イラストと粘土で表現する、「みかんオレンジ」のLOVEな作品展が開催中。
イラストレーターの「みかんオレンジ」さんが、燕市の「more cafe」で作品展を開催しています。展示のテーマは「みかんオレンジとLOVE LOVE LOVE」。ハートがモチーフになったイラスト作品や、ゆる〜いフォルムの粘土作品が並びます。中でも目を引くのが、土偶の置物。なぜ土偶なんでしょうか……? LOVEが溢れる店内で、みかんオレンジさんにお話を聞いてきました。
イラストレーター
みかんオレンジ
三条市出身。2016年に「みかんオレンジ」の名前でZINEを制作。一時は活動をお休みし、2023年にふたたび創作活動をスタート。新たに粘土を使った作品づくりにも挑戦。2024年9月より燕市の「more cafe」で作品展「みかんオレンジとLOVE LOVE LOVE」を開催中。
小学生のときに決めた、思い入れのあるペンネーム。
――あの……みかんとオレンジがお好きなんですか?
みかんオレンジさん:そういうわけではないんです(笑)。小学4年生ぐらいのときに漫画家になりたいと思って、その頃に自分でつけたペンネームです。さくらももこさんがすごく好きだったのもあって、そういう響きの名前に憧れていました。
――子どもの頃に決めたペンネームだったんですね。実際に「みかんオレンジ」として創作活動をはじめられたのはいつからなんですか?
みかんオレンジさん: 2016年に「うたたね」っていうZINEを自主制作しました。それまで書き溜めていた4コマ漫画を、誰に見せるわけでもないけどZINEにしようと思いついたんです。そのときに「みかんオレンジ」っていうペンネームを思い出して、その名前で活動するようになりました。古本市に出店したり、新潟市内の書店さんでZINEを扱っていただいたりもしていました。
――ZINEを作ったことがはじまりだったんですね。
みかんオレンジさん:ただ、その後はしばらく活動していませんでした。それから何年も経ちまして、去年からまた創作活動をはじめたんです。友だちに誘われてイベント出店をしたことがきっかけになって、作品を作るようになりました。
縄文時代への憧れから生まれた、土偶の作品。
――現在作られている作品はイラストと粘土がメインのようですね。
みかんオレンジさん:去年、イベントに出店するときに、粘土で土偶を作ってみようと思ったんです。粘土に触るのなんて子どものときぶりだったんですけど、意外と愛着が湧いて、面白いなと思いました。
――土偶ですか……?
みかんオレンジさん:それをSNSにアップしたら、友だちが「私も土偶を作りたい」と言ってくれて。最初は友だちのために土偶のワークショップを開いていたんです。そしたらいろんな方から「ワークショップをやってほしい」とお声がけいただくようになりました。
――いろいろ気になるところなんですけど……そもそも、どうして土偶を作ろうと?
みかんオレンジさん:昔から「縄文時代っていいな」と思っていて、長岡の「新潟県立歴史博物館」や「馬高縄文館」に行くと、すごく胸がときめくんです。縄文時代は自然に沿って心豊かに暮らしていた時代だったと聞いたことがあるので、漠然とした憧れを持って思いをはせていました。そういうのがあって、土偶を作りたくなったんだと思います(笑)
――土偶を作るのに、ルールや定義みたいなものってあるんでしょうか。
みかんオレンジさん:それがいろいろな形の土偶が存在していて、決まった形やルールはないようです。ただほとんどの土偶は女性を表現していて、豊穣や出産を祈ったり、呪術やお祭りの道具として作られていたそうです。
――へ〜、いろんな願いを込めて作られていたんですね。
みかんオレンジさん:土偶は身体の一部が欠けているものが多いんです。それも諸説あるんですが、わざと壊してから土に埋めていたのではないかと言われていて。自分の身体の悪い部位と同じ部位を壊すことで治癒を願ったとか。本当のことは分からないそうです。
――先ほどお話に出た「土偶のワークショップ」って、どんなワークショップなんですか?
みかんオレンジさん:土偶を忠実に再現するのではなくて、オリジナルの土偶を作るワークショップです。粘土をこねる作業ってすごく感性を使うので、自由な想像力で土偶を作ることによって、自分自身を解放するような気持ちになるんじゃないかなって思いました。
――思い思いの土偶を作ることができるんですね。
みかんオレンジさん:当時の資料も参考にした上で、オリジナルの土偶をデザインしていただきます。頭じゃなくて心のままに手を動かすことで、本当にお気に入りの一体が出来上がるんです。
――楽しそう。大人になってから粘土に触ることなんてめったにないですもんね。
みかんオレンジさん:そうですね。無心で粘土をこねることってないと思うので、そういう時間を大切にしてほしいなって思います。もちろんお子さんでも楽しめるワークショップだと思うんですけど、むしろ大人の方に体験してもらいたいですね。
――今日は「more cafe」さんで開催中の「みかんオレンジとLOVE LOVE LOVE」という作品展にお邪魔しています。
みかんオレンジさん:テーマは、「more cafe」店主の愛さんがつけてくれたんです。最初に「みかんオレンジとLOVE LOVE LOVE」っていうお題をいただいて、作品を作っていきました。
――「LOVE」が大きなテーマになっているわけですよね。
みかんオレンジさん:「LOVE」といっても定義が広いと思うんですけども、私が表現したいのは「セルフラブ」。自分を愛することがすべての愛につながると思っているところがあって。今回の展示も「心」をテーマに、自分を愛すること、大切にすること表現しています。
作品づくりを通して、人の背中を押せるような存在になりたい。
――改めて、みかんオレンジさんの過去のことも教えてください。イラストレーターになることは昔からの夢だったんでしょうか。
みかんオレンジさん:ぜんぜん、自分の絵を人に見せようとかイラストレーターになりたいとか、いっさい思っていなくて。ただ、美術系の分野に憧れがあったので、大学受験のときに美大に行きたいなとは思ったんです。でも自分にはそこまで才能がないし、ちょっと違うのかなと思って……。
――そうだったんですね。
みかんオレンジさん:それで、絵を描いたり表現したりっていう、自分の「好き」を長年封印していました。本当は憧れているけど、これで生活が成り立つわけがないって。だから人に絵を見てもらうようになったのは、本当に最近なんです。
――考えが変わったのには、何かきっかけがあったんですか?
みかんオレンジさん:5年前に母が要介護状態になって、介護生活がはじまったんです。この5年間は自分の中でけっこう辛くて、いろんな葛藤を抱えていました。ゴールが見えないので悲観的になるし、このままだと何もできないままどんどん年をとってしまうっていうことに危機感を感じて、なんとかしなければいけないなと。
――それで創作活動を再開することにされたんですね。
みかんオレンジさん:自分のできることを探そうと思ったのが2年前です。自分の力で何かできる人にならないといけないと思って、自分探しじゃないですけど、間借りカフェをやってみたり、絵を描いてイベントに出店したりするようになりました。まだ実験中というか、いろんなことを試しているところです。
――世に出て活動をされるようになってから、人とのつながりもどんどん広がっていたんじゃないですか?
みかんオレンジさん:そうですね。いろんな人に出会って、自分の小さな挑戦がいろんな人とのご縁を運ぶきっかけになったと感じています。「人生って面白いな」って思うことが増えましたね。
――作品を通じて伝えたいメッセージってあるんでしょうか。
みかんオレンジさん:いろんな理由で何かを諦めたり、くすぶっていたりするような方もいると思うんです。でも私にできるんだから誰にだってできるんじゃないかと思うし、皆さんにエールを送りたいなと。作品づくりを通してそっと人の背中を押せるような、励ませるような存在になりたいです。新しいことに挑戦しながら自分の可能性を探していきたいなって思っています。
――今後、挑戦してみたい表現方法はありますか?
みかんオレンジさん:陶芸に挑戦してみたいです。粘土をこねているうちに本物の土に触りたいって思うようになったので、陶芸をして絵付けをしてみたいなって。やったことのない表現方法を模索していきたいです。
みかんオレンジとLOVE LOVE LOVE
会期:2024年9月10日(火)〜12月27日(金)
会場:more cafe