キリン、議事録10年分を学習した「AI役員」を経営会議に参加 生産性向上と意思決定改革へ
キリンホールディングス(東京都中野区)は8月4日、経営層の意思決定を支えるAI役員「CoreMate(コアメイト)」を、2025年7月以降のキリングループ経営戦略会議に本格導入すると発表した。同社が掲げる長期ビジョン「KIRIN Digital Vision 2035(KDV2035)」に基づく取り組みで、多様な視点を取り入れ、イノベーションを通じた価値創造の加速を目指す。
AI役員「CoreMate」とは
「CoreMate」は、過去10年分の取締役会およびグループ経営戦略会議の議事録や社内資料に加え、外部の最新情報を学習させることで開発されたAI。独自に構築した12人分のAI人格が仮想的に議論し、抽出された論点や意見を経営戦略会議で経営層に提示する仕組みだ。
これにより、経営判断に多様な専門性と意見を取り込み、意思決定の質とスピードを高めることを狙う。本格導入後は、年間30回以上のグループ経営戦略会議で活用される予定。
導入の目的と背景
キリングループは、KDV2035の下で「人がやらなくてよい仕事をゼロにする(生産性向上)」と「人と共に価値を生み出す仕事を加速させる(価値創造)」を2本柱に、デジタル基盤を強化している。
「CoreMate」の導入は、このDX戦略の一環として、経営判断の質とスピードをさらに高めることが目的。これにより、食・ヘルスサイエンス・医の領域での価値創造を飛躍的に高め、世界のCSV(Creating Shared Value)先進企業となることを目指す。
実際の活用方法
「CoreMate」は、会議に付議予定の起案者が事前にAIと内容を壁打ちすることで、多様な視点を早期に取り込み、資料作成や与件整理の精度を高める。これにより、会議準備の効率化や会議時間の短縮が見込まれるほか、経営層と担当者が価値創造活動に専念できる時間を創出できる。
さらに、AI人格が外部知見を継続的にアップデートすることで、経営会議での議論の質を高め、迅速な意思決定を促進。変化の激しい経営環境に対応したイノベーション創出を後押しする。
今後の展望と課題
初期導入はホールディングスのグループ経営戦略会議から開始し、将来的には取締役会や事業会社の経営戦略会議にも順次展開する予定だ。また、会議参加者同士の議論内容をリアルタイムで可視化する機能や、対話型の「CoreMate」開発などの機能拡張も検討しており、グループ全体の経営判断スピードをさらに向上させる狙いがある。
キリンホールディングスの発表の詳細は、同社公式サイトで確認できる。