船森公園トイレ改修 多摩地区初 設計コンペ 若手建築士を育成
八王子市は4月15日、老朽化した船森公園(明神町)のトイレを景観・機能・維持管理などの面で総合的にデザインされた質の高いトイレに刷新するため、多摩地区で初となる設計コンペを実施すると発表した。寄せられた多様なアイデアの中から最も優れた案を採用できるほか、若手建築士の育成、コンペに注目が集まることによる整備後の共創・協働の取り組み、中心市街地の活性化などを期待している。
変わる公共トイレ
公共トイレを巡っては、従来の「暗い」「汚い」「臭い」といったイメージを刷新し、障害などの有無に関わらず誰でも快適に利用できるトイレを整備する動きが広まりつつある。近年では、日本財団が中心となり渋谷区内17カ所に著名な建築家やデザイナーがデザインしたトイレを設置するプロジェクト「THETOKYOTOILET」が話題になった。
市は中心市街地まちづくり方針における戦略の一つ「回遊・滞留の場づくり」の推進に公共トイレの質の向上が重要と、今年3月に「八王子市中心市街地公共トイレ環境づくり基本方針」を策定して、トイレ環境の考え方や整備の方向性を定めた。設計コンペは、このリーディングプロジェクトとして企画された。
船森公園は京王八王子駅にほど近く、多くの市民が日常的に利用する場所。トイレは1985年、併設するバリアフリートイレは2004年に整備された。長年の使用で老朽化が進んでおり、おむつ交換台や子ども用トイレは未整備。バリアフリートイレは扉や便器などが何度も壊され、そのたびに修理しており、現在も使用できない状態が続いている。こうした背景から、船森公園が今回のプロジェクトの対象に選ばれた。
若き才能に期待
設計コンペの募集要項は、市のホームページで5月1日に公表される予定。若手・中堅の建築家やデザイナーの育成と活躍の場を創出するため、参加資格は45歳以下の建築士(評価者の親族を除く)としている。
設計にあたっては【1】建築面積50平方メートル以下【2】トイレの基本構成は男子トイレ(大便器1基・小便器2基・手洗い・おむつ交換台)、女子トイレ(大便器2基・手洗い・おむつ交換台)、バリアフリートイレ、子ども用トイレ、清掃用具入れといった基本的な構成が求められている。これらはあくまで市が示す最低限の条件で、設計者の自由な発想と創造性が期待されている。外構工事費を含めた想定工事価格は4600万円。
評価のポイントは、コストや構造、施工の実現可能性はもちろん、ランニングコストへの配慮や長寿命化、利用しやすさ、地域の特性や文化の尊重、防犯・防災への配慮、トイレ空間に新たな価値をもたらす設計案であることなど。案の選定には、八王子市景観アドバイザーを務める建築家やデザイナー、大学教授らが外部評価員として評価会議に参加する。
今後のスケジュールは5月1日に募集要項の公表、8月から9月にかけて案の選定と公表が行われる。26年3月末までに実施設計が完了し、26年度に建築工事が始まる予定。
設計コンペについて初宿和夫市長は「参加資格を45歳以下にしたことで、若手・中堅の育成や活動の場の提供につなげたい。市長としては、『八王子らしさ』がどのような形で表現されてくるかが非常に楽しみ」と若き才能による革新的なアイデアに期待感を示している。