【倉敷市】茶寮 ちゃテラス ~ 岡山の茶農園と飲む人々の未来を照らす日本茶専門店
岡山県の特産品といえば、フルーツや野菜、瀬戸内海で獲れる魚介類などが思い浮かびますが、実は日本茶の産地でもあります。
しかし、ペットボトルで気軽にお茶を楽しめる今の時代、地元のお茶を味わう機会はめったにないかもしれません。
倉敷市東町にある「茶寮 ちゃテラス」は、岡山県内の日本茶を豊富に取りそろえている日本茶専門店です。日常で飲む機会の少ない数々の日本茶をゆっくりと味わえます。
和スイーツや食事のメニューもあるので、小腹が空いたときにも気軽に利用できるお店です。
ほっとひと息つきたいときにおすすめしたい「茶寮 ちゃテラス」を紹介します。
茶寮 ちゃテラスについて
茶寮 ちゃテラス(以下、「ちゃテラス」と記載)は、倉敷美観地区からすぐそばの東町にある日本茶専門店です。白い暖簾(のれん)と、木の玄関引き戸の入り口が目印です。
ちゃテラスの営業日は土曜日と日曜日。なぜ土日営業なのかを店員さんに尋ねたところ、平日は株式会社きびコンサルタントの事務所として使われているため、事務所がお休みの土日だけオープンしているそうです。
料金は先払いとなるため、1階で注文とお会計してから2階に上がりましょう。
メニューを見てみると、飲み物はもちろんのこと、ほぼすべての料理・スイーツに茶葉が使われていました。
ワイングラスで飲み比べできる「利き茶セット」や、好みの茶葉で香りづけをする「お茶屋のお茶漬け」など、日本茶専門店ならではのメニューに目を惹かれます。
次ページには、岡山県の日本茶と冷たいスイーツが紹介されていました。かき氷は夏季限定のようです。
日本茶の品種は、「ふうしゅん」や「ぜっとわん」など見聞きしたことのないものばかりで驚きます。
普段めったに飲む機会のないレアなお茶に感じられますが、値段は440円(税込)とお手頃な価格。何度か通って、いろいろな日本茶を飲んでみたくなります。
ほっと落ち着く、畳の空間
飲食スペースとなる2階は、陽の光が差し込む明るい和室です。
4つの卓とカウンターが3席あり、ひとりでも利用しやすい雰囲気でした。畳敷きの落ち着く空間で、存分にくつろげそうです。
筆者が行ったときは座る席を自由に選べたので、カウンター席に座りました。
日本茶を堪能できるバラエティ豊かなメニュー
メニューの一部を紹介します。
こだわりの日本茶ドリンク
お茶の味をストレートに感じられるドリンク類は、ちゃテラスに来たらぜひ味わっておきたいメニューです。13種類の茶葉から選べる日本茶と、香り豊かなラテドリンクが楽しめます。
「美作ほうじ番茶」は、しっかりとした香ばしさがありつつも渋みはなく、飲みやすい味わい。筆者は個人的に、暑い夏にキリっと冷やして飲みたくなるお茶だと思いました。
名前に惹かれて注文したのは「ぜっとわん」。岡山県美作市で作られた、明るい緑色が美しいお茶です。独特な風味はありますが、後味は爽やかで、クセになりそうな旨みを感じます。
香り高い抹茶と濃厚なミルクとの組み合わせた「抹茶ラテ」は、デザート代わりに飲みたくなるコクがあります。非常に満足感のある一杯です。
基本的にドリンクはアイスとホットを選べます。アイスを注文すると透明なカップで提供してもらえるので、お茶の色も楽しみたいときはアイスもおすすめです。
茶葉を使った和スイーツ
日本茶に合わせたくなる和のスイーツを紹介します。
「宇治抹茶ブラウニー」は、しっとりとなめらかで、濃厚な抹茶の旨みを感じられました。ずっしりとしているようで、軽いくちどけなのもうれしいポイント。
「ほうじ茶ティラミス」は、とろけるようなフワフワの食感がたまりません。甘すぎず、ほうじ茶の香ばしさを最後のひとくちまで楽しめます。
味の想像がつかずに注文した「抹茶マンゴーパフェ」。抹茶のアイスと、果実がゴロゴロ入ったマンゴーのソースが混ざっています。
ひとくち食べてみると、香りの強い抹茶と甘みの強いマンゴーが絶妙にマッチしていて、初めて味わうおいしさでした。抹茶のほろ苦さが良いアクセントになっています。
スイーツには日本茶がセットで付いてくるので、どの日本茶を合わせようか考えるのもワクワクします。
好みの茶葉で香りづけする「お茶屋のお茶漬け」
ちゃテラスでは茶葉を生かした食事も提供しています。
日本茶の香りを堪能できる「お茶屋のお茶漬け」は、鮭と梅しらすの2種類があり、さらに出汁に香りづけをする茶葉も13種類のなかから選べます。茶葉によってまったく違う味を楽しめる、日本茶専門店ならではのお茶漬けです。
出汁が入った急須に茶葉を入れ、数分待ってからごはんに注ぐと、食欲をそそる豊かな香りが広がります。
お茶漬けといえば身近な食べ物ですが、香ばしいお茶の香りが漂うお茶漬けは、ワンランク上の味わい。出汁はたっぷり用意されているので、気兼ねなく注いで食べるのがおすすめです。
お茶漬けの優しい味に、食べ終わった後はお腹も心もほっこりと温まっていました。
ほかにも、ごはんのお供が5種類もついた「握り飯と選べるお茶セット」もおすすめだそうです。
軽いランチやおやつタイムなど、さまざまな場面で足を運びたくなるちゃテラス。なぜ日本茶の専門店としてオープンしたのでしょうか。
店長の石井衣美(いしい えみ)さんに話を聞きました。
店長・石井衣美さんにインタビュー
──ちゃテラスをオープンした経緯について教えてください
石井(敬称略)──
ちゃテラスの建物は、私が勤めている株式会社きびコンサルタントの事務所でもあります。2014年に東町の雰囲気の良さや、立ち寄りたくなる立地の良さに惹かれて事務所を今の場所に移転しました。
本業では不動産鑑定業を中心におこなっており、特定のお客様との出会いはあれど、地域の人たちとの接点はあまりありませんでした。
また不動産業界で働く身としても、場所を活用するために何かやったほうが良いのでは?と思ったんです。
事務所の営業日は基本平日。せっかくなら、土曜日と日曜日にこの場所を生かして地域とのつながりを作りたいと思い、2022年に日本茶専門店の茶寮 ちゃテラスを立ち上げました。
──オープンするにあたり、いろいろな選択肢があったと思いますが、日本茶専門店にしたきっかけはなんですか?
石井──
本業の仕事柄、お客様にお茶を出す機会が多く、10年ほど前に岡山のお茶屋さんが卸してくれた日本茶のおいしさが忘れられませんでした。
その日本茶はお茶屋さんのオリジナルブレンドだったと思います。甘み・渋み・旨みがちょうど良くて、ペットボトルで飲むお茶の味とはまったく違いました。茶葉の種類の多さにも驚いた記憶があります。
コーヒーが好きな人は、コーヒー豆の種類や産地にもこだわりがあると思うんですけど、茶葉の種類や産地にまでこだわる人は少ないと思うんです。「日本茶にはこれだけ豊富な種類があるのにもったいなぁ」と感じましたね。
食べ物や気分に合わせて日本茶を選べるようになれたら、お茶の世界がもっと面白くなるんじゃないかと思い、日本茶を扱うお店に決めたんです。
──お店のコンセプトや、大事にしていることはなんですか?
石井──
「ちゃテラス」という名前には、「お茶の未来を明るく照らしていきたい」という想いと、「ゆとりをもたらすようにお茶を飲む人の心を照らしたい」という想いを込めています。
私たちは、茶農園とお客様をつなぐパイプです。
茶農園は、高齢化によって数が少しずつ減ってきています。長い歴史を持つ日本茶の文化を途絶えさせず、今後も続いていけるように、私たちがお客様に日本茶の魅力を届けていきたいと考えています。
茶農園で働かれているかたがたと、お茶を飲まれるかたがたの、両方を明るく照らせるような存在でありたいです。
──石井さんが考える日本茶の魅力について教えてください
石井──
日本茶は種類が豊富なので、その日の気分や食べるものに合わせて「今日は何にしようかな」と選べる楽しさがあると思います。カフェインが少ない品種はお子さまでも飲みやすいので、幅広い年代の人々に飲んでいただける魅力もありますね。
夏はちょっとすっきりした味わいのものを選ぶとか、季節によっても変えるのも面白いと思います。
私たちの生活のなかで、日本茶は非常に身近にあるもの。シーンを問わず、どのようなかたでも飲みやすいところが日本茶の良さだと思います。
──おすすめのメニューはありますか?
石井──
ちゃテラスでは自分でお茶を作る体験メニューもご用意しています。お茶づくりのプランは三つあり、特におすすめなのは「石臼で抹茶を挽く体験」です。
石臼で抹茶を挽くのは想像以上に力仕事で、意外と時間がかかります。でも頑張って自分で挽いた抹茶は、より特別においしく召し上がっていただけるようです。
茶道のようにレベルが高いものではなく、もっと身近にお茶を楽しんでいただくために企画しました。五感でお茶を堪能していただき、お茶に興味を持っていただくきっかけになれたら良いなと思います。
フードメニューでいうと、通年人気なのは抹茶のアフォガード。寒い季節だとほうじ茶ショコララテも人気です。ほうじ茶の香ばしさとチョコレートの甘さが合うんですよね。
──今後の目標はありますか?
石井──
岡山県内の日本茶をさらに取りそろえたいと思っています。現在ご用意している日本茶は13種類ですが、できれば50種類くらいを目標に仕入れていきたいです。
岡山県はさまざまな地域でお茶を作っているので、実際に足を運んで味見して、皆さまにおいしい日本茶をお届けしたいと思っています。
いつか「岡山の日本茶が飲みたかったらここ!」というお店になれたらうれしいですね。日本茶の良さをより多くの人に届けられますし、それがゆくゆくは茶農家さんの存続にもつながっていけたら良いなと思います。
──最後に、読者へメッセージをお願いします
石井──
数々の日本茶を楽しんでいただくことはもちろん、おばあちゃんのお家のように、のんびりほっこりできるお茶屋さんを目指しています。
ちょっと時間が空いたときには気軽にお越しいただいて、落ち着く空間で穏やかな時間を過ごしていただけたらうれしいです。
ぜひのんびりしに来てくださいね。
おわりに
筆者は初めてちゃテラスを訪れたとき、メニューを見て日本茶の種類の多さに驚きました。今まで飲んだことのない茶葉の名前がずらりと並んでいて、「これはどのような味がするんだろう」とワクワクしたのを覚えています。
何度か通って日本茶を飲み比べてみると、それぞれの茶葉の個性がよく分かりました。気分や食べ物に合わせてお茶を選ぶ新しい楽しみができたと思います。
ちゃテラスは、観光客で賑わう美観地区から少し逸れたところにあるので、落ち着いてゆったりとお茶を楽しめるところも魅力です。日本茶の新たな魅力を発見しに、ぜひ足を運んでみてください。
また、ちゃテラスは店舗以外にもオンラインショップがあります。気になる人はチェックしてみてください。