ブレスト(ブレインストーミング)とは? 進め方やコツを解説
新規事業の立ち上げや日々の業務改善において、アイデアが求められる場面は多くあります。そんなときに役立つのが「ブレスト(ブレインストーミング)」です。
この記事では、ブレストの基本からメリット、効果的な進め方、よくある失敗例まで分かりやすく解説します。
ブレスト(ブレインストーミング)とは
ブレストとは、ブレインストーミング(brainstorming)の略で、複数人が自由に意見を出し合い、短時間で多くの創造的なアイデアを生み出す集団発想法です。アメリカの実業家アレックス・F・オズボーン氏によって提唱され、現在では多くの企業で活用されています。従来の会議とは異なり、批判や評価を行わず、参加者が自由にアイデアを発言できる環境を作ることが特徴です。ブレストは単なるアイデア出しではなく、組織の創造性を最大化し、イノベーションを生み出すための戦略的な手法として位置づけられています。
ブレストのメリット
ブレストを取り入れるメリットについて解説します。
多角的なアイデアが生まれる
異なるバックグラウンドのメンバーが集まると、個人では得られない多様な視点が生まれます。これにより視点の偏りを避け、多角的なアイデアを自由な発想で出し合うことで、問題解決策を見つけることができます。ブレストを開催することで、組織のイノベーションを促進でき、限られた時間で多くのアイデアを生み出せます。一人では限界のある発想も、複数の視点が組み合わさることで予想外の化学反応が生じます。
チームの結束力を強化できる
ブレストは、アイデアが発想しやすくなるだけでなく、フラットな意見交換を通じてそれぞれの思考や価値観を共有できるため、心理的安全性が高まり、相互理解が深まることにも期待されます。チームでの意見交換により、一体感や結束力も向上し、ブレスト後もメンバー同士のコミュニケーションが円滑になる傾向にあります。また、普段は発言しにくいメンバーも、ブレストの自由な雰囲気の中で積極的に参加しやすくなります。
ブレストの4原則
ここでは、ブレストを成功させるための「4原則」について解説します。
1.アイデアは質より量を重視する
ブレストでは、質より量を重視することが重要です。アイデアを多く出すことで、組み合わせパターンが増え、新しい発想が生まれやすくなります。目的やテーマに合っているアイデアを出すことは必要ですが、最初から斬新さや質を求める必要はありません。
2.自由なアイデアを歓迎する
実現可能かを考慮する前に、創造性のあるアイデアを積極的に出すことが大切です。楽しみながらアイデアを出し合うことで、活気のあるブレストが実現します。アイデアが出尽くした段階でグルーピングするフェーズもあるため、安心してアイデアを発散するとよいでしょう。
3.アイデアを否定・批判をしない
ブレストは判断や結論を出す場ではないので、相手の発言を否定したり、批判したりしないことが大切です。意見を肯定することで発言がしやすい雰囲気となり、結果的に発言量の多いブレストが実現します。
4.アイデア同士を組み合わせる
ブレストは全く違うアイデアを出さなければいけないと意識しすぎる必要はありません。ほかの人のアイデアを肯定し、さらに組み合わせや改良、発展させることもあります。組み合わせることで元のアイデアをよりブラッシュアップすることができ、アイデアを肯定することで、アイデアを出した人もさらに発言しやすくなります。
効果的なブレストの進め方
ブレストのメリットや効果を最大限に引き出すためには、適切に進めることが大切です。以下では、効果的なブレストの進め方について解説します。
1. 事前準備
テーマや時間を明確化
最初に、テーマや目的を明確化します。「10代向けモバイルアプリ市場で競争力を高めるための、直感的で覚えやすい新規サービス名を考える」など、具体性のあるゴールを示すことが重要です。ブレストを行う時間も設定し、参加者が集中できる環境を整えます。
メンバー選定
メンバーを選定する際には、専門家だけでなく性別・年齢・部署・ポジションなどに多様性を持たせるなど、異なる視点を持つメンバーを含めることが効果的です。
役割の設定
メンバーを選定したら、参加者の中から以下の役割を決めます。
・進行役(ファシリテーター):方向性が逸脱していないか確認し、意見を言いやすい雰囲気作りをする
・書記(セクレタリー):アイデアの組み合わせを促進する役割を持つ(進行役が兼務も可能)
ルールの共有
開始前に4原則とタイムスケジュールを周知し、安心して発言できる環境を整えることが成功の鍵となります。
2. ブレストの開始
4原則を守りながら、新しいアイデアが出なくなるまで続けましょう。参加者が見える位置にホワイトボードや付箋、カード、オンラインホワイトボードなどを設置し、全てのアイデアをリアルタイムで書き留め、アイデアを「見える化」することが重要です。アイデア出しが終了したり、発言が減ったりしたタイミングで似たアイデアをグルーピングし、次のステップへ進みます。
3. アイデアの実行計画を策定
ブレストで出たアイデアを整理したのち、議論や投票を通じて絞り込みます。結論を出す際には、参加者の合意を得ると納得感が高まり、そのあとの実行がスムーズになります。実行する内容が決まったら、実際にアクションを起こすために実行計画を策定し、責任者や期限を明確にすることで、ブレストを単なるアイデア出しで終わらせないようにします。
よくある失敗例と対策
ここではブレストに関するよくある失敗例と対策について解説します。
失敗例1:上司や有力者の意見に流される
原因: 影響力の強い人がブレストに参加していることで権威バイアスが働き、意見が出にくくなっている。
対策: 発言順をランダムにする、アイデアを匿名で収集するといった権威性を排除した進行を行うなど、発言を引き出すような工夫や雰囲気作りを行う必要があります。また、進行役が積極的にメンバーの発言を促すことも効果的です。
失敗例2:アイデアがまとまらず結論が出ない
原因: タイムラインが不明確で、参加者の集中力が途切れている。または、長時間の開催によって集中力が途切れ、アイデアが出にくくなっている。
対策: アイデアを無理に収束させたり、結論を急いで出したりする必要はありません。セッションと評価を別日に分けるか、発散が終了した時点で一旦切り上げ、別途評価の場を設定するとよいでしょう。また、アイスブレイクや環境を変えるのも効果的な対策となります。
ブレストで役立つフレームワーク
ブレストで生まれたアイデアを効果的に整理・発展させるためには、適切なフレームワークを活用することが有効です。ここでは、実践的なフレームワークの一例として、3つの手法を詳しく解説します。
KJ法
KJ法は、ブレストで出た断片的なアイデアを体系的に整理する情報整理手法です。これにより、関連性の薄いアイデアも重要な要素として活用でき、チーム全体でアイデアを共有しやすくなります。
手順
①ブレストで出たアイデアをカードに書き出します。誰が見ても理解できる、具体的で簡潔な内容にすることが重要です。
②類似するアイデアをグループ化し、見出しを付けます。無理にグループ化せず、単独カードも残すことがポイントです。
③グループ間の関係性を線や矢印で表現します。情報の重要度や関連性を示すことで、アイデア同士のつながりが見えてきます。
④図解化した内容を文章として整理し、新たな発見や課題を明文化します。
マインドマップ
マインドマップは、中心テーマから放射状にアイデアを展開し、創造的思考を促進する手法です。5W1H(When/Where/Who/What/Why/How)を基準にブランチを展開することで、情報整理が容易になり、視覚的構造により情報が記憶に残りやすくなります。
手順
①紙の中央に主要課題を大きく記載し、中心テーマを明確に設定します。
②中心から太い線で大カテゴリを伸ばし、主要ブランチを展開します。
③詳細アイデアを細い線で展開し、サブブランチを追加していきます。
SCAMPER法
SCAMPER法は、7つの質問を用いて既存のアイデアを多角的に発展させる手法です。短時間で多くのアイデアを生み出し、業界や職種を問わず活用できる汎用性が特徴です。
7つの質問と手順 1.Substitute:置き換えられるか(例:材料・プロセス・場所を変える) 2.Combine:組み合わせられるか(例:異なる機能・サービスを統合する) 3.Adopt:応用できるか(例:他業界の成功手法を取り入れる) 4.Modify:修正できる点はあるか(例:サイズを変える) 5.Put to other uses:ほかの用途に使用できないか(例:ターゲットを変える) 6.Eliminate:取り除けるものはないか(例:不要な機能を省く) 7.Reverse・Rearrange:再構成できるものはあるか(順序を逆にする)
手順としては、まずテーマを明確にし、質問リストを準備します。次に質問に答えながら発想を進め、最後にアイデアを整理して実現可能性を検討します。
まとめ
ブレストは、自由な発想を最大化するために有効な手法であり、さまざまな職場やプロジェクトで活用できます。目的の設定とルールづくり、そしてファシリテーションのポイントを押さえれば会議の質を大幅に向上させることができます。
ぜひこの記事を参考にしてブレストを実践し、組織と自身の成長を促進させてみてください。継続的に実践することで、より効果的なブレストを開催できるようになり、ビジネスパーソンとしてのスキルアップにもつながるでしょう。
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