史上最高に切ないゾンビ映画か?ゾワッとエモい音楽も不安を煽る『アンデッド/愛しき者の不在』本編映像
話題の北欧映画『アンデッド/愛しき者の不在』
2024年サンダンス映画祭のワールドシネマティック特別審査員賞(オリジナルミュージック)を受賞した『アンデッド/愛しき者の不在』が、2025年1月17日(金)より全国公開。『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008年)や『ボーダー 二つの世界』(2018年)で知られるスウェーデンの鬼才ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストが原作と共同脚本を手がけたことでも話題の北欧映画だ。
このたび、イギリスの音楽家ピーター・レイバーンによる本作の劇伴が大フィーチャーされた本編映像が解禁。併せてテア・ヴィスタンダル監督とレイバーン自身が本作の音楽について語る、興味深いコメントも届けられた。
亡き家族が“還って”きた……
北欧オスロ。息子を亡くしたばかりのアナ(レナーテ・レインスヴェ)とその父マーラー(ビヨーン・スンクェスト)は悲しみに暮れていた。墓地で微かな音を聞いたマーラーは墓を掘り起こし、埋められていた孫の身体を家に連れて帰ってきてしまう。
すると鬱状態だったアナは生気を取り戻し、人目につかない山荘に親子で隠れ住む。しかし還ってきた最愛の息子は、瞬きや呼吸はするものの、全く言葉を発しない。そんなとき、招かれざる訪問者が山荘に現れる。
一方その頃、別の場所でも不思議な現象が起きていた。交通事故に遭った女性が奇跡的に蘇生したり、教会で葬儀を終えたはずの死者が家に戻ってきたり……。家族は愛する人の生還に喜ぶが、彼らも同じく生前とは明らかに様子が違っていて――。
「よみがえる遺体」をめぐる人間の悲哀、その表現に寄与した音楽家とは?
小さな街で突如、静かに蘇ったアンデッド(生ける屍)たち。瞬きや呼吸はするものの、全く言葉を発せず、元の生活の場に戻ってきた彼らとの再会に喜ぶ家族たちは、徐々に不安や戸惑いの感情に包まれていく。
我々と同じ人間“だった”者たちとの切ない悲哀をポエティックな映像美にのせて描く、今までにないホラー映画『アンデッド/愛しき者の不在』。その世界観の醸成に大きな役割を果たしているのが、ピーター・レイバーンの手掛ける音楽だ。
ひとクセある作品の音楽を手掛けてきた気鋭アーティスト
ピーター・レイバーンは、これまで70以上もの賞を受賞しているアーティスト集団<サウンドツリー・ミュージック>の創設者兼クリエイティブディレクターであり、また作曲家、音楽プロデューサー、ソングライターとしても活動。映画ファン、海外ドラマファンならば、一度は彼の音楽を耳にしたことがあるだろう。
活動開始の翌年には早くも、ラース・フォン・トリアー監督の忘れがたい名作『奇跡の海』(1996年)のサウンドトラックに携わったレイバーン。その後もニコール・キッドマン主演の『記憶の棘』(2004年)やスカーレット・ヨハンソン主演の『アンダー・ザ・スキン/種の捕食』 (2013年)、アマンダ・セイフライド主演のNetflix映画『闇はささやく』(2021年)など、様々な話題作を担当してきた。また、愛に苦しむ若い夫婦を描いた『ブルーバレンタイン』(2010年)にも楽曲を提供するなど、幅広いジャンルの作品で活躍しているミュージシャンだ。
このたび公開されたのは、レイバーンによる音楽の“不穏な”片鱗がうかがえる本編映像。エモみのある旋律からの生理的嫌悪を刺激する謎サウンドは、低体温な映像と相まって観る者の不安を煽る。
「悲しみから生まれた楽曲」がメランコリック・ホラーの切なさを増幅
本作の監督はノルウェー出身の新鋭テア・ヴィスタンダル。彼女はレイバーンとの出会いを振り返りつつ、彼の手掛ける音楽を絶賛する。
脚本を書いている時にマックス・リヒター(※現代クラシックを牽引する音楽家)をよく聴いていたので、彼と同じようなフィーリング、繊細さを持つ音楽をイメージしていることを知人に伝えたら、ピーターを紹介されました。撮影に入る前に、ピーターはデモを何曲か作ってくれて、私と撮影監督はそれを聞きながら撮影することで、正しいムードとリズムを見つけることができたんです。彼はどういう作品なのかをじっくり理解し、エモーショナルで不穏な完璧なスコアを作曲してくれた。素晴らしいコラボレーションとなりました。
そしてレイバーン自身も楽曲制作を振り返り、「『アンデッド/愛しき者の不在』は愛、死、そして生についての深い問いを投げかけている。非常に個人的な体験なのですが、この映画の曲は私自身の悲しみから生まれたものです」と、非常に気になるコメントをしている。その”悲しみ”とは、一体どんなものだったのか? 彼が手掛けた劇伴はSpotifyやApple Musicで配信中なので、鑑賞前・後を問わずじっくりと耳を傾けてみてはいかがだろう。
『アンデッド/愛しき者の不在』は2025年1月17日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿ピカデリーほか全国順次公開
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