ダコタ・ジョンソン、ペドロ・パスカル、クリス・エヴァンス『Materialists』レビュー ─ ハイスペ男か、まっすぐな愛か?現代の婚活を『パストライブス/再会』監督が描く
(カナダ・トロントから現地レポート)『パストライブス/再会』で一躍注目を浴び、オスカーにもノミネートされたセリーヌ・ソン監督の長編第2作『Materialists(原題)』が、現地時間6月13日に北米で劇場公開された。主演は『フィフティ・シェイズ』シリーズなどで知られるダコタ・ジョンソン。彼女が演じるのは、理想の相手をクライアントに紹介するプロの“マッチメーカー”(縁談をまとめる仲人)だ。『』キャプテン・アメリカ役のクリス・エヴァンスと、『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』ペドロ・パスカルという豪華出演陣でも話題の一作。
物語は、ペドロ・パスカル演じる富豪のハリーと、クリス・エヴァンス演じる元恋人ジョンとの間で揺れ動く、ルーシーの複雑な恋愛模様を中心に描く。ラフでスウィートなラブコメというわけではなく、ビターでリアルな恋愛模様を描いた作品となっている。
舞台はニューヨーク。ルーシー(ダコタ・ジョンソン)は、外見、年齢、年収といったスペックを重視して理想の相手を見つけるマッチメーカーとして成功しており、これまで9組を結婚に導いてきた実績を持つ。そんな彼女は、顧客の結婚式で、富豪のハリー(ペドロ・パスカル)と出会う。彼はルックスもよく、高身長で高収入。ルーシーは彼を“ユニコーン”と判断し、ビジネス的な目線でアプローチし名刺を渡すが、ハリーから逆にデートの誘いを受ける。
そして結婚式場には偶然、ルーシーが過去に長期交際していたジョン(クリス・エヴァンス)もケータリングスタッフとして現れる。舞台俳優として夢を追い続けているジョンとの再会で、彼への想いを思い出すルーシー。安定した生活を約束してくれる富豪のハリーか、不器用ながらも真っ直ぐに愛してくれたジョンか。ルーシーはこの二人の間で心が揺れ動いていく。
ルーシーの恋模様のほかに、婚活の厳しさも描いている本作。ルーシーの顧客との面談シーンでは、「20代としか付き合わない」「白人のみがいい」など多くの人の“厳しい”条件も目にすることができる。「相手のスペックを重視する恋愛は、そもそも“恋愛”と呼べるのだろうか」「恋愛は取引なのか?」そんな問いを投げかけてくるこの作品。現代の婚活事情を背景に、“結婚”と“愛”の間にある違いをリアルに描き出している本作は、ラブコメというジャンルに収めるのはもったいないほどの奥の深い作品となっている。
本作は、現地時間6月14日時点で、Rotten Tomatoesの批評家スコアが87%と高評価。観客スコアは70%となっている。公開週末では1,100万ドルの興行収入を記録。インディーズの大手A24歴史上、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』と『ヘレディタリー/継承』に次ぐ、米国内興行収入3位のデビューを果たした。
この高評価の要因の一つは、やはり実力派俳優たちの巧みな演技だろう。ダコタ・ジョンソンは、理想と現実の狭間で葛藤するルーシーを繊細に表現。恋愛に悩む等身大の女性像に共感できる人も多いはず。クリス・エヴァンスは、夢と現実のギャップに悩みながらも誠実な想いを抱える舞台俳優を好演。ペドロ・パスカルは、完璧な“条件”を持ちながらも、愛に対してどこか不器用な男性像を見事に表現している。
作品に登場するニューヨークの街並みも見どころの一つ。公園を散歩しながらの会話や、カフェでのちょっとした打ち合わせなど、何気ない風景がとてもおしゃれで、ラブコメに欠かせない“ちょっとした憧れ”も、この作品にはしっかりと詰まっている。
『Materialists(原題)』の日本公開日は未定。
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