「日差しが強いのに涼しい」乾燥地帯で育つ植物をLEDライトで栽培する方法とは?【LED LIGHT 室内栽培基本BOOK】
LEDライトによるモンソニアの実生栽培
森 敏郎(InstagramID:@mori_udn)
好きな場所、好きな時間、好きな強さで植物に光を当てられるため、冬のような気温と夏のような日照の両立など、屋外管理では実現できないような条件で栽培を試すことができます。私は主に、乾燥地帯に生えるモンソニアという植物の実生栽培(種子からの栽培)に力を入れています。モンソニアの生息地は「日差しが強いのに涼しい」という独特な気候です。この環境を自宅で再現するために、強力なLEDが非常に役に立っています。
① LED 栽培で野生株のように成長し花を咲かせたモンソニア
野生のモンソニアは、厳しい乾燥の中で休眠を繰り返しながら、年に数mmという非常に遅い速度で育ちます。この成長を速めるために水を多めに与えて栽培すると、確かに速く成長しますが、枝が細長く徒長します。逆に自然界のような乾燥条件で育てると、徒長は減りますが、成長速度も野生株同様になり、大きく育てるには途方もない年月が必要になってしまいます。このため、かつてはモンソニアの実生栽培は非常に困難だとされていました。
私自身も実生栽培の模索を始めた当初は、発芽した苗が、私自分が死ぬまでに親指サイズに成長すれば成功だと考えていました。しかし、実際に育てていく中で、強力なLEDを使用すると、たくさん水を与えても徒長せず、野生株に近い枝の太さを保ったまま、年間数cmから十数cmも成長することがわかりました。これは野生の数十倍の成長速度です。また、この栽培方法を使うと発芽後半年以内に沢山の花が咲き始め、年に数百も種子が取れることも判明しました。
ゆっくり育つ植物の数十年を1年間に圧縮する。これは強力なLED無しでは実現が難しかった栽培方法です。この方法が今後進歩していけば、将来的には野生株を超える迫力の栽培株が当たり前になると思います。
モンソニア以外にも、乾燥地帯には魅力的な植物が沢山自生しています。しかし、その多くが野生株の乱獲や土地開発により絶滅の危機に瀕しています。自生地の個体数の減少に繋がる野生株中心の楽しみ方から一歩離れ、LEDなどの新しい機材を取り入れながら自家栽培の面白さや可能性を広げていくことが、自生地の未来のためにも、また愛好家の未来のためにも重要だと思います。
❷❸❹:モンソニアが成長していく過程
⑤ LEDライトを設置した栽培棚
⑥ LEDライトはHipargero HG400を使用
使用機材
LED ライト:Hipargero HG400
ラック: ドウシシャ ルミナスノワール
コンセントタイマー:パナソニック WH3311WP
ファン:ヤマゼン YMY-D301
反射材:BINGXIN キャンプ用アルミマット
温湿度計:ダイソー
スペクトロメーター:楢ノ木技研 ezSpectra 815V
LEDライトはHipargero「HG400」をメインで使用しています。ラックの最上段にLEDを置き、棚板のメッシュ越しに使用しています。コンセントタイマーの設定は朝5時~夜7時の点灯です。
育成環境は南向き6畳洋室。夏は窓からの直射光が少ないため、日光で部屋が温まる感じはありません。6月頃から10月は最高気温が30℃を超えるため、30℃以下の設定で常時エアコンをかけています。昼夜の寒暖差はほとんどありません。
冬は直射光で部屋が暖められてしまうため、昼間のみ室温30℃を超える日があります。適宜エアコンか隣室とのドアの開放で対応しています。夜間は10~15℃前後です。
我が家のベランダは夏は50℃超え、冬は積雪があるため、春と秋しか植物を置くことができません。LEDを使った室内栽培なら、極端な暑さや寒さの対策は不要になります。突発的な豪雨や台風のときも鉢の心配をしなくて良くなり、虫や病気の心配も少なくなります。
LEDの導入で園芸のハードルが劇的に下がる家は多いと思います。
⑦ LEDで栽培中のモンソニアの実生苗
【出典】『LED LIGHT 室内栽培基本BOOK』著:日本文芸社(編集)