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古井戸のデビューから55周年!仲井戸 “CHABO” 麗市が奏でる音楽はどこまでも優しい

Re:minder

1990年02月21日 仲井戸麗市のセカンドアルバム「絵」発売日(ホームタウン 収録)

毎回趣向を凝らした選曲で耳の肥えた視聴者を唸らせている歌謡ポップスチャンネルの『Re:minder SONG FILE』では、6月22日に「仲井戸“CHABO”麗市コレクション」と題して選りすぐりの9曲をお届けする。

今年デビュー55周年を迎えた仲井戸麗市


CHABOの愛称で親しまれる仲井戸麗市は、1970年に加奈崎芳太郎とフォークデュオ古井戸を結成、エレックレコードよりデビュー。古井戸解散後の1979年にRCサクセションへ加入し、その立役者として大活躍。RCサクセションと並行して1985年には、初のソロアルバム『THE 仲井戸麗市 BOOK』をリリースする。

1991年にはザ・ストリート・スライダーズの蘭丸(土屋公平)と麗蘭を結成。2015年には中村達也(ブランキー・ジェット・シティ他)、Ken Ken(RIZE)などひと回り以上下の世代のミュージシャンたちと “the day” を結成。昨年(2024年)には9年ぶりのソロアルバム『Experience』を発表するなど、多岐に渡る活動を展開している。

仲井戸麗市の世界は “吟遊詩人” というイメージ


仲井戸麗市の奏でる音楽は、過去・現在・未来と時間を行き来しながら、色彩や温度、季節の移ろいを感じさせてくれる。ロバート・ジョンソン、マディ・ウオーターズ、マジック・サムといったブルースマン、R&B、そしてビートルズ…。そんな彼のルーツミュージックへの敬愛が溢れたギターの音色、そして歌声は、自身の分身であり、息づかいや、ギターのピックが弦に触れる瞬間の感触まで、彼にしか出せない世界観に包まれている。

それは “吟遊詩人” というイメージと合致するのかもしれない。仲井戸もまた、人生という旅を続ける中で、心象風景として心の中に描かれたものを音にして言葉にしていく。ギターの音色は、どこか懐かしさを感じさせながら、その音が響き渡ると、未だ見ぬ世界が広がっていく。そして、その時々の優しさ、怒り、懐かしさ… さまざまな感情を聴き手に語りかけるような歌にする。そう、その語りには幾つもの答えが存在している。仲井戸麗市の世界から、聴き手はどのような絵を心に描くのか。そんなキャッチボールができるのも大きな魅力だ。

今回選りすぐられた9曲は、古井戸時代のセルフカバー「抒情詩」から最新アルバム『Experience』に収録された「新宿Swamp」まで、仲井戸麗市のソロアーティストとしてのキャリアを俯瞰できる絶妙なセレクトになっている。ここでいくつかの曲をピックアップしてその魅力を紐解いていきたい。

セカンドアルバム「絵」に収録されている「ホームタウン」


まず、1曲目の「ホームタウン」は1990年にリリースされたセカンドアルバム『絵』に収録されているオープニングナンバーだ。「♪ジェファーソン・エアプレインに 飛び乗って 緑の広場に着陸できたら」という歌い出しから聴き手を時間旅行にいざなう幻想的な魅力が溢れている。ここにある “緑の広場” については、ヒントになるような文章が、自身が書いた本作のライナーノーツに記してあった。

僕の ”幻のめぬき通り” は、距離にしてわずか5〜600mというところだろうか。新宿三丁目の交差点から東口はグリーンパークあたりまで、そこにたかが25年、あるいは、なんと25年の景色が浮かんでは消え、そしてまた浮かぶ……


“緑の広場” とは “グリーンパーク” のことかもしれない。そして、ジェファーソン・エアプレインに飛び乗ったのは、少年時代へ思いを馳せる仲井戸麗市自身なのではないか。彼が生まれ、青春時代を過ごした新宿から、彼の愛する音楽の故郷、たとえばアメリカ南部の大草原まで、一瞬にして行き来するような感覚に陥ってしまう。さらには、湿り気を感じるアコースティクギターのアルベジオで郷愁を感じさせながら、「♪ピンクのキャデラックで 夜明けをぶっ飛ばして」と、ビートルズに衝撃を受けたティーンエイジャーだった頃の自分に会いに行くことを示唆している。

このように1曲の中に詰め込まれた風景、温度がひとつの物語として、聴き手に問いかけるのが仲井戸麗市の音楽なのだ。まさに番組のオープニングに相応しい名曲だ。

麗蘭の名刺代わりになった「ミュージック」


番組の4曲目、イントロのスライドギターがブルージーな「はぐれた遠い子供達」は、1993年にリリースされた『DADA』からの1曲。季節の彩りが色濃く表現され、私小説的な趣きも感じる1枚の中で、ひときわ仲井戸麗市の優しさが滲みてくる1曲だ。「♪風の原っぱで遊んでる 男の子のようなお前に “クリスマスの思い出” プレゼント 届けに行ってみたい」と時間を行き来しながら、普遍的な原風景を見事にパッキングした名曲だ。

土屋公平とのユニット、麗蘭からは、1991年にファーストシングルとしてリリースされ、彼らの名刺代わりになった「ミュージック」を。エッジの効いたギターのカッティングから、R&Bのフィーリングを内包したパーカッションのリズム。そこで仲井戸が “ミュージック” と呟くと、ここから一気に楽曲の世界観に吸い込まれる。ティーンエイジャーの頃に恋焦がれた音楽への思いを今の視点で反芻する。1曲の中に2人の音楽に対する深い愛情が込められている。ソロとは異なる “麗市、蘭丸” 2人のアンサンブルが織りなす独特のグルーヴはまさに唯一無二だ。

1970年に古井戸としてデビューしてから長きに渡るキャリアの軌跡


そして、最新アルバム『Experience』からの「新宿Swamp」は、仲井戸が生まれ育った “新宿” をタイトルに、長嶋茂雄、力道山、スーパーマンという固有名詞が並び、音楽に出会う前の無邪気だった頃の情景を歌にしたものだ。

仲井戸麗市には “新宿” とタイトルにつく「新宿を語る 冬」という楽曲があるが、こちらは青年期の情景を歌にしたもの。どちらも、原風景である新宿が今も淡い色を帯びて彼の心の中で生き続けていることを聴き手に伝えようとしている。あの頃、あの場所で仲井戸麗市が何を考え、何をしていたか。そして、それは今彼の心の中でどのように熟成されているのか… そんなことを思いながら聴いてみるのも一興だ。

「仲井戸“CHABO”麗市コレクション」では、1970年に古井戸としてデビューしてから長きに渡るキャリアの軌跡でもある。過去・現在・未来を行き来しながら、そこに感じる色彩や温度、季節の移ろい… 音と言葉で織りなす唯一無二の世界観を五感で堪能して欲しい。仲井戸麗市が奏でる音楽はどこまでも優しい。

Information
Re:minder SONG FILE 仲井戸“CHABO”麗市 コレクション

▶︎ 放送局:歌謡ポップスチャンネル
▶︎ 放送日時:
  2025年6月22日(日)22:30〜23:30
  2025年7月26日(土)深夜0:30〜1:30
▶︎ オンエア楽曲
♪ ホームタウン
♪ ONE NITE BLUES
♪ はぐれた遠い子供達へ
♪ 抒情詩
♪ ミュージック
♪ 糧
♪ 夏に続く午後
♪ ガルシアの風
♪ 新宿Swamp


▶リリース情報
セカンドソロアルバム「絵」初LP化
最新リマスター&アナログ盤リイシュー第2弾

・発売:2025年6月25日
・仕様:180g重量盤 / 2LP
・価格:6,600円(税込)

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