旅行ガイドのように「認知症世界」を見てみると…7人に1人がかかる時代に“ヒント”を
「終活」という言葉がめずらしいものではなくなった、人生100年時代の今。
大切な人だからこそ、「最期」や「いなくなったあと」を想像することはどうしても後回しにしてしまいがち…。
だけど、大切な人だからこそ、大切に考えたい、大切なことが「終活」には詰まっています。
連載「親の「終活」を考える」では、Sitakke編集部も自分事で「親世代の終活」に向き合います。
認知症の人に見えている世界
5人に1人が65歳以上の日本で今、増え続けているのが認知症です。
北海道内も例外ではなく、あなたの大切な人が認知症とともに生きる時代が始まっています。
3月、札幌市で開かれた講演会です。
「ご飯を食べに行こうと乗ったバス。しかし、しばらくすると、どこへ向かうのか?自分が、なぜバスに乗ったのか?そもそも、どこから来たのか?わからなくなってしまう、正にミステリーバスです」
これは、認知症のある人の頭の中で起きていること。
制作したのは、慶応大学大学院の特任教授で、作家の筧祐介さんです。
「認知症の本人が生きている世界、見えている景色が脳のトラブルによって、周りから全くみえない。この世界の乖離が認知症に対する偏見を作り上げている」
認知症のある人を世界を、誰でもわかりやすく、身近に感じて欲しい。
そんな思いでまとめたのが、旅行ガイドのような「認知症世界の歩き方」です。
「気持ちの良いはずの露天風呂。しかし、突然ビリビリ感じたり、極端に熱く感じたり、冷たく感じたり。やがて、風呂に入ることがイヤになってしまう、まるで七変化温泉です」
2050年度には高齢者の7人に1人が認知症に?
札幌市で、認知症と診断された65歳以上の人数は約6万人。
高齢者の「9人に1人」の割合で、2050年度には「7人に1人」に増えると予想されます。
今回の講演会に参加した人からはこんな声が。
「本人がこうしなきゃと思っているのを無理やり止められたりして、止めようとした人を殴ろうとする場面が、どうしてそういう行動をとるのかすごくヒントになった」
「祖父が風呂に入らないと言って大変と施設から何度も電話が来て、祖父はもしかしたら、風呂に足を入れる時にヌルヌルが気持ち悪かったのかなとか」
予防方法に科学的根拠がない…手探りの認知症
イベントに協力したファミリークリニックさっぽろ山鼻の松田諭院長は「周りのサポート」の重要性について話します。
「1人で生きていけないので、周りのサポートがどれだけできるかが大きくかかわる。地域全体で認知症の方々を見ていくことが必要」
作家の筧祐介さんは「認知症の一番の原因は、予防できるという科学的エビデンスがほとんどないこと」としたうえでこう話します。
「誰にでもなりうるもので、そして年齢を重ねるとともに、必ず誰もが脳の認知機能が落ちることによって生じる症状なので、誰でも直面する」
今までしっかりしていた身近な人が突然…。
戸惑いや否定が始まる認知症。
知らない世界を知ることで苦しかった日常を変えることができます。
連載「親の「終活」を考える」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年4月4日)の情報に基づきます。