学校や会社に行くのが苦痛になる「しくみ」とは【心の不調がみるみるよくなる本】
学校や会社へ行くのがつらいのはなぜ?
学校や会社など、行かなくてはいけない場所なのに足が向かなくなってしまうこともあります。そうした気分になってしまう「しくみ」を知りましょう。
「本業」以外の生活は問題なし
日本では、4月に新年度がはじまります。新しい環境に変わる人が多い新年度は、特にストレスがたまりやすい時期です。「五月病」という言葉を聞いたことがあると思います。心理学辞典には、「入試の緊張が解消し、5月の連休明けごろから、うつや無気力状態の学生が増加することから使われはじめた名称」と書かれています。最近は、会社の初任者研修が終わると欠勤や退職が増えるので、その時期をさして「六月病」ともいいます。この症状は、ストレスからくる適応障害のひとつです。
学校や会社に行くのがつらい人は、朝、登校あるいは出社の時刻になると、頭痛や腹痛、吐き気などの身体的症状が出ることが多いようです。午前中はその症状が重いのですが、午後から夕方になると解消し、食事もできます。そして夜になると、テレビを見たり、ゲームを楽しんだりしながら「明日は行こう」という気分になります。しかし、翌朝にはまた同じ症状が出てしまうのです。
正式な病名ではありませんが、精神医学者の笠原嘉は、こうした症状を「退却神経症」と命名しました。周囲から期待される役割(本業)を実現できず、それ以外の生活(副業)にはまったく影響が出ないというのが特徴です。
「心気的時期」の対応が重要
学校に行けない人を対象にしたアメリカの研究では、上述のような「朝具合が悪く→昼には治り→夜は前向き」という状態は「心気的時期」にあたり、病気としては初期段階だとしています。そして、さらに症状が悪化すると「攻撃的時期」「内閉的時期」へと移行していきます。またこの「心気的時期」は、登校できた場合も、校内では平常の態度でいられます。もちろん、本人は不安や不快な気分を抑えて平静を装っているだけです。
大事なのは、早い時期に親や家族、周囲の人間が症状に気づき、できれば精神科の受診をすすめることです。家でリラックスしている態度を見て、「学校に行け」と叱責したり、ゲームやパソコンを取り上げたりすると、本人のストレスはさらに増し、病気は次の段階へ進んでしまう可能性が高まります。これは学生ばかりでなく、会社に行けない人の場合も同じです。
また、自分が「五月病」になった場合、誰にも相談せず、一人でやみくもにがんばって克服しようとすると、かえって症状が悪化してしまう可能性があります。特に真面目な人はストレスを感じたり、ためたりしやすいので注意が必要です。
もし、「五月病かな」と感じたら、自分だけで何とかしようとせず、周囲に助けてもらったり、普段から身近に相談できる人をつくっておいたりすることが大切です。
「五月病」への対処法
人によって「五月病」発症の理由はさまざまですが、確かなことは、環境の変化による「ストレス」が主な要因なので、そのストレスの原因と距離を置くことも大切です
生活にメリハリをつける
仕事や勉強ばかりだとストレスがたまり心身の負担も増えるため、オン・ オフをしっかりと切り替えて、プライベートの時間を楽しむことも大切。
「~しなきゃ」と考えるのをやめる
「絶対に~しなきゃ」という考え方はストレスを高める。「ほどほどでいいか」「できなくてもしょうがないか」くらいに考えたほうが心身の健康によい。
ストレスの原因を突き止める
自分が何にストレスを感じているのかを突き止めることによって、具体的な対処法を見つけたり、その原因から距離を置いたりすることができる。
身近に相談できる人を見つける
一人で悩むより、周囲に相談したほうが心の病は発症しにくい。ときには家族や友人、先輩、上司などに悩みを打ち明ける勇気も必要。
「五月病」などの適応障害は、うつ病の前段階であることも多いので、症状が長引く場合は早めに医師に相談しましょう
CHECK!
学校や会社へ行くのがつらいと感じたときは適応障害を疑おう一人で抱え込んだりせず、周囲の人や医師に相談することも大切
【出典】『心の不調がみるみるよくなる本』ゆうきゆう:監修