鎮守府ゆかりの軍港文化が感じられる街並みを自転車で【長崎県佐世保市】
日本本土の最西端に位置する佐世保市は、大小の島々が複雑に織りなす多島海と、港を囲む三方の小高い山々に囲まれた、美しい自然に恵まれた港まちです。
1889(明治22)年に鎮守府が開庁すると、近代的な軍港都市として急激に発展を遂げ、戦後はアメリカ文化が混在する異国情緒漂う港まちとしてにぎわっています。
防空壕をそのまま生かしたとんねる横丁と戸尾市
佐世保観光情報センターを出発して自転車で街歩きの旅に出発します。
5分ほどで、大正時代から佐世保の台所として市民に親しまれてきた戸尾市場街に到着します。国道に沿ってとんねる横丁があり、すぐそばに戸尾市場という商店街があります。とんねる横丁は、戦時中の防空壕をそのまま生かして作られた市場で、地元で水揚げされた海産物をはじめ、水産加工品、青果などの店が軒を並べています。
古典主義的デザインの外観「旧海軍佐世保鎮守府凱旋記念館」
市場から自転車を走らせ10分で旧海軍佐世保鎮守府凱旋記念館に到着です。記念館は第一次世界大戦での佐世保鎮守府所属艦艇の活躍を記念して、1923(大正12)年5月に建てられた建造物。外壁にはれんが、内部列柱には鉄筋コンクリートが用いられた古典主義的デザインの外観が特徴です。完成した当時は、海軍関係の催しに使用されていました。
日本海軍や海上自衛隊の歴史が学べる佐世保史料館
記念館から自転車で3分ほどのところにある「海上自衛隊佐世保史料館(セイルタワー)」は日本海軍や海上自衛隊の歴史が学べるスポット。「佐世保水交社」(士官の福利厚生施設)の跡地に建設されたもので、入口付近にはその面影が残っています。1階には売店もあり、オリジナルグッズが販売されています。
世界でも数少ない、佐世保重工業(株)の250トンクレーン
資料館からさらに10分走って到着するのは、佐世保重工株式会社(以下SSK)。SSKへの敷地内への一般立ち入りは制限されていますが、近くの道路沿いの歩道より外観見学が可能です。英国から輸入され、1913(大正2)年に完成した巨大クレーンを見ることができます。世界最大級の揚重能力を誇り、海軍工廠(しょう)の主力クレーンとして活躍。形状が槌(つち)に似ているため「ハンマーヘッド」と呼ばれているが正確にはジャイアント・カンチレバー・クレーンといい、同型のものは日本に3台、世界でも10台しか残されていない貴重なものです。
「SSK第4ドック」から望む、佐世保で発展したコンクリート技術に重要な役割を果たした場所
SSKが旧海軍工廠の施設を引き継いだ造船所です。敷地内への一般立ち入りは制限されていますが、SSKバイパス沿いには案内板と車を停められるスペースがあり、そこから間近で第4ドックのようすを見学できます。第4ドックはもともと新造船用として使われてきましたが、現在は修繕船兼用に転用されています。
第5ドック(旧第一船きょ)は火山灰を混入した対海水コンクリートの開発、第6ドック(旧第三船きょ)では鉄筋コンクリートの建造物への応用など、佐世保で発展したコンクリート技術の熟成期に重要な役割を果たしました。
これで自転車の旅は終了。お疲れ様でした。
※使用写真は一部佐世保観光コンベンション協会提供
(古川 哲さんの投稿)