「金の使い方を忘れた男」「主演俳優が心臓発作」「別事業で大成功」反逆の巨匠が贈る“超・実験的”大作が日本上陸
フランシス・フォード・コッポラ最新作『メガロポリス』ついに公開
『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』など数々の傑作を生みだしてきた映画界の超・巨匠フランシス・フォード・コッポラは、同時に業界の反逆者であり続けている。そんなコッポラ監督が数多くの困難を乗り越えながら、壮大なスケールで創り上げた14年ぶりの最新作『メガロポリス』が全国公開中だ。
本作は1980年代より温めてきた夢の企画であり、自身の私財1億2000万ドル(約186億円)を投じ40年もの長い年月を経て完成させたという、まさに積年の夢の実現と言えるだろう。
感嘆? ドン引き? コッポラ波乱万丈伝
“サイテー映画”の巨匠ロジャー・コーマンのもと低予算のエロティック映画やホラー映画からキャリアをスタートさせたコッポラ監督は、かつての盟友であったジョージ・ルーカスとの静かな確執、大手映画会社との派手なバトルなど、武勇伝(?)に事欠かない破天荒さでも有名だ。
まさに地獄のようだったという『地獄の黙示録』撮影中に、主演のマーティン・シーンが心臓発作を起こしたことは有名だ。『ゴッドファーザー』でマーロン・ブランド演じるドン・コルレオーネが猫を撫でる有名なシーンは、スタジオ内をうろついていた野良猫をコッポラが即興でブランドに渡したことで生まれたという。
@peacock
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黒澤明監督との交流も知られるコッポラ監督だが、共有不可能な難解かつ巨大なビジョンと身銭を切りまくる強行突破スタイルなどから“映画界のナポレオン”と揶揄されたり、撮影中にクルーが大量離脱したことも。また、コーマン師匠からの依頼でソ連のSF映画を英語版に再編集した際には、ロシア語が分からないまま映像だけで構成を変えたというからスゴい。
そんなコッポラ監督だけに映画制作で巨額の負債を抱えることになるも、自身のワイナリー事業で得た収益を映画資金に充てることで映画事業を立て直したりと、名作を数多く生み出した巨匠なのに、その制作スタイルは常に綱渡り。ふたたび巨額の私費を投じ、撮影現場を混乱に陥れたという噂も囁かれた『メガロポリス』が“問題作”でないわけがないのだ。
『メガロポリス』はどんな映画?
21世紀、アメリカをローマ帝国に見立てたニューローマ。そこでは享楽にふける富裕層と苦しい生活を強いられる貧困層の激しい格差が、社会問題化していた。
新都市メガロポリスの開発を推進する天才建築家カエサル・カティリーナ(アダム・ドライバー)と、財政難の中で利権に固執する市長のフランクリン・キケロ (ジャンカルロ・エスポジート)は真正面から対立する。
また一族の策謀にも巻き込まれ、カエサルは絶体絶命の危機に直面するが――。
アダム・ドライバーほか豪華キャスト集結!
主人公・カエサル・カティリーナを演じるのは、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』でカイロ・レンを演じ注目を浴び、『マリッジ・ストーリー』ではアカデミー主演男優賞にノミネートされるなど高い演技力が評価されているアダム・ドライバー。
そのカエサルと対立する新市長フランクリン・キケロには、『ドゥ・ザ・ライト・シング』『マルコムX』などスパイク・リー作品に多数出演し、最近では『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』でヴィランのサイドワインダーを演じたジャンカルロ・エスポジート。そしてキケロの娘・ジュリアを『ゲーム・オブ・スローンズ』シリーズや『ワイルド・スピード』シリーズなどに出演するナタリー・エマニュエルが演じる。
そのほか、オーブリー・プラザ、シャイア・ラブーフ、ジョン・ ヴォイト、ローレンス・フィッシュバーン、タリア・シャイア、ジェイソン・シュワルツマンなど、実力派俳優たちが集結した。
日本の観客に向けて送られたコッポラ監督のメッセージも「観に来てネ」的な常套句ではなく、じつにコッポラみあふれるもの。巨匠の集大成かつ最新ビジョンを確認する意味でも、ぜひ『メガロポリス』を劇場で体験しよう。