「Z級ホラー」なのに超泣ける?ドロっとサイケ展開&予想を裏切る衝撃ラスト『アイニージューデッド!』
パンクでドラッギーな奇天烈ホラコメ!…の制作に挑む物語?
「テンションが斜め上に振り切った映画を探してる」「とにかく奇妙な映画が観たい!」そんな人に朗報。『悪魔の毒々モンスター』シリーズで知られる<トロマ映画>の総帥、ロイド・カウフマンのもとでアシスタントを務めた新鋭監督が放つ超・怪作『アイニージューデッド!』が4月18日(金)より公開される。
怪しげで騒々しいドラッグパーティーに参加した、冴えないパンク青年ドゥード。友人ブロックに誘われるまま、“おバカのグミ”と呼ばれる強力なドラッグを誤って許容量の2倍ぶん口にし、ぶっ飛んでしまう!
ハイになったドゥードは、パーティーで演奏をしていたバンドのギタリスト、パルに一目惚れ。彼女の連絡先を見事ゲットするも、その矢先にパーティーのことを嗅ぎつけた警察に逮捕されそうになる。
なんとか警察をかわしたドゥードだったが、自分の腹やハンバーガーが話し始めるなど、ドラッグによる幻覚症状は治まらない。一人で人気のない場所へ向かい孤独を嘆くドゥードの目に、気味の悪い、ベタついた生き物が見えるようになり……?
――という映画の撮影に挑む、監督と、スタッフたち。予算も無いなか、初めてメガホンを取る監督がギリギリの状況で制作を進めるが、様々な困難が生じ、その影響は作品にも反映されていく。
びっくりするほど面白い!「Z級」とナメてかかるべからず
トロマ映画のファンならば、同スタジオ制作の「『テラー・ファーマー』(1999年)にインスパイアされた」という謳い文句(※カウフマン御大いわく)に期待を覚えるだろう。『アイニージューデッド!』はあの作品ほどエログロ全開ではないがサイケ度では大幅に上回っていて、冒頭からトロマ印のホラーコメディとして見事なZ級ぶりを披露。どんな奇妙なことが起こるのか、秒でワクワクさせてくれる。
映像もホームビデオのような質感なのだが、とはいえウィットな会話パートが驚くほどおもしろく、コンプレックスを抱えた主人公ドゥード(ボブ・ディランとロバート・スミスを足して岡山天音で割ったような見た目)のほか実在感のある登場人物たちにどんどん興味が湧いてくるだろう。超低予算ながら物語にはしっかり強度があり、いわゆる『カメ止め!』的な“映画製作を描いた映画”の構成(劇中映画パートと現実パートで画角を変えている)でも観客をぐいぐい惹き込んでいく。
「創作の苦しみ」を味わった人は泣いちゃう? 意外な展開に驚き&涙
本作は観ているうちに様々な映画を思い出す。『血を吸うカメラ』(1960年)を想起する人もいれば、『マックス・ヘッドルーム』のポップさをミックスしたデヴィッド・クローネンバーグ作品、などと感じる人もいるかもしれない。また、ドゥードの前に現れる謎のクリーチャーはハンドパペットのようなチームさで、ドゥードが言うように『クリッター』(1986年)や『グーリーズ』(1984年)を彷彿とさせるし、『デッドリー・スポーン』(1983年)や『バスケットケース』(1982年)のようなキャッチーなグロさがイイ。
メガホンをとったのは、本作が初の監督作だというロコ・ゼベンバーゲン。いまや超売れっ子監督となったジェームズ・ガンと同じくカウフマンを師を持つ=後輩にあたるわけだが、映画製作に苦悩する監督役を自ら演じ(若い頃のスピルバーグ似)、サイケデリックなホラー映像と内省的なストーリーを両立させてみせた。なお彼は映画『ザ・ゲスイドウズ』にドラマー役で出演しており、日本との縁も深い。
中盤以降の狂気をはらんだ緊張感はすさまじく、しかし苦しい創作に挑む人ならば涙を禁じ得ないであろう、何とも言えないほろ苦い後味を残す。Z級ホラーと思って軽い気持ちで劇場に観に行っても、驚くほどの満足感を与えてくれるはずだ。
『アイニージューデッド!』は4月18日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開