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「ママ、パパから殴られていたんだ」子ども3人とシェルターへ…証言から考える支援

Sitakke

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川崎市でストーカー被害を訴えていた女性が殺害されるなど、DVやストーカーをめぐる事件は全国で後を絶ちません。
北海道内におけるDV被害者の生の証言から、支援のあり方を考えます。

連載「じぶんごとニュース」

「ママ、パパから殴られていたんだ」

北海道内にあるマンションの一室。
DV被害を受けている人を一時的に保護する施設、シェルターです。

咲さんは今から4年前、3人の子どもを連れて、このシェルターに逃げ込みました。

「子どもたちと4人になったときに『ママ…実は、パパから殴られていたんだ』ということを言って。子どもの1人は『知ってた』と、もう1人は『転校になってもいいよ』って。そしてもう1人は『10何年間も、ママ独りで我慢して、なんで隠していたんだ』って怒って泣いたんですよね」

元夫から10年以上にわたって受けてきた暴力。
咲さんは、外で働くことも禁じられ、経済的にも、精神的にも支配されていました。

「馬乗りになって顔を拳で何発も、ずっと殴られ続ける。財布と携帯電話を、風呂にはってあったお湯に沈められて『お前、逃げられると思うなよ』って言われたことがあって…」

「何かを選んで、決めていく権利がないんだっていうことへの絶望のほうが、顔や身体への痛みよりも、かなり苦しくて辛いものだった」## 相談しても「自業自得」と言われると思っていた

咲さんは、ネグレクトの家庭で育ち、親にも頼れませんでした。
たとえ相談しても、自業自得と言われるのではないかと考えたと話します。

そうした中、半信半疑で頼った民間の支援団体で、思いもよらぬ言葉をかけられました。

「気持ちの上では臨戦態勢で支援団体の事務所に入ったんですけれど、第一声、言われたのは『よく来たね、長いことがんばったね』だったんですよね。この人たちに頼ってもいいかもしれないって…」

咲さんがシェルターにいたのは、生活を整えるまでの1か月間です。
この間に、離婚の申し立て、生活保護の申請、子どもの転校、新居探しなど、その度にさまざまな窓口に足を運び、手続きが必要でした。

咲さんは、被害経験を糧にDV被害にあった女性の支援者として現在活動しています。

「家も友達も住み慣れた地域も、すべて手放さなければいけないのは被害者。夫が乗っていたような車を見つけると、走って逃げたくなる衝動に駆られて…。結局は許されて、今まで通りの生活に戻っていく人があまりに多すぎる。この現実に腹が立つ」

「よってたかって」守る環境づくり

精神的に追い込まれているDV被害者にとって、大切なことは“心から安心できる環境”を整えることです。

長年、DV被害者の支援に取り組む『女のスペース・おん』の山崎菊乃代表も、かつては子どもを連れて、シェルターに逃げ込んだ1人でした。

「彼女が、彼のところに戻らないような安心した状況を、周りでよってたかって作り出す。それは私たち民間団体だけじゃなくて、行政、司法いろんな関係機関が被害者を守る」と話します。

この日、『女のスペース・おん』の事務所を訪ねてきたのは、父親のDVなどから逃げるため、4月にシェルターへと入居した、花さんです。

「私はそれこそ、小学生のときにまだ“モラハラ”という言葉がなくて…」と話す花さん。

山崎菊乃代表が「最近だよね、モラハラという言葉が知られるようになったのは」と答えると、「“不機嫌ハラスメント”ってまさに、父親を表しているなと思って」と花さんも続けます。

被害者たちの課題はひとつじゃないから

花さんは、うつ病となった母親の介護をするヤングケアラーでもあり、自身も摂食障害などに苦しみました。
いまも家族との関係に悩みはある中、仕事をしながら一人暮らしをしています。

山崎菊乃代表は「一人で抱えないでね、一緒に共有しよう」と話します。

DVだけではなく、虐待を受けた経験や精神疾患、若年妊娠など、さまざまに困難を抱える女性たち。
その困難に即した支援の在り方が模索されています。

DV被害者が外部に被害を訴えにくい背景には、幼いころ虐待を受けた経験や精神疾患、貧困などの課題が重なっているといいます。

DV被害者の支援にあたる団体『女のスペース・おん』では、厚労省や道、札幌市など行政を巻き込んでシンポジウムを開き、被害者が1か所(ワンストップ)で、さまざまな行政の窓口や支援団体につながり、長い支援を受けられる仕組みが必要だと訴えています。

民間だけでなく行政も、シェルターを運営したり、ホットラインなどの窓口を設けたりしています。
民間のみ、行政単独といったものではなく、それぞれが連携し、互いに強みのある支援を進めていくことが、DV被害者に手を差し伸べるためには必要です。

DVをめぐる課題は複合的であることから、その解決は一筋縄ではいきません。だからこそ、支援の在り方は個人個人のケースにあった切れ目のない対応が求められるということです。

連載「じぶんごとニュース」

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年9月29日)の情報に基づきます。

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