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フレッシュなパワーみなぎるキャスト陣による、フレンチ・ロック・ミュージカル! 『1789 -バスティーユの恋人たち-』ゲネプロレポート(手島章斗・奥田いろは(乃木坂46)出演回)

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ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』ゲネプロの様子

2025年4月8日(火)に東京・明治座で開幕した、ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』。4月9日(水)にはロナン役・手島章斗、オランプ役・奥田いろは(乃木坂46)らのゲネプロ(総通し舞台稽古)が行われた。
本作はドーヴ・アチアとアルベール・コーエンのプロデュースによって2012年にフランスで誕生したフレンチ・ロック・ミュージカル。日本では小池修一郎の潤色/演出により、15年に宝塚歌劇団月組で初演され、翌16年に東宝版が帝国劇場で上演された。18年に東宝版の再演、23年に宝塚版の再演があり、今回は東宝版としては3度目の上演となる。
この記事では、手島章斗・奥田いろは出演回のゲネプロの様子を写真とともにレポートする。なお、シャルロット役は徳永みな、ルイ・ジョセフ役は古正悠希也だった。

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』ゲネプロの様子

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』ゲネプロの様子

物語の舞台は、民衆が貧困にあえぐ中、貴族は贅沢に溺れる18世紀末のフランス。農夫ロナン(岡宮来夢/手島章斗※Wキャスト)は父を貴族に殺害されたことをきっかけに、パリへ飛び出し、革命派に身を投じる。そこで、デムーラン(内海啓貴)、ロベスピエール(伊藤あさひ)、ダントン(伊勢大貴)ら熱き仲間を得て、新しい時代に希望を燃やしていた。
一方、宮廷に仕える心優しき侍女・オランプ(星風まどか/奥田いろは(乃木坂46)※Wキャスト)は、マリー・アントワネット(凪七瑠海)とフェルゼン伯(小南光司)の逢瀬を手引きしてパリにやってくる。マリー・アントワネットをつけ狙う一味との騒動に巻き込まれたロナンはオランプと出逢う。決して出逢うはずのなかった二人は強く惹かれあうが、対立する身分が壁となる。
そして、愛に悩む彼らの心を揺さぶるかのように革命の足音が近づいてくる。1789年7月14日、バスティーユ牢獄襲撃。遂に革命の火蓋が切って落とされる——というストーリーだ。

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』ゲネプロの様子

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』ゲネプロの様子

今回の公演で注目すべきことの一つは、東宝版としては7年ぶりの上演ということで、キャストが一新されたことであろう。
特にロナン役の手島章斗は、今回が初めてのグランドミュージカル出演であり、オランプ役の奥田いろは(乃木坂46)は、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』(2023)のジュリエット役でのミュージカルデビューが記憶に新しいが、弱冠19歳という若さである。2.5次元舞台で存在感を放ってきた伊勢大貴、高橋健介、小南光司らの起用のほか、東宝版初演・再演で革命派のデムーラン役だった渡辺大輔が、今回は軍を率いる貴族将校のラザール・ペイロール役というある意味衝撃的な役替わりに象徴されるように(ちなみにマリー・アントワネット役の凪七瑠海は15年宝塚版でデムーランを演じており、それも“衝撃”ではある)、全体的にフレッシュなパワーみなぎるカンパニーとなった。

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』ゲネプロの様子

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』ゲネプロの様子

ロナン役の手島章斗は初めてのグランドミュージカルとは思えない健闘ぶり。アーティストとして活動してきた手島の武器は歌だろうが、理不尽に父を殺害されて復讐に燃えるロナンも、志は同じでも身分の差を思い知るロナンも、オランプに心奪われるロナンも、いい意味で土の香りがするというか、飾り気のないまっすぐさが強く印象に残った。広島県出身の手島にとって、このミュージカルの「自由・平等・博愛」というテーマは、自身が大切に思っていることだそう。その思いの強さも役にうまく投影できているのかもしれない。

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』ゲネプロの様子

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』ゲネプロの様子

一方、病弱な王太子ルイ・ジョセフの養育係であるオランプ役の奥田いろは(乃木坂46)は、いかにもヒロインである。ゲネプロでは声量も含めてやや控えめな印象だったが、その控えめな感じが逆に可憐さを際立たせた。マリー・アントワネットへの忠誠心があるし、ロナンとの許されない恋に葛藤もするわけだが、それはオランプが芯の強い女性だったからというよりも、まだ若い少女で世間を知らず、時代や政治に翻弄されただけなのかと思うほどに。奥田がそこまで計算していたかは分からないが、いずれにせよ、このヒロイン性は一見の価値があると思う。

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』ゲネプロの様子

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』ゲネプロの様子

東宝版の『1789 -バスティーユの恋人たち-』は初演・再演と続投キャストが多かったため、そのイメージを強く持つ観客も多かろう。過去上演回やWキャストの芝居を頭で思い浮かべたり、比較したりするのも、これまた演劇ならではの面白さだと思うが、今回、個人的に心惹かれたのは、ルイ16世の弟であるシャルル・アルトワ役の高橋健介。東宝版初演・再演ではあの吉野圭吾が演じた役どころだが、高橋のアルトワも嫌味たっぷり、色気たっぷりで実に好演だった。アルトワの「私は神だ」はなかなかの難曲だと思うが、立派に歌いこなしていた。

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』ゲネプロの様子

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ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』ゲネプロの様子

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我々が好む“革命もの”“悲恋もの”という枠に入るであろう本作。改めての見どころを考えると、民衆の立場に立って作られた作品ということもさることながら、やはり鼓動を感じる音楽とショーアップされたステージングが最大の魅力だと思う。
「誰の為に踊らされているのか」「武器をとれ」「サ・イラ・モナムール」「許されぬ愛」など、一度聞いたら頭を離れない楽曲を軸に、細部までこだわり抜かれた衣裳、クランプというダンスで感情を表現したり一糸乱れぬ群舞で場を盛り上げたりと終始激しく派手なダンスパフォーマンスやアクロバット、舞台奥から客席に向かって開かれる跳ね橋のような舞台機構、客席最前列や花道をふんだんに使った演出……。どこを切り取ってもフレンチ・ミュージカルらしい格好良さがあり、気づけば観客もシトワイヤン(市民)として、18世紀末のフランス革命の世界に入り込んでしまうのだ。

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』ゲネプロの様子

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未見の人はぜひこの機会に本作を見てみてほしいし、過去に観劇したことがある方もぜひまた“沼って”みては。夜食にパンを……というわけにはいかないが、明治座で開演前や幕間にお弁当を食べたり、レモネードにシロップを加えたフランスで定番の飲み物というディアボロを飲んだり楽しむのもいい。東京公演は4月29日まで。お見逃しなく!

取材・文・撮影=五月女菜穂

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