習スタイルの多様化もあり、低年齢のお子さんでも学校に行かない選択肢を取りやすくなっている可能性もあると校長先生。
●今後、この取り組みがどのくらい効果をあげるか注目したいところですが、ただ、早くも窮地に立たされているとのこと。再び戸田市の教育委員会 秋葉さんのお話しです。
こういった予測モデルを使っていくためには、ランニングコストももちろんかかりますし、精度向上を目指していくのであれば継続的に開発コスト、これが一定の金額で必要に なってきます。通常業務に加えてのプラスオンということで職員への業務負荷というところもあるかなというところでございますのでなかなか支援がですね、特に財政的な支援がないとなかなか継続していくことが難しい取り組みだなというふうには感じているところです。今後に向けて、例えばこういう条件に当てはまったら注意が必要だよねというような傾向、こういったものがないかっていうのはですね、過去のデータをもとに我々の方で分析を進めまして、代替するような予測モデルとして構築できないかってのをこれからちょっと検討していきたいというところが一つです。併せてAIを活用するっていうことを完全に諦めたわけではありませんので今は取り組みをすすめているところです。
令和4年度、令和5年度とそれぞれデジタル庁とこども家庭庁の実証事業での採択を受け、国の財政的な支援を受けながら進めてきたものが、今年度から受けられておらず、予算を確保できていない。職員さん達で過去の傾向をデータ化して、何らかの形で対策を取りたいとしつつも、人間だけでは気付かない特徴や傾向を捉えられるAI活用は諦めずに方法を模索していきたいとのことでした。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材:竹内紫麻)