冬の主役たち 弓道男子 切磋琢磨するライバルの挑戦(宇佐) 【大分県】
全国高校弓道選抜大会に、団体と個人の2種目で出場する池辺航至(2年)と鳴海和真(同)。ともに高校入学を機に弓道を始め、互いを「ライバル」と意識しながら成長してきた二人は、今やチームの中心選手となっている。
池辺は1年生の頃からレギュラーとして試合に出場するほどの実力を持つ。その裏には、地道な努力がある。毎日黙々と的に向かい、集中力を切らさず練習を重ねる姿は、他の部員にとっても刺激的だ。「あいつがあそこまでやるなら、俺も負けられない」と、奮い立たせられているのが鳴海だ。池辺に対抗意識を燃やす鳴海は、「あいつより多く矢を射る」と自分自身に言い聞かせ、黙々と弓を引き続ける。二人の競い合う姿は、弓道場に静かな熱気を生み出している。
池辺の弓道は、冷静沈着そのものだ。感情を表に出すことはほとんどなく、気持ちの浮き沈みも少ない。市口博義監督は「学校生活でも落ち着きがあり、弓道への向き合い方も真摯(しんし)。向上心が高く、信頼できる選手だ」と絶賛する。6月の県高校総体では2年生ながら個人優勝を果たし、全国高校総体でも決勝に進出した。その実績を胸に、池辺は「個人、団体で日本一になる」と大舞台での高い目標を掲げる。
ライバルとして切磋(せっさ)琢磨する鳴海和真(写真左)、池辺航至
一方、鳴海は中学まで野球部に所属し、捕手を務めていた。キャッチャーの経験で鍛えられた体幹は、射形の安定感につながっている。「体幹には自信があるので、崩れにくい射ができる」。鳴海は自分の強みをしっかりと理解している。そして、池辺の動きを観察し、良いと感じた点は自分の射に取り入れるという研究熱心さも持ち合わせる。調子が悪い時も冷静に修正し、次の一射に臨む姿は、鳴海の精神的なタフさを物語っている。
そんな二人のライバル関係は、チーム全体にも良い影響を与えている。互いに競い合いながら高め合う姿に刺激を受け、他の部員たちも日々の練習に真剣に取り組むようになった。池辺は「ライバルだからこそ負けられない」とトップランナーのプライドを見せ、鳴海も「追いつき、追い越したい。その結果が個人でも団体でも形になればいい」と力強く語る。
全国選抜では、二人はライバルであり、同時にチームメートでもある。それぞれが最高の射を追求しながら、目指すは「日本一」。互いに高め合い、積み上げてきた努力のすべてをぶつける舞台が、もうすぐ始まる。
互いに実力を認め合う友達でもある
(柚野真也)