ゴールデンウィークに観たいアニメ「宇宙戦艦ヤマト」1974年放送!全てはココから始まった
従来のアニメとは異なる、緻密に練られた世界観
テレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト』の放送が始まったのは1974年。男の子向けのアニメとしては『ゲッターロボ』『グレートマジンガー』『破裏拳ポリマー』が放送されていた年だ。ヤマトがこれらとは一線を画していたのは、段違いとも呼べる緻密な設定だ。地球を救うべくイスカンダルから技術提供された波動エンジン。それはワープ航法によって光の速さを超えた恒星間航行を可能とした。イスカンダルまでの距離が14万8,000光年という具体的な数字もリアルさを感じさせるものであったし、また毎回テロップ表示される “地球滅亡まであと〇日” というカウントダウンも緊迫感にあふれるものだった。
もうひとつ従来の作品と異なる点を挙げれば、絶対的な主人公が大活躍するのではなく、群像劇であるという点だ。古代進は登場キャラの1人に過ぎず、敵をやっつける特殊な能力を持っているわけではない。また、いわば必殺技にあたる “波動砲” も特異な存在だ。その威力はすさまじく、第5話で初めて披露された際には、木星に浮かぶ浮遊大陸の敵基地を撃つだけのはずが、大陸自体を消滅させてしまった。ヒーローが繰り出す必殺ビームのように毎週使われるのではなく、やむを得ぬ時に使う最後の手段である。
企画書に記された、根底に流れるテーマは “愛”
企画・原案・プロデューサーとして番組を立ち上げた、西崎義展を中心としたスタッフが書いた企画書には次のような一文がある。
「この作品は二千XX年、地球上の全人類が滅亡しようとするときに、決然と立った少年少女の活躍を物語るSF冒険アクションである。そして彼らの行動を通して描きたいのは、人間とは『愛』だという、このひとことなのだ」
その言葉通り、最終回にほど近い24話でガミラスに勝利した古代は、こんな言葉を口にする。
「地球の人もガミラスの人も幸せに生きたいという気持ちに変わりはない。なのに我々は戦ってしまった。我々がしなくてはならないのは戦うことじゃない、愛し合うことだった。勝利か… くそでもくらえ!」
地球人類だけでなく、敵となった人々をも愛するべきだったという、これこそがヤマト作品の根底に流れるテーマではないだろうか。“愛” というキーワードは、その後に続く作品でも、常に描かれ続けていくこととなる。
再放送から火が付き、署名運動を経て映画化
良くも悪くも子ども向け作品という枠に納まらない物語であったためか、初回放送では苦戦した。39話の予定が26話で打ち切りとなってしまったのは有名な話だ。裏番組が、当時大人気を誇った『アルプスの少女ハイジ』であったこともその要因とされる。
しかし、再放送によって、徐々にその人気に火が付くこととなる。きっかけは、それまでの常識に照らし合わせれば “テレビまんが” はとうに卒業したであろう、高校生や大学生だった。 “あれをもう一度やってほしい” というハガキがテレビ局に数多く届いたことで、すぐに再放送されたのだ。
これを機に熱いファンたちによる、ヤマト関連のイラストや小説などの二次創作を行う活動が全国規模で湧きあがった。その動きはヤマト映画化の署名運動へと発展し、映画製作が実現。その公開初日には、徹夜組を含む2万人以上が行列を作ったとされ、観客動員数は累計400万人、興行収入43億円の大ヒット。当時、全国のヤマトファンクラブは800団体以上、総会員数は15万人を超えたという。従来の “テレビまんが” ではなく “アニメ” という言葉を定着させたのも、『宇宙戦艦ヤマト』がきっかけだというのが定説だ。
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作品を飾る名曲の数々の中でも、オープニング曲は屈指の出来栄え
オープニング動画もまた、壮大な物語の開始を告げるにふさわしいものとなっている。沈船に擬態して岩の中に眠るヤマトが、土塊を割って浮上。赤錆びた地球を後に、宇宙へと旅立つ。巨大戦艦の質感を、手書きで見事に表現した。作詞:阿久悠、作曲・編曲:宮川泰の豪華布陣によるもので、ささきいさおの声に勇ましい男性コーラスと透き通る女性の声が重なる名曲だ。ちなみにエンディング曲『真っ赤なスカーフ』の作詞・作曲・歌はオープニング曲と同じで、宮川泰の葬儀では、遺言により葬送の曲として使われた。
戦艦が宇宙を旅するという奇想天外なストーリー。松本零士の手による宇宙戦艦の造形美とキャラクターの魅力。そして血沸き肉躍る主題歌をはじめとする、美しい音楽。この強固な3本柱によって、『宇宙戦艦ヤマト』は唯一無二の作品となった。当時の制作陣には富野喜幸(現:由悠季)、安彦良和ら、そうそうたる顔ぶれが制作スタッフとして参加しており、またヤマトに影響を受けたことを公言する庵野秀明の存在など、後のアニメ界に与えた影響は計り知れない。実に50年以上前に放送された作品だが、その魅力は色あせることなく、人々の心に焼き付いて離れない。現在もこの第1作を始め、後に続くストーリーは全て、現在もリメイク版の製作が続けられている。