奈良の伝統ってどんなものがあるの?技術や作り手の想いに触れ、自分たちを表現してみよう!『ジュニア・コトクリエカレッジ(クラフト)』開催レポート
奈良の伝統ってどんなものがあるの?技術や作り手の想いに触れ、自分たちを表現してみよう!『ジュニア・コトクリエカレッジ(奈良のクラフト)』開催レポート
大和ハウスグループ「 みらい価値共創センター コトクリエ(主催、所在地:奈良市)」にて、小学4年生、5年生、6年生を対象にした「ジュニア・コトクリエカレッジ(奈良のクラフト)」が2025年5月25日(日)から2025年7月13日(日)の期間、全3回のプログラムで開催されました。
ジュニア・コトクリエカレッジは、子どもたちが「好き」と向き合い、未来を生き抜く力を新しい仲間と共に身につけてほしいという想いで企画しています。学校でもおうちでもない、居心地の良い「サードプレイス」のような環境で新しい仲間と出会い、学び合い、探究するプログラムです!
本記事では、全3回に渡って行われた「ジュニア・コトクリエカレッジ(奈良のクラフト)」での取り組みを紹介します。
【奈良のクラフト】1回目 デザインで涼しく感じる?奈良団扇透かし彫りを体験しよう!
5月25日(日)に開催された第1回目は、池田含香堂 奈良団扇職人 池田匡志さんをお迎えして、お話と『奈良団扇透かし彫り体験』が行なわれました。現在、奈良団扇を専門に製造しているのは、お越しいただいた奈良市「池田含香堂」の一軒のみ。子供たちにとっては特別な時間になったに違いありません。
まずは、奈良団扇の歴史と役割、奈良団扇がどのように地域の生活に溶け込んできたか、日本の伝統的な模様についてなど、奈良団扇の特徴を分かりやすく説明いただきました。ジュニア・コトクリエカレッジ2025の1回目の開催だったため、参加する子どもたちも最初は緊張した様子でしたが、先生のお話にも積極的に質問していました。
池田さんからの話を聞いたあとは、実際に、奈良団扇の神髄である『透かし彫り』の体験に移りました。まずはじめに、池田さんに用意いただいた『コトクリエ』と書かれた文字とロゴを透かし彫りする練習から。想像以上にカッターナイフで切り抜く作業が大変だったようですが、徐々に集中力も増し、「どのようにカッターを使うと上手く切れますか?」など積極的な質問も飛び交いました。
さらに、子どもたちが自分で考えるオリジナルデザインを追加して、下絵を作成させます。下絵が仕上がれば、自分のデザインをカッターナイフを使って丁寧に透かし彫りしていきます。カッターナイフの角度を知り、カッターナイフを動かすのではなく、和紙を動かしながら切っていくことをアドバイスいただきました。徐々にコツを掴んできた子供たち。先生の作品とを比べながら、創意工夫を凝らして自分だけの透かし彫りと向き合っていました。
休憩時間にも、池田さんへの質問が止まりません。市販の団扇は、すぐに壊れてしまったり、プラスチックでできていることから「しなり」が少なく、一度の仰ぎでの風量が少ないそうです。一方で、奈良団扇は、美しい見た目だけでなく、実用性も兼ね備えています。骨組みが一般的な団扇の倍以上の骨数があるため、よくしなり、良い風を起こすことができるようです。
透かし彫りが終わったら、仕上げ作業は池田さんにお任せ。一枚一枚お店で仕上げてくださることになりました。そして、その後、それぞれの班ごとに分かれて、今日1日のお話や体験を通して感じたこと、考えたことを「振り返りノート」にまとめました。そして、記入したら、隣の班の仲間たちがどのようなことを考えたのか、ノートを見てみて、シールやスタンプを押して考えを共有しました。さて、どのような団扇が完成するのでしょう・・・。
『ジュニア・コトクリエカレッジ』オリジナル奈良団扇が完成!
シンプルで可愛らしいものから、全体的に細かい透かしを施したものまで、色鮮やかで様々な奈良団扇が仕上がりました。子どもたちも自分だけの奈良団扇に感動していました。池田含香堂 奈良団扇職人 池田匡志さん、ありがとうございました。
【奈良のクラフト】2回目 奈良墨で作りだす!伝統と自由なアートの冒険
6月15日(日)に行われた第2回目は、錦光園 7代目 墨匠 長野睦さんにお越しいただきお話と『奈良の墨作り体験』を実施してもらいました。
当時、奈良だけで約40軒あったと言われる墨屋さんは、現在、全国でも10軒未満となり、日本の9割の墨はこの奈良県で作られているようです。今は、墨汁が主流のようで墨に触れる機会も少なくなってきたようです。この日も子供たちにとって伝統文化に触れる貴重な機会となりました。
まずはじめに、奈良墨の歴史や特徴、奈良墨の原料についてなど、長野さんから説明されました。その後、実際に生の墨の香り、やわらかさ、温かさを直接感じてもらいました。「思ったよりも柔らかい」「固い墨しか知らなかったから驚いた」という子供たちの声が上がるなど、生の墨に触る貴重な時間となりました。
次に、墨に直接触れ、墨に親しんでもらうことを目的に、子どもたちに『にぎり墨作り』を体験してもらいました。生の墨の「香り」や「やわらかさ」「温かさ」を感じ、自分の手の形や指紋が残る、世界に一つだけの墨が作れたことで、より伝統文化である奈良墨に対して興味を抱いたようでした。
描くデザインや文字について自由に話し合い、それぞれの班ごとに作品を作ってもらいました。ほとんどの子どもたちが、初めて使う墨や硯(すずり)にびっくり。子どもたちは、自分や仲間のアイディアを元に、好きな道具で作品を完成させていく過程で、モノトーンの限られた色彩の中にも多様な表現方法があることを学びました。
その後、どのような想いや考えで作品を作ったのか、それぞれの班の特徴を発表しました。水分の量によって、淡い茶色味を帯びて、にじみやツルツルとした光沢を持つ濃淡が個性をさらに引き立てます。奈良と言えば、大仏・鹿・柿など歴史や文化、名産品の絵が多く、子どもたちならではの柔軟な思考や発想が飛び出し、先生も関心していました。
最後に、今日1日で感じたことや発見したことを書き出し、仲間と共有する「振り返りノート」の時間。
「墨をにぎる感触は忘れられない」「香りが墨汁とは違って新しい発見ができた」など様々な意見が飛び交いました。奈良墨は単なる筆記用具にとどまらず、歴史、製法、品質、そして芸術性において、日本が誇るべき伝統工芸品の一つと言えます。貴重なお話と体験の時間をいただいた、錦光園 7代目 墨匠 長野睦さん、ありがとうございました。
【奈良のクラフト】3回目 奈良のワインを学ぼう!ぶどうからワインへ!作り手の想いを感じる体験
7月13日(日)に開催された第三回は、木谷ワイン 木谷一登さんにお越しいただきました。奈良県で唯一のワイン醸造所を手掛ける木谷ワイン 木谷さん。小学生に実施するお話と体験は初めてだったそうです。まずはじめに、ワインの歴史やワイン造り、ぶどうの家系図など、ユーモア溢れるお話を展開いただきました。
普段なじみのないワインをテーマにした講義では、子どもたちは一生懸命ノートをとっていました。ワインがぶどうから作られていることを始めて知った子どもも。
ちなみに、奈良県は、夏の夜の気温が下がりにくいなど、ワイン用ぶどうの栽培において「適地適作」とは言えない環境とされています。しかし、木谷さんは、除草剤を使わない草生栽培、減農薬、無化学肥料にこだわり、奈良の風土に適した品種や栽培方法を模索しながら、質の高いぶどう作りに取り組んでいるようです。奈良で生まれたぶどうを奈良でワインに仕上げるという純奈良県産ワインの製造をする木谷さんから多くのことを感じ取ってくれたようでした。
次に、ワインの飲み比べはできないので、ぶどうジュースの飲み比べを行いました。一般的なぶどうジュースを中心に、実際にワイン造りで使われるブドウを使ったジュースなど、2種類のぶどうジュースを飲み比べ、それぞれの特徴を書き出しました。その後、名前が隠された3種類目のぶどうジュースが登場!先ほど飲んだ2種類のどちらに近いかあてるクイズも行いました。
次に、実際にワインを作る過程の一部を体験するために、1人1房、ぶどうが配られました。そして、配られたぶどうを手で絞りました。「食べたい!」「ぷちぷち感がたまらない」など子どもらしい率直な意見が飛び交いました。また、班ごとで絞ったブドウを瓶詰めしました。
最後に、ワインボトルのオリジナルラベルを制作するワークショップを行ないました。ぶどうの特徴を捉え、「コトクリエワイン」や「やまとワイン」など面白いネーミングが出てきました。ネーミングやラベル記載事項など、それぞれの班のオリジナリティーあふれる作品が出来上がりました。そして、制作後に、それぞれの班で作ったオリジナルボトルに込められた想いを発表しました。
奈良県産のデラウェアや巨峰だけでなく、ピノ・ノワールなど、栽培が難しいとされる品種にも挑戦しています。また、奈良県以外の産地(大阪、北海道など)のぶどうも奈良で醸造することで、「奈良らしさ」を追求しているようです。京都大学卒業後に銀行で働き、ワインに魅了されてワイン造りを始めるという稀有な経歴を持つ木谷さんから、「好きを追求することの大切さ」がメッセージとして伝えられました。木谷ワイン 木谷一登さん、ありがとうございました。
ジュニア・コトクリエカレッジ2025前期「奈良のクラフト」全3回の講座を休むことなく受講した子どもたちには、株式会社エヌ・アイ・プランニング 椿野取締役より修了証書が授与されました。椿野取締役からは、「変化し続ける社会の中で、人生の唯一の道しるべは「好き」を突き詰めること」とメッセージをいただきました。また、子どもたちへは参加特典として、ジュニア・コトクリエカレッジオリジナルバッチがプレゼントされ、子どもたちは、喜びの表情を隠しきれない様子でした!
次は、10月の「奈良のお仕事フェスティバル」。そして、ジュニア・コトクリエカレッジ2025後期が開催される予定です。ぜひ、ご参加ください!