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横浜美術館が全館リニューアル、より開かれた空間にアップデート

タイムアウト東京

横浜美術館が全館リニューアル、より開かれた空間にアップデート

2021年から大規模改修工事をしていた「横浜美術館」が、2025年2月8日に全館オープンを迎えた。リニューアルを記念し、同館のコレクションを大集合させ、横浜の歴史をアートで見直す「おかえり、ヨコハマ」展が6月2日(月)まで開催中だ。

自由にくつろげるエリアが拡充した同館には、どんな人でも「おかえり」と温かく迎える空間が広がっている。

無料でくつろげるエリアが拡大

横浜美術館は、日本のモダニズムの巨匠と称される建築家・丹下健三が手がけ、1989年に開館した。丹下は、作品鑑賞する前にたたずんだり、展示室と展示室の間で一息ついたりする「目的を明確に持たないスペースこそが大切だ」と、同館の建築について語っていた。今回の改修に当たり、丹下が目指した美術館を今一度考えたという。

Photo: Kisa Toyoshima「グランドギャラリー」
Photo: Kisa Toyoshimaピンクの優しい印象の家具類

以前から展示室よりもフリースペースが多かった同館は、改修後、エントランスホール「グランドギャラリー」全体を見渡せる展示室前まで、無料エリアを拡張した。ピンクの石材が建築に使われていることから、キーカラーをピンクとし、優しい印象の家具を制作。椅子やテーブルがあらゆる箇所にちりばめられ、作品鑑賞に疲れを感じたら、光が降り注ぐスペースで気持ちよく休める。

Photo: Kisa Toyoshima飲み物を持ち込めるフリースペースの「まるまるラウンジ」

丹下は、外の広場も一緒に整備することで、館内と街をつなげ、市民が日常的にくつろげる場所を目指した。その目的をより可視化するため、中央の「まるまるラウンジ」は、飲み物を持ち込めるフリースペースとしても機能させている。鑑賞後の感想を言い合ったり、リラックスしたりと、好きなようにくつろいでほしい。

Photo: Kisa Toyoshima靴を脱いで利用できる「くつぬぎスポット」
Photo: Kisa Toyoshima大階段の彫刻の周囲にも座れる

「くつぬぎスポット」は、本棚に絵本も配置され、靴を脱いで利用できる。また、大階段の彫刻の周囲にも椅子が置かれ、作品を囲んで考えを巡らすなど、ゆっくりとした時間が過ごせるだろう。

企画展は縄文から現代まで「横浜」にフォーカス

リニューアルオープン記念展の「おかえり、ヨコハマ」では、横浜という土地について真正面から考え、ローカルの歴史を深掘りし、そこに新たな視点を与え、歴史をアートで描いている。

1859年の開港時にいち早く遊郭が開かれ、敗戦後の占領下では米軍兵を迎える慰安施設が準備されたこの港町は、単なるローカルの歴史を探るには収まらない。女性、子ども、障がいのある人や多様なルーツを持つ人々に光を当て、この土地で一人一人が懸命に生きた証を見せる。

Photo: Kisa Toyoshima盾持人物埴輪(戸塚区上矢部町富士山古墳)古墳時代後期 横浜市歴史博物館 ※横浜市指定有形文化財

開港のイメージが強い横浜だが、はにわや土偶を取り上げ、縄文時代から横浜に人が生きてきた足跡をたどる。

Photo: Kisa Toyoshima常盤とよ子『路上』1954年 横浜美術館蔵
Photo: Kisa Toyoshima奥村泰宏『聖母愛児園の園児たち』1952年 横浜都市発展記念館 粟林阿裕子氏寄贈

戦後からは、写真家の常盤とよ子による赤線地帯の路上スナップや、奥村泰宏による、本国に帰った兵士と日本人女性との間に誕生し、街中で保護された子どもたちの写真などを展示。当時の混沌(こんとん)とした状況を語りかける。

Photo: Kisa Toyoshima折元立身『パン人間の息子+アルツハイマー・ママ』1996年 作家蔵

また、現代美術家・折元立身のアルツハイマーを患った母親との『パン人間の息子+アルツハイマー・ママ』シリーズも展示している。

謙虚な気持ちで、他人が作ったものを見るという行為のアート鑑賞。本展では、そんな他人や互いの声にふと耳を澄ますような世界が広がる。

子どもの目で見るコーナーも

大人より15センチメートル低く目線が設定された、子どもの目で見るスペースも設けられている。

Photo: Kisa Toyoshima子どもの目で見るコーナーの奈良美智『春少女』2012年 横浜美術館蔵
Photo: Kisa Toyoshimaルネ・マグリット『王様の美術館』1966年 横浜美術館蔵

座高の低い椅子と机から、奈良美智やパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)、ルネ・マグリット(René Magritte)、ポール・セザンヌ(Paul Cézanne)などの名作が堪能できる。

Photo: Kisa Toyoshima展示風景
Photo: Kisa Toyoshima「ビビッと!びじゅつ探検カード」の一部

さらに、作品の一部が切り取られ、それに関する短い問いが書かれた12種類の「ビビッと!びじゅつ探検カード」など、ゲームのように鑑賞が楽しくなるプログラムも充実している。

新収蔵作品も必見

横浜の土で制作された淺井裕介の『八百万の森へ』など、新収蔵作品も見どころだ。贅沢な広々とした空間で、じっくりと「横浜生まれ」の本作と向き合えるだろう。

Photo: Kisa Toyoshima淺井裕介『八百万の森へ』2023年 横浜信用金庫創立100周年記念寄附による購入

また、カフェ「馬車道十番館 横浜美術館 喫茶室」やショップ「MYNATE」、無料のギャラリー、美術図書館も新設。カフェでは、期間限定の「おかえりYOKOHAMAパフェ」を提供している。

Photo: Kisa Toyoshimaショップ「MYNATE」
Photo: Kisa Toyoshimaカフェ「馬車道十番館 横浜美術館 喫茶室」

静かで固いイメージがある美術館。より開かれた空間としてアップデートした同館では、作品鑑賞だけでなく、無料スペースで休む・図書館で調べる・カフェで過ごすなどの体験を通して力をチャージし、心休まる時が過ごせるだろう。思い思いの一日を作ってほしい。

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