After the Rain 認め合い磨き合う2人の“対決ライブ”、LaLa arena TOKYO-BAY公演をレポート
『After the Rain Live 2024 〜 そらる VS まふまふ 〜』
2024.8.11 LaLa arena TOKYO-BAY
そらるとまふまふによるユニット・After the Rainが、5年ぶりとなる夏ワンマン『After the Rain Live 2024 〜 そらる VS まふまふ 〜』を2024年8月10日・11日に千葉・LaLa arena TOKYO-BAYにて開催。キャリア初、タイトル通りの対決ライブである。そらる対まふまふ、白熱勝負の行方はいかに――。ここでは、2日目の模様をお伝えする。
オープニング映像のカウントダウンが“0”になった瞬間、ステージが明るく照らされると、そこにはそらるとまふまふの姿が。イラストレーター・MACCOによる描き下ろしメインビジュアルを思わせる、黒衣装のそらると白衣装のまふまふ。1曲目は、2024年6月に動画投稿された「極楽地獄」だ。そらるが「楽しんでいこう!」と呼びかければ、驚くほど一体感あるコールで応えるオーディエンス。間奏ではそろって合掌ポーズをしたそらるとまふまふ、2人の起こす化学反応はライブでますます鮮やかさを増す。
ファイヤーボールがダイナミックに噴き上がり、2人のかけ合いもハモリもドラマティックに魅了した「アンチクロックワイズ」。吹き出し花火のスパークラーが派手にステージを彩り、コール&レスポンスがよりいっそう大きく響いた「レッドスプライト」。そらるもまふまふもその声は2デイズライブ2日目にしてとても伸びやかで、相変わらずの好相性。これから始まるバトルにも、期待が高まる。
「捨て子のステラ」で先にソロでステージに立ったのは、そらる。そらるのイメージカラーであるブルーのペンライトが客席で揺れる中、EDM+ロックに切なさをたたえたロングトーンがよく映える。
「今日はまふまふのことをこてんぱんにしてやろうと思ってます。昨日からいろいろと小競り合いをしてて、昨日はまふまふの(ライブ限定)フードがまったく売れてなくて勝った!と思ってたのに(笑)、今日はたこなしたこ焼きが先に売り切れたみたいで一歩リードされてますが……ここからみんなのこと楽しませていきますのでよろしく!」
そう意気込んだそらる、「アイフェイクミー」で攻撃性をむき出しにしたかと思えば、「待ちぼうけの彼方」では叙情の波間で感情を解き放ったり。対決ライブではあるけれど、まふまふ提供曲の連打に相方への信頼もにじむ。
後攻のまふまふは、イメージカラーである白のペンライトが客席で揺れる中、「悔やむと書いてミライ」でソロパートをスタート。<生きるふりをして死んでいくのが 人生か 人生だ>というフレーズが、痛いほど突き刺さる。
「今日は自信を持ってステージに立とうと思ってたけど、(MCで)明かりがついた途端にスイッチが切れました……マズイぞこれ(笑)。2日目も緊張して手が震えてます。でもそうか、ここは味方しかいないんだから堂々としていればいいんだ! 昨日は酸欠になって倒れそうになったりもしたので、みんなの力をお借りしたい所存なのですがよろしいでしょうか?」
遠慮がちにお願いするまふまふに応え、「マトリョシカ - Arrange ver. -」ではオーディエンスが大合唱。全編英詞でがなり気味な歌声もエモーショナルな「ECHO」にしても然り、高揚感が止まらない。
黒と青のトップスにグレーパンツを合わせた衣装に着替え、再びソロでステージに立ったそらる。<今に見てろ 今に見てろ それだけを歌ってきたんだよ>という反骨精神が貫く「アノニマス御中」では曲ラストにマイクを持った右手を高く掲げ、続く「ハローディストピア」ではリズムに合わせ何度もジャンプ。2ターン目のそらるはあまりにも戦闘力が高い。
「VSっていうことで(テンポが)速くて(キーが)高いほうが強そうだし盛り上がるわけで、そういう曲をメインにセットリストを組みました。浦島坂田船の『ソロフェス』からアイデアをもらった今回のライブ、お互い競い合ってみたらすごく楽しいし、昨日もう無理!ってなったけど(笑)、今日は肩の力を抜いて楽しめています。引き分けで茶を濁した昨日と違って、今日は白黒つけます!」
意を決したそらるがソロパートのラストに歌ったのは、自らが歌詞を紡いだ壮大なロックナンバー「オーロラ」だ。このライブの翌日夜には、三大流星群のひとつであるペルセウス座流星群と低緯度オーロラが北海道で国内初の同時観測。そんな奇跡も呼んでしまうのが、そらるだ。
一転、赤ライトに染まりファイヤーボールが噴き上がるステージに全身黒衣装で現れたまふまふ。世の不条理、それに対しての憤りがあふれ出す「サクリファイス」、突き抜けるようなハイトーンにも圧倒される。
「さっき楽屋で声出ししてたら急にそらるさんに腕をガッて掴まれて、筋肉自慢されました(笑)。あとでそらるさんに筋肉見せてもらおう! そういえばさっきそらるさんが「速くて高いほうがえらい」みたいなこと言ってたけど、キーは適性があって、どうしても僕のほうが高いので。それぞれの最高値が出ていればよしとしましょう。よし、これで僕の好感度爆上がりですよ(笑)。敵に塩を送るという(笑)」
「昨日MCめっちゃヘタクソでそらるさんに心配された」と言いながらもしっかり客席の笑いを誘うまふまふ、即興のバンドメンバー紹介からファンキーな「おとといきやがれ」へ。かと思えば、「ナイティナイト」をピアノ伴奏のみで丁寧に歌唱。優しく澄んだファルセット、<来世も君のそばで眠りたいなあ>という願いに、どうしたって心が動く。
再び2人がステージにそろったMCタイムでは、まふまふの公約?通りそらるが鍛えられた二の腕の筋肉を披露し、ついでにノー筋トレのまふまふもなぜか二の腕を見せることに。そらるに手をタッチさせて「腕が折れたー!」と大げさに倒れ込むまふまふ、「まふまふにずっと疑われてたけどちゃんとジムに通ってるんで、この二の腕も加点対象に(笑)」とアピールするそらる。歌っているときとはまるで別人なゆるいかけあいトークも、耳に心地よい。
まふまふのタイトルコールのタイミングがツボったのかそらるがフっと笑ってしまい、「どこでコールしたらいいかわからん!」とまふまふが漏らした「喰病しのイデア」。すれ違いざまにそらるがまふまふの両肩に手を添えた「ナイトクローラー」。「お互いの音域が映える曲を歌う、それがAfter the Rainのいいところ」というそらるの言葉も腑に落ちる。
「夏に相応しい熱いライブでみんなと楽しめていい思い出になりました」とそらるが笑顔を見せれば、「前回のAtRライブから約8か月、こうしてまた表舞台に戻ってくることができました。前回より今のほうが元気だし、やっぱり自分には音楽しかないなって思いました」とまふまふが吐露し、「ありがとうございます!」と声を合わせた2人。本編ラストを飾ったのは、After the Rain結成前の2014年4月に「そらる×まふまふ(通称:そらいろまふらー)」名義でリリースされた同人アルバム『アフターレインクエスト』に収録されていた「第2次カラクリ国家計画」のリメイク「第3次カラクリ国家計画」だ。轟くようなオーディエンスの全力コール、向き合ってロングトーンを重ねるそらるとまふまふ。雨降って地固まり、空には美しい希望の虹がかかる。After the Rainは、やはりリスナーにとってなくてはならない存在だ。
「ロキ」でスタートしたアンコールでは、近日中に動画公開予定の「ねぇねぇねぇ。」をお披露目。そして、そらるVSまふまふの結果は……「今日の勝ちはお前に譲ろう」とそらるが男気を見せ、まふまふが「あれ、僕がそらるさんに譲りますよっていう流れにしようと思ったのに!?」と意表を突かれる展開に。さらに、「次は勝つ!」とそらるが宣言。対決ライブの次回開催を思わせ、お互いのソロ曲をお互いが決めるという楽しいアイデアまで飛び出した。
ラストは、<1.バトルをしたなら 2.笑うか泣いたって 3で仲間になろうよ>というフレーズがハマりすぎな「1・2・3 - 2023 ver. -」。お互いに認め合い磨き合う2人の対決ライブに相応しい、極上のハッピーエンドだったように思う。
文=杉江優花
撮影=小松陽祐[ODD JOB] / 堀卓朗[ELENORE] / 笠原千聖[cielkocka]