お盆に作りたい「精進料理」の献立レシピ。使用する食材や配膳のポイントも
今年のお盆は精進料理を作りませんか?
お盆にぴったりなの精進料理のレシピと作り方のポイントを解説します。お盆には、仏様に精進料理をお供えし、家族みんなで食べるという昔ながらの風習がありますよ。
精進料理は動物性の食材や五葷(ごくん)と呼ばれるものを避け、野菜を中心に作られる伝統的な料理です。基本的なルールや配膳の方法、適切な食材選びと調理のコツをおさえて作りましょう。ポイントをおさえれば意外と簡単。むずかしく考えなくても手軽に作れますよ。
精進料理について|基本のポイント
控えるべき食材
動物性の食材
香りの強い「五葷(ごくん)・五辛(ごしん)」
精進料理は仏教の教えに基づいて作られる料理であり、動物性の食材を一切使用しません。肉や魚はもちろんのこと、出汁にも使わないのが特徴です。味のベースは、昆布や干し椎茸などの植物性の食材からとることが多いですよ。そのため、素材そのものの風味を生かしたやさしい味わいの料理ができあがります。
また野菜はにんにく、ねぎ、ニラ、玉ねぎ、らっきょうなどの「五葷(ごくん)」や「五辛(ごしん)」と呼ばれる食材は使いません。五葷や五辛は強い香りを持ち、仏教の修行や瞑想において、精神を乱す可能性があるとされているためです。
配膳のポイント
「一汁五菜」か「一汁三菜」が一般的
精進料理の配膳方法は宗派の戒律により異なりますが、一般的には「一汁五菜」または「一汁三菜」が基本です。どちらも季節の野菜を使い、見た目のうつくしさや季節感を大切にした献立が特徴ですよ。素材を活かすやさしい味付けで、ひと口味わうごとに心がほっと落ち着きます。
「一汁五菜」の構成は汁物ひと品と5つの副菜です。汁物は味噌汁やすまし汁、副菜には煮物、和え物、揚げ物、酢の物などが作られます。「一汁三菜」は汁物ひと品と3つの副菜で、よりシンプルな構成です。
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「一汁五菜」の精進料理献立レシピ案
枝豆と塩こんぶの炊き込みごはんを主食に、汁物にはレタスとミニトマトの味噌汁を用意。おかずにはたくあんとごぼうのきんぴら、黒ごま豆腐、さつまいもの天ぷら、高野豆腐の煮物、かぼちゃと小豆のいとこ煮を合わせて「一汁五菜」の献立を作ります。
かぼちゃの黄色や枝豆の緑色が鮮やかで、黒ごま豆腐の黒色が全体を引き締めますよ。一般的には一汁五菜の数に漬物は含みません。用意しなくても問題なので、お好みで調整してくださいね。
枝豆と塩こんぶの炊き込みごはん
材料を炊飯器に入れるだけの簡単レシピです。塩こんぶの塩気の効くごはんに、ほっくりとした甘みの枝豆がいいアクセントとなります。シンプルながら深い味わいが楽しめますよ。枝豆は炊き上がりに混ぜ込んで、色鮮やかに仕上げましょう。華やかな見た目が食卓を彩ります。
白だしは厳密には精進料理に向かない調味料です。気になる場合は昆布だしにしょうゆとみりん、砂糖を加えて代用してくださいね。
レタスとミニトマトの味噌汁
レタスやトマトは生でも食べられる食材なので、さっと火を通すだけの短時間で完成します。レタスのシャキシャキ感とミニトマトの酸味が、味噌の旨味と相まって深い味わいになりますよ。さっぱりと食べやすいので暑い季節にとくにおすすめです。
レシピに使うだしの素は、精進料理には向かない食材のため昆布だしや干ししいたけでとった出汁で代用しましょう。
たくあんとごぼうのきんぴら
カリカリとしたたくあんと、シャキシャキとしたごぼう食感が心地よいきんぴらです。濃いめの味付けがやみつきになりますよ。より食感を感じるために、ごぼうは細切りにして仕上げます。たくあんから塩味の効いた味が出るので調味料は最小限で十分です。ごはんと相性抜群で、食欲がそそれれること間違いなし。
葛粉で作る濃厚黒ごま豆腐
精進料理でよく使われるごま豆腐です。葛粉で作る黒ごま豆腐は、もっちりとした食感と濃厚なごまの風味がたまらなくおいしいですよ。一見むずかしそうですが、意外と作り方は簡単。加熱する際は、絶えず練り続けて焦がさないように注意しましょう。ひと口食べると濃厚なごまの香りが口いっぱいに広がり、贅沢な味わいを楽しめますよ。
さつまいもの天ぷら
さつまいもの天ぷらはじっくりと揚げることで、自然な甘さが引き立ちます。外はカリッと、中はしっとりとした食感が楽しめますよ。衣を作る際は混ぜすぎず、粉っぽさを残すことがポイントです。市販の天ぷら粉を使うのもいいでしょう。
しみしみ高野豆腐の煮物
高野豆腐の煮物です。だし汁でじっくりと煮込んだ高野豆腐は、ふっくらとやわらかく、口の中でおだしがじゅわ〜っと広がりますよ。精進料理としても人気が高くお盆の献立にもぴったりです。季節の野菜を自由に加えてアレンジしてくださいね。
レシピで使うだしの素は精進料理には使えない調味料のため、昆布だしにしょうゆとみりんや砂糖を加えて代用してください。
かぼちゃと小豆のいとこ煮
かぼちゃと小豆の定番の組み合わせの煮物です。小豆は缶詰を使うことで豆の下処理が必要なくなり、簡単に作れます。かぼちゃのほっくりとした食感と小豆の甘みが絶妙に合わさって、やさしい味わいが楽しめますよ。ほっこりと心温まる料理をゆっくりと味わってくださいね。
なすの漬物
なすの漬物はコツを押さえて作ると、彩りがうつくしく見た目にも華やかにできあがります。漬け汁に使う材料はとてもシンプルで、塩、砂糖、みょうばんだけです。時間をかけて漬けることで、なすが鮮やかな色を保ちながらしっかりと味が染み込みますよ。さっぱりとした味わいで、ごはんのお供に最適。どんな献立にも合う便利な漬物です。
「一汁三菜」の精進料理献立レシピ案
とうもろこしの炊き込みごはんを主食に、汁物にはすまし汁を用意。おかずにはがんもどきの煮物やさつまいもの甘煮を合わて、「一汁三菜」の献立を作ります。
茶色のおかずが並ぶので、とうもろこしを使い色味を加えるのがポイント。なすやきゅうりの漬物も色のアクセントになりますよ。なお漬物は一汁三菜の数には含みません。お好みでごはんに添えてくださいね。
とうもろこしごはん(とうもろこしの炊き込みごはん)
とうもろこしの黄色が華やかできれいなひと品です。炊飯器で手軽に作れるので、忙しいお盆の時期にもぴったりですよ。とうもろこしの芯の部分も加えて炊くことで、ごはん全体に旨みがしっかりと染み込みます。シンプルな材料で作るので、とうもろこし本来の自然な甘みがしっかりと感じられるでしょう。
たっぷりきのこのすまし汁
香り高いしいたけやしめじをたっぷり使うきのこのすまし汁は、シンプルな味付けで深い旨味が特徴です。だし汁にきのこの風味が溶け込み、心温まる味わいに仕上がります。忙しい日のお盆でも、短時間で簡単に作れるのも魅力ですよ。
精進料理の場合は小口ねぎは使えない食材なので、のせないように注意しましょう。まただしの素は昆布だしにしょうゆとみりん、砂糖で代用可能です。
がんもどきの煮物
だしがたっぷりのがんもどきの煮物は、上品でやさしい味わいが特徴です。がんもどきのふわっとした食感が味わえます。丸い見た目がかわいらしく心まで癒されますよ。油抜きの方法や調味料を加える順番などの和食の基本をしっかりと押さえて作れば、大成功間違いなし。
だしの素は精進料理の場合、昆布だしにしょうゆとみりん、砂糖を加えて代用しましょう。
切り干し大根と納豆の塩こんぶ和え
切り干し大根と納豆の塩こんぶ和えは、食感が楽しく、切り干し大根で簡単に作れる副菜です。素朴な見た目が和の風情を感じさせます。切り干し大根のシャキシャキとした噛み応えと、納豆のねばねばした食感の組み合わせが絶妙。塩こんぶの旨味が全体をまとめます。あっさりとした味付けなので、サラダ感覚で手軽に食べられますよ。
さつまいもの甘煮
さつまいもの自然な甘さが引き立つほっこりとした副菜です。黄色とむらさき色の見た目が華やかで、お盆の食卓に彩りを添えます。少ししょうゆを加えることで甘さが引き立ちますよ。多めに作って保存しておけば、普段のおかずやお弁当に便利に使えます。
さつまいもの品種によっても味わいが変わるのも魅力。お好みのものを見つけてみてくださいね。
お好みの野菜で作るぬか漬け
ぬか漬けは手軽に作れる伝統的な漬物で、家庭での精進料理に最適です。さまざまな野菜を使って季節の味わいを楽しむことができ、ごはんやほかの料理との相性も抜群。どんなシーンにも合わすことができるので、とても便利に使えます。コツを押さえて作って、ぜひ特製のぬか漬けを味わってみてくださいね。
家族の絆を深めるきっかけに。精進料理でお盆を迎えよう
お盆に作る精進料理は、仏様への感謝を表すだけでなく、家族との絆を深める大切な行事とも考えられます。お盆には伝統を大切にしながら精進料理を心を込めて作り、家族みんなで特別な時間を楽しみましょう。
基本を押さえれば、気負いすることなく簡単に用意できますよ。普段忙しくて家族全員がそろうことが少ないご家庭では、いい機会になるかもしれません。
ライター:山形ゆかり(薬剤師・薬膳アドバイザー・フードコーディネーター)