多彩な選択肢がうれしい『台東区職員食堂 チカショクさくら』。ボリューム満点のセットメニューからヴィーガン料理まで!
安くておいしいランチが食べたい。そんなときは近くの役所へ足を運んでみるのをおすすめしたい。役所内の食堂って、そこで働いている人のための、いわゆる“社食”のイメージがあるけど、実は一般の人も利用できるところがほとんど。リーズナブルなだけでなく、栄養バランスも考えられているし、地元ならではのオリジナリティに富んだメニューが楽しめたりする。そんな役所の食堂のランチを食べ歩きます。1000年以上の歴史を誇る浅草寺を中心に、江戸の風情を今に残す台東区。上野駅から徒歩5分ほどの場所にある台東区役所の職員食堂では、栄養バランスを考慮した日替わり定食やお得なセットメニュー、ヴィーガン対応の料理など、多様なメニューがお手頃価格で楽しめる。
台東区職員食堂 チカショクさくら(たいとうくしょくいんしょくどう ちかしょくさくら)
栄養バランスのいい定食にするか、がっつりセットメニューにするか
東京観光には外せない浅草寺や上野公園など、国内だけでなく海外からもたくさんの人が訪れる台東区。2025年NHK大河ドラマ『べらぼう』の舞台となったことで、ますます注目が集まっている。
台東区役所はJR上野駅パンダ橋口から徒歩5分ほどの場所にある。パンダ橋は上野駅の東西自由通路で、東に進むと上野恩賜公園につながる。区役所は西側。改札を背にして左に進み、エスカレーターで下ると区役所の建物が見えた。
高速道路の下を通る昭和通りを進み、浅草通りにぶつかったら信号を渡って右折。その先の上野警察署の手前を左折すると、台東区役所に到着する。
食堂に行くには「浅草側(東側)出入口」から入るのがわかりやすいので、ぐるりと建物の反対側に回る。
浅草側から入ってすぐ左手にある階段を下りると、目の前が食堂の入り口だ。
日替わりメニューはA定食660円、B定食660円、お弁当550円の3種類。カレー、ラーメン、そば・うどんは、定番メニューのほかにそれぞれ週替わりメニューが用意されている。
おなかがペコペコな筆者、サンプルや写真を眺めているうちにあれもこれも食べたくなってしまった。よし、今日はお得なセットメニューにしよう!
定番メニューのかっぱ橋らーめんに、定番のアメ横カレーまたは週替わり丼が付くさくらセット710円(カレーと丼はミニサイズ)。ちなみにこの日の週替わり丼はさっぱり豚丼。……悩んだ末に定番同士、ラーメンとカレーの組み合わせでいただくことに決めた。
定番のメニュー名はみんな知ってる区内の名所
店内は丸や四角のテーブルが並び、ポップな色調で明るく、食堂というよりはカフェテリアみたい。席数は70席ほどで、こぢんまりとしている。
食券を握りしめ厨房カウンターへ。鮮やかなオレンジ色のトレーを用意して待つと、すぐにかっぱ橋らーめんとミニアメ横カレーが到着。福神漬けはセルフで盛り放題だ。
通常サイズのラーメンにミニカレーのはずなのだが、これ、カレーも通常サイズなのでは? 店長の岸田望生(もつお)さんに質問してみると、「ミニカレーですよ。ちょっと量が多いですかね」と笑顔で答えてくれた。通常サイズのカレーはもっと大きな皿に盛られているそうだ。
では麺がのびてしまう前に、ラーメンからいただきまーす。
かっぱ橋らーめんは、醤油味の、いわゆる東京ラーメンだ。ちなみに、都内の役所の食堂の醤油ラーメンには、土地ならではの名前が付けられていることが多いらしい。
鶏ガラと香味野菜を煮込んだ自家製スープに、具はチャーシュー、メンマ、のり、ナルト、ワカメ、ネギ。
チャーシューは脂が少なく、適度な歯ごたえがあって肉の旨味がたっぷり! 思わず「すごくおいしいです!」と、語彙力の乏しさ丸出しの表現で岸田さんにお伝えすると、「豚の肩ロースをぎゅっと縛って丁寧に焼いてますから」とにっこり。
そしてたまたま取材日はワンタンサービスデー! ぷりぷりのワンタンが3つものって幸せ―。
続きましてはミニアメ横カレー。何度も言うようだが、これでミニサイズだ。
ひと口目は甘口に感じたが、ふわーっとスパイスの香りが口の中に広がってきて、後から辛さが追いかけてきた。野菜の甘みとスパイシーさのバランスが絶妙だ。これはなにか隠し味がありますね?
「火を止めてから、最後にガラムマサラを加えるんです。最初から入れたらダメ」と岸田さんがこっそり教えてくれた。さっそく家でもやってみます。
ラーメンとカレー、果たして食べきれるのだろうか……。なんて心配していたけれど、ぺろりと平らげた。おなかいっぱい大満足! ごちそうさまでした!
不定期で登場する季節のご飯。出合えたらラッキー!
筆者がラーメンとカレーをぱくぱく食べている間も行列が絶えず、活気ある厨房カウンター。スタッフさんが定食を注文するお客さん一人ひとりに「白いご飯とタケノコご飯、どちらにしますか?」と聞いている。え、タケノコご飯が選べるの?? 店長の岸田さんに話を聞いた。
「毎日やっているわけではないのですが、ご飯を選べる日をつくっています。季節のご飯の日もあれば、雑穀米の日、中華がゆの日もあります」。1週間分の日替わりメニューは店内に掲示されているが、ご飯が選べる日はあえて公開していない。「『次に来たときは何かな』っていう期待感が、また足を運んでもらえるきっかけになれば」と岸田さんはほほえむ。
定食に付く小鉢は、カウンターに並ぶなかから自分で好きなのを1つ選ぶシステム。小鉢は日替わりで、毎日10種類ほど用意されている。
ラーメンやカレーのメニュー名には「かっぱ橋」「アメ横」と台東区の名所が入っていたが、台東区ならではのメニューで人気なのが上野動物園のパンダにちなんだ、双子のベジぱんだカレー。このカレーはヴィーガン対応で、動物性の食材や調味料は一切使っていない。
ヴィーガンメニューはほかにかき揚げうどんとキーマカレーがある。「ヴィーガンを推奨しているということではなくて、いろいろ選べるというところを大切にしています」と岸田さんは話す。
「米も野菜も高騰して本当に大変。そんな中でもお客さまに喜んでもらいたい。そのためには、手間ひまをかけないと」と岸田さん。前述のご飯が選べるサービスやワンタン無料などの月替わりのサービス、だしがらで自家製のふりかけをつくって「ご自由にどうぞ」と調味料カウンターに置いたのも岸田さんのアイデアだ。
今日はラーメンとカレーをいただいたので使わなかったが、手作りのふりかけなんておいしいに違いない。次に来たときは絶対に定食を食べることに決めた。季節のご飯が選べる日だったらうれしいけど、白いご飯だけの日でもふりかけをたっぷり味わえるもんね!
台東区職員食堂 チカショクさくら(たいとうくしょくいんしょくどう ちかしょくさくら)
住所:東京都台東区東上野4-5-6 台東区役所B1/営業時間:11:00~14:50LO/定休日:土・日・祝/アクセス:JR・地下鉄上野駅から徒歩5分
取材・文・撮影=マルヤマミキ
マルヤマミキ
編集・ライター
横浜生まれ、横浜育ち。バンド活動をしたり古文書を読んだりして学生時代を過ごす。好きなことは食べることと飲むこと、うるさい系の音楽を聴くこと、野球観戦、歴史散策。好きな飲み物は日本酒とビールとホッピー(マイ黄金比はホッピー1本でナカ6杯)。