“仮面夫婦の親”に育てられた子どもたちの現実 #6「親の電話を無視していたら」
互いに関心も愛情も向け合わず、形だけの夫婦で生活を続けるのが仮面夫婦。
自分たちはそれで納得しているかもしれないけれど、一方で置き去りにされるのが子どもたちの状態です。
生きる環境を選べない子どもにとって、両親の仲が冷めきっているせいで受ける影響は良い面も悪い面も大きく出てきます。
「親が仮面夫婦」であることは子にどんな現実を強いるのか、ご紹介します。
「親について記憶しているなかで苦しいのは、僕が小さい頃に目の前で喧嘩をしていたふたりの姿で、僕を後ろにかばうようにして、母が父に向かって必死に何かを言っていました。
すごく怖かったから覚えているのだろうと思いますが、そのほかでは残業が続いて晩ごはんがお弁当ばかりになったときに、『こんなものをいつまで食わせる気だ』と母に大声を上げる父の姿です。
そんな父を母は無視することが多くて、父がリビングにいるときは寝室にこもるので、僕もそこで母と遊んでいましたね。
一人っ子なので母を独占できるのはよかったと今は思っていますが、父はいつもとっつきにくい感じで苦手で、会話はできるけど、ふたりで遊んだような記憶はほとんどありません。3人でいても話が弾むようなことは滅多になく、大きくなってからは僕も自分の部屋から出なくなりました。
休日に母はひとりで買い物に行くようになり、そのまま夕方まで戻らないこともよくあって、父は家にいるけど何をしているか知らないし、昼間はひとりでカップラーメンを食べていました。
友達の家族団らんの話なんかを聞くと羨ましいなと思うけど、僕のことも放置し始めた母のことを考えると絶対に叶わないなとわかるし、虚しくなりましたね」
「高校を卒業してすぐ就職して、ひとり暮らしを始めてやっと自由になれたと思いました。
実家に帰ることはほとんどなくて、母からの着信を無視していたら振り込みが止まり、それでやっと電話をかけて話す感じで、そういうのも何だか支配を感じてストレスでしたね。
僕が家を出てから父と母がどうしているのか知らないし、興味もなかったのですが、いつの間にか母が自分の実家で暮らすようになりました。今もふたりは別居しています。
自分は仕事をして生活ができているので、正直に言えば両親のことはどうでもよくて、お盆も年末年始も電話だけで済ませて自由にしています。
距離は離れていく一方だと思いますが、今さらどうしようもないですよね」(男性/20代/営業)
親が仮面夫婦の場合、子どもに手がかからなくなると放置のように関心を捨てる親もいます。
一人っ子だと家のなかでは自分だけを優先して過ごすことができるので、意識しない限り親との距離は縮まらないのは、よくあることです。
仮面夫婦から始まる親子の断絶は、子どもが成人してさらに距離ができることが多く、自分の力で生きていくことの重要さを考えさせられます。
(ハピママ*/弘田 香)