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現在15歳――若きトランペット奏者・児玉隼人が語る、 理想に描く「音・パフォーマンス・ステージの形」

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児玉隼人

彼の発する音のたおやかさと豊かな表現にただただ驚かされ、目と耳を奪われる。その音を奏でるのは、トランペット奏者・児玉隼人。この6月に誕生日を迎え15歳になったばかりの中学3年生だ。5歳で小型版のトランペットともいわれるコルネットに出会い、生粋の負けず嫌い気質が功を奏したのだろう、「10歳以降で出場したコンクールでは全て1位および最高位を最年少で受賞」という輝かしい成績を残している。類まれなるトランペット奏者としての才能はもちろんだが、InstagramやYouTubeをはじめとしたSNSでの活発な発信や、ジャンルや楽器を問わず自由な構成で開催するリサイタルなど、若さあふれる柔軟性と感覚を武器に日々を重ねていることも注目すべき点だ。2023年春からは拠点を北海道から関東に移し、10月には株式会社イープラスとエージェント契約を結んだ。そんな若きトランペッターの楽器との出会いから現在の活動、そしてYouTubeで公開されたばかりのトマジ作曲「トランペット協奏曲」についてなど、コンサートの開催日と開催日の間でじっくりと語ってもらうことができた。

――6月20日で15歳になった児玉さんですが、まずはトランペットとの出会いから聞かせてください。

5歳の時に、サンタさんからコルネットという楽器をもらったことがキッカケです。コルネットはトランペットの仲間なのですが、コンパクトで持ちやすくて音色が少し異なります。楽器の個体差もありますが、すごくまろやかな音が出るのです。僕が初めて吹いたコルネットはすごくやわらかな音のするものでした。

サンタさんからのプレゼント(当時5歳)

――それはサンタさんに「トランペットが欲しい!」とお願いして?

サンタさんにリクエストしたのはドラえもんの四次元ポケットだったのですが、サンタさんに届かなかったみたいで。両親が管楽器をやっているので音楽に触れることはありましたが、実は全く興味を持っていませんでした。

何だろう・・・これは・・・(当時5歳)

――プレゼントを開けてコルネットを見つけた時は……。

「何これ?」という感じでしたね(笑)。でも、とにかく吹いてみたら音が出て。

――音を出せた!?

はい。今考えればすごいですよね、5歳で。でも当時は楽しいわけでもなく、音符もわからないしメロディーも吹けないしで、ただ音を出しているだけでした。

初めてのコルネット(当時5歳)

●幼少期から将来のことについて考えていた

――そんな少年が数年後にはソロのトランペット奏者になるなんて、どんなキッカケがあったのでしょう。

コルネットを手にして半年くらいが経った頃、世界的トランペット奏者のアンドレ・アンリさんが僕が住む街にコンサートをしにやって来たんです。その公演を観て「自分が持っている楽器と似た楽器からこんな音楽が奏でられるなんて!」と感動しました。実は僕、その頃から将来の仕事や自分が何になるんだろうということについてよく考えていたこともあって、「この人のような仕事をする人になりたい!」と強く思ったのがキッカケです。そこからトランペットが大好きになって、YouTubeをどんどん掘ったり真似してみたりのめり込んでいきました。そうしてたくさんの曲に触れているうちに楽器も体に馴染んで、技術的にも追いついてきたのかなと思います。

――独学なんですか!? てっきり教室などで先生に習われたのかと!

ピアノも習っていなかったし、そういう教室があることすら知らなくて……そもそも習うということがアイデアとして頭にありませんでしたね。住んでいたのが地方だったので、先生がいないということも大きかったと思います。

アンドレ・アンリ氏に演奏を聴いてもらう児玉隼人

――なるほど、独学で進めざるを得なかったと。楽器をトランペットに持ち替えてからが新たなスタートだったのかなとも思いますが、取り組み方に変化はありましたか?

変化といえば札幌に行く用事があるたびに先生について技術指導をお願いするようになったことと、コンクールに頻繁に出場するようになったことですね。特にコンクールは、僕、ずっと一番になりたくて。学校のことでもなんでも一番になりたいタイプなんです。それで「どうしたらトランペットで一番になれるだろう?」と両親に相談をしたら、コンクールに出てみたらとアドバイスをもらいました。

――一そういう気持ちがステップアップのチャンスですよね。それと今まで独学だったものが先生に指導をしてもらうというのも、大きなことですね。

はい。独学で進めている間は、基礎練習を全く行っていませんでした。なんだか……つまらなくて。メロディーを奏でることの方が断然楽しかったから、基礎には目を向けていませんでした。ところが先生に習い始めてから、基礎練習をきっちりすると技術的に上達していると自覚できるようになって、そこから練習の仕方もかなり変わりました。「基礎練習も楽しいな」と思うようにもなって。

――具体的な技術的面の変化としては……?

口の形を意識していなかったのですが、妙な口の形をしているといい音が出ないんです。毎日唇の調子を見て音を出していると自分の理想の音に近づいていくし、楽譜に書いてあるような高い音は基礎練習をしていないと綺麗に出ません。音域も広がったし、基礎練習をちゃんとすることはいいことしかないんですよ。

――あぁ、なんだかいろいろ理解できた気がします。児玉さんのリサイタルの動画を拝見していると、楽器で音を奏でているというよりは、児玉さんの体そのものが楽器に見えてくるようなトランペットの演奏のされ方をしているなと感じました。それは基礎練習の賜物なのですね。

ありがとうございます。基礎練習はストレスなくトランペットを吹けるようにするためのものなんです。無理せず音を出したり自分の声のように表現をできるようになるためには基礎練習に裏打ちされた技術がないと難しいので、そういうことも考えながらやっています。

――そういう日々取り組まれている基礎練習を通して児玉さんが出したいと思い描いている音について、言葉にすることは難しいですか?

何と言えばいいかな……。出したい音は場面によって全然違いますけど、目指しているのは深くて、温かくて、柔らかくて、それが広がっていくような音色です。それと、心地良さも大事かなぁ。

――そういう音のイメージなのですね。トランペットは楽器の性質上、音が奏でられる空間にインパクトを与える音を奏でる楽器というイメージがあったので、児玉さんが奏でる音の柔らかさには実際驚きました。

僕もインパクトのある音にも憧れはあります。なのでさっきお話しした自分の理想の音だけではなくて、いろいろな要素の音が詰め込まれていろいろな耳障りで聞こえてくる音になればいいなと思うのです。そういう音を目指して、自分の音探しを続けています。やっぱりコンサートに足を運んで生の音に触れていくと、あの音はどうやって出しているのだろう? という興味が湧いてくるんです。目指す音をイメージしながら音を出してみて、それをまたブラッシュアップしての繰り返しで自分の理想の音を追求しています。

小学6年でデビューリサイタル

●セルゲイ・ナカリャコフ、角野隼斗​から受けた影響

――そして2023年の春からは、拠点を北海道から関東へと移されたそうですね。

はい。僕もSNSを通して活動が広がりつつあったこともキッカケになりました。こちらで活動を始めてみて、本当にいいことしかないですね。やはり東京は世界の素晴らしい音楽が集まる街ですし、プロのトランペット奏者もたくさんやって来ます。あと何よりもオーケストラのコンサートにゲストで呼んでいただけたり生の音楽に触れる機会がとにかく増えたので、成長のスピードが上がっていることを自分でも感じられています。

――ご自分で明確に見えている成長とは、具体的にどういったことでしょうか。

ステージに上がる回数が格段に増えて、緊張もしますが落ち着いて演奏ができるようになってきたり、ステージに上がることでの発見もたくさんあります。課題としては、自分の演奏のバラつきが多いことです。いついかなる時も集中して演奏できるように、今は模索しているところです。

――なるほど。拠点を移してからの活動の中で出会った方で、影響を受けた方を挙げることはできますか?

まずは、セルゲイ・ナカリャコフさんです。昨年、彼のマスタークラスを受講することができたのですが、今まで自分がいいと思ってやっていた演奏に対して「それはちょっとやりすぎたよ」と少し厳しい指摘を受けました。言われた時はプライドもあって受け入れることができなかったのですが、その後自分の演奏とプロの演奏を聴き比べていく中で少しずつ自分の心に刺さり始めて……。

――それはどういった指摘だったのですか。

後押しと呼ばれる演奏法で、音が後から広がるような余韻を僕はあえて作っていたんです。自分としてはその音が美しいと思ってやっていたのですが、「あまりよくないよ」とおっしゃられて。その言葉が理解できてからは、僕の演奏スタイルも大きく変わったと思います。そしてもうひとり影響を受けたのが、ピアニストの角野隼斗​さんです。先日コンサートにも行かせていただいたのですが、今まで観てきたクラシックのコンサートでは感じたことがないほどの深い満足感と、角野さんのパフォーマンスに圧倒されました。とにかく演奏力の高さと演奏の幅広さが素晴らしくて、ずっと圧倒され続けたコンサートだったんです。それにステージのライティングも本当に素晴らしくて、隅から隅までこだわっているというところがよくわかって感動しました。

――演奏者は、演奏だけが良ければいいというわけではないと。

はい。お客さんにはせっかくコンサートに来ていただいているので、CDからは感じられないライブならではの見せ方をすることがすごく大事なのだなと思いました。角野さんのコンサートでは演奏だけではなくて、演出や照明、もちろんパフォーマンスも含めてトータルで楽しませていただいたという感動があったんです。特に視覚から楽しませるという発見は学びでした。僕も見せ方にこだわった演奏したいなと思います。

●日本から海外も視野に入れて活動したい

――そしてこの度、5月に浜離宮朝日ホールで開催された『児玉隼人トランペットリサイタル』から、トマジの「トランペット協奏曲」をYouTubeで公開されました。この曲をリサイタルで演奏された経緯を伺えますか?

H.Tomasi: Trumpet Concerto(Hayato Kodama)/トマジ :トランペット協奏曲:児玉隼人(2009-)

はい。3年に1度の『日本管打楽器コンクール』が今年開催されるのですが、このコンクールの課題曲が「トランペット協奏曲」なんです。トランペット奏者にとってすごく大事な1曲なのですが、実はこれまでこの曲の良さをあまり理解できずにいました。とはいえ『日本管打楽器コンクール』にはチャンレンジしたいし、チャレンジするからには1位を獲りたい。ならば! と練習を始めたら、曲の良さに気づき始めたんです。その矢先にリサイタルが決まったので、ぜひやってみようという流れになりました。

――曲の良さを理解できずにいたというのは。

僕はずっと、綺麗でまとまったハーモニーのある曲が好きでした。そういった曲は古い時代のクラシックに多いのですが、この「トランペット協奏曲」は割と現代の曲なんです。今まで触れてこなかった時代の曲でもあって少し遠い存在だったのですが、改めて取り組んでみるとまるで映画を観ているような感覚になれる素晴らしい曲だと気づけました。

――「トランペット協奏曲」はコンクールで披露をすることが前提だとすると、取り組むにあたってオリジナルの解釈や表現を加えて演奏することが大事になってくるのかなと想像をするのですが……。

この曲は元々オーケストラ仕様の曲なのですが、今回はピアノアレンジで演奏します。トランペットとピアノのみで表現することになるとはいえ、オーケストラの壮大なサウンドやストーリーを大切にするイメージを持って演奏しています。

――なるほど。この映像の中で、注目して見てもらいたいポイントを伺えますか。

1曲の間にいろいろなことが起こっているような、一度も落ち着くことがない曲なので、目が離せない展開が見どころです。その中で、特に3楽章の僕とピアニストのアグレッシブな演奏に注目していただけたらうれしいです。

――映像を拝見すると、すごく生で体感したいという気持ちになったのですが、この夏にそれが叶う機会もありそうですね。

はい。夏はオーケストラとの共演もありますし、7月26日(金)にはサントリーホールで開催される『めざましクラシックス サマースペシャル2024』への出演も決まっています。そしてコンサートではありませんが、先ほどお話しした『日本管打楽器コンクール』も8月末に控えているので、がんばります!

――とにかくいろいろと活動が広がっていく過程を見せていただいていますが、これからも活動を続けていく中でどのようなトランペット奏者になっていきたいと思われていますか。

国内での活動は着々と広がっていっていますが、まだ海外でのコンサート経験がないので、これからは海外への広がりも視野に入れて活動をしていきたいです。

――それこそSNSは、海外の方からのアクセスも多いのでは?

実はフォロワーの半数以上が海外の方なんです。SNSベースだと海外に向けて自分の活動が広がっているという感覚もありますが、現実世界ではこれからです。

――ちなみに英語は……?

習い始めたところなので、まだまだこれからがんばっていきたいです。

――今日はありがとうございました。これからのご活躍も楽しみにしています!

ありがとうございました!

取材・文=桃井麻依子

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