真っ赤に編み上げられた空間、大量の窓・鍵・靴... 大阪万博にも展示の美術家、塩田千春の圧倒的世界観
塩田千春というアーティストをご存じだろうか。
いま、世界中で注目を集めている美術家である。
2025年4月4日現在、チェコ、トルコ、中国3か所、メキシコ2か所で展覧会を開催中で、今後も複数の個展等を実施予定。塩田氏が生み出す圧倒的な規模のインスタレーションは多くの鑑賞者に衝撃を与え、2019年に東京・六本木の「森美術館」で個展を開催した際には、SNSをきっかけに多くの若い世代が訪れたという。
そんな塩田氏は2024年、国際交流基金が実施する「国際交流基金賞」を受賞。3月29日、受賞記念講演会として、森美術館館長・片岡真実氏との対談を行った。
大量の糸で空間を編み上げるインスタレーションで人気の塩田氏は、大阪府出身でドイツ・ベルリン在住。穏やかな声で話し、「ダジャレ好き」というお茶目な一面も見せる。
そんな彼女の日本でのデビューは、2001年の横浜トリエンナーレに出品した『皮膚からの記憶-2001-』だった。
500メートルもの布を使って塗った超巨大ドレス5着を泥にまみれさせて天井から吊るし、上からシャワーで水をかけ、泥を流していくというインスタレーション。対談での片岡館長によると、日本の美術関係者は当時まだ日本で無名だった塩田氏の存在に騒然としたという。
対談では、塩田氏がこれまでに手掛けた作品を紹介しながら、彼女のこれまでの作家人生を振り返った。
誰かの持ち物だった2000足の靴を赤い糸で放射状につないだ作品。ベルリンの壁崩壊後の旧東ベルリンで、取り壊しや改築によって不要となった建物の窓を2000枚も集めて作った作品。世界中の人から募って集まった15万本以上もの鍵を古い船の上に赤い糸で吊るした作品。ベルリンの蚤の市で見つけた古いスーツケースから始まった、約430個のスーツケースを赤い糸で天井からつるした作品。
塩田氏の作品には、大量のモノが登場することが多い。自分の中にある空虚を埋めるために、量が必要なのだという。量があればあるほど、自分を表現できると感じていると語る。
また、その大量のモノには「誰かの記憶」が詰まっている。「誰か」はその場所にはいないけれども、確かにその「存在」を感じる。「不在の中の存在」が塩田氏のテーマだ。
2019年に森美術館で行われた個展「塩田千春展:魂がふるえる」は、同館の歴代入場記録第2位を記録した。会期終了後は釜山、台北、上海、ブリスベン、ジャカルタ、深圳、パリでも展示が行われ、今後も巡回が続く。多くの会場で入場者数記録を塗り替えるような大盛況を博しているという。
「糸によって、いろんな繋ぎ目によって、人がつながるということは、国境や民族、文化を超えて、誰にでも伝わるものすごく強いメッセージ。今、これだけ世界が崩壊している中で、人々が『つながり』を求めているんだなということを感じた」(片岡館長)
塩田氏の手がけたインスタレーションは、4月13日に開幕するEXPO2025大阪・関西万博でも体験できる。
万博会場中央の「静けさの森」の一角にある、屋根も壁もないシグネチャーパビリオン「Better Co-Being」。その中の小高い丘に、塩田氏らしい赤い糸が張り巡らされた空間が広がるという。