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『無名の人生』に影響を与えた名作とは?鈴木竜也監督の生涯ベスト映画ランキングTOP3

ciatr[シアター]

鈴木竜也監督、無名の人生

鈴木竜也監督が、脚本・音楽・編集まですべてを手がけ、ひとりで1年半かけて完成させた長編アニメーション映画『無名の人生』。

今回は『無名の人生』公開を記念して鈴木竜也さんに、「監督と映画」をテーマにインタビューを実施しました。映画に目覚めたきっかけから、作品の選び方、影響を受けた作品まで、その映画体験の源流をたどる、貴重な内容となっています。

さらに、“鈴木竜也監督の生涯ベスト映画3本”をランキング形式で公開!『無名の人生』にも多大な影響を与えたラインナップに注目です。

※インタビュー取材の模様を撮影した動画コンテンツをYouTubeのciatr/1Screenチャンネルで公開中!

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映画『無名の人生』作品概要・あらすじ

鈴木竜也監督の長編第1作『無名の人生』は、孤独な少年がアイドルを目指す過程から始まり、100年にわたる波乱の生涯を全10章で描く長編アニメーション。

戦争や芸能界の闇、若年層の死など現代社会の問題を背景に、章ごとにタッチや色彩が変化する独自のスタイルが特徴。プロデューサーは『音楽』の岩井澤健治、主人公の声はラッパーACE COOLが担当。アヌシー国際アニメーション映画祭にも正式ノミネートされました。

『無名の人生』あらすじ

仙台の団地でひっそりと暮らす、いじめられっ子の主人公。 やがて彼は、ある転校生との出会いから父親の背中を追ってアイドルを夢見るように。

そこから図らずも成り上がっていく主人公の美しくも悲哀に満ちた人生が、高齢ドライバーや芸能界の闇、若年層の不詳の死、戦争など、今まさに我々が直面する数々の問題を背景に描かれていく。

「本当の名前を呼ばれることの無かった男」が最後に直面する、誰も見たことのない景色とはーーー。

鈴木竜也監督プロフィール

【鈴木竜也監督の生涯ベストムービーTOP3】

Q:鈴木竜也監督に生涯ベスト映画TOP3を選出いただきました。第3位から紹介いただけますでしょうか?

第3位『君が生きた証』(2014年):まさかのどんでん返しに劇場でそのままリピート

鈴木竜也監督

(第3位は)『君が生きた証』です。ウィリアム・H・メイシー、ポール・トーマス・アンダーソンの映画とかによく出ている。『ファーゴ』とかにも出ているんですけど、情けない夫役みたいな感じで。

アメリカの小日向文世さんみたいな感じで出ている役者さんがぱっと撮った映画で。銃の乱射事件で息子を亡くしてしまったお父さんが、その息子が作っていた曲を場末のバーで飛び入りで弾いて、そのバーでもともとバンドをやっている若者の目にとまって一緒にバンドを組まないかみたいな感じになって、だんだん売れていく話。

中盤ぐらいでとんでもないどんでん返しがあって、全くどんでん返しがある映画だと思っていなかったので。観客の先入観を利用したどんでん返しというか、謎に劇場でぱっと観て、そのままもう1回観たという経験を生涯で唯一した作品だと思います。

第2位『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007年):『無名の人生』でも意識した全編キレキレの1作

鈴木竜也監督

第2位は『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』です。ポール・トーマス・アンダーソン監督で、個人的には1、2を争うを争うぐらい好きな監督であり、とても影響を受けている監督で。人間洞察がすごいっていうのと、ワンカット、ワンカットがマジ過ぎる。

毎回映画の主人公が何かしらのカリスマという共通点がある部分もすごく好きで、最も怪物級のおぞましさがあるのがこの作品で、『無名の人生』を作る最初の時にもちょっと意識した作品です。石油掘りが一発当ててのし上がっていくっていう話で。

(主人公を)ダニエル・デイ=ルイスが演じていて、それが凄いんですけど。彼と出会うキリスト教の遣いの若者をポール・ダノが演じていて。2人がずっと戦っていくっていう作品で、しびれるんですね。

最初の10分ぐらい確かセリフもないんですけど。Radioheadのジョニー・グリーンウッドが全編ホラー映画みたいな音楽を流してて、何かあらゆる場面で痺れるし。

ラストカットのキレみたいなのがPTA(ポール・トーマス・アンダーソン)作品にはあって。あの映画の終わり方が僕が一番好きだなと思っています。そういう意味でも色々と参考にしている作品ですね。

第1位『インディアン・ランナー』(1991年) :観たことのないエンディングが魅力のショーン・ペン初監督作

鈴木竜也監督

今日の気分なんですけど、第1位は 『インディアン・ランナー』っていう作品で。90年代ショーン・ペンが監督をしてる作品で初監督作品ですかね。

ヴィゴ・モーテンセンが刑務所帰りのどうしようもない不良、本当にヤバイぐらいのろくでなしを演じていて。そのお兄さんをデヴィッド・モースっていう俳優さんが地元の警官役で。警官のお兄ちゃんがどうしようもない不良を立ち直らせようとするみたいな作品なんですけど。

観たことのないエンディングって言うか。大体映画って勝利して終わるんですけど。「もう無理だな」みたいになって終わっていくのがすごくリアルで

各シーンで演出が冴え渡りまくっていて。いろんなコーナーを寄せ集めたようなエンターテイメント作品。最後の暴力シーンとかは、今回の作品でがっつりサンプリングさせていただいたんですけど、暴力シーンが他の映画と全然違って魅力的ですね。

ショーン・ペンの作った映画は全て傑作というか、何か自分(ショーン・ペン)は出てこないんですけど、こういう風に人を見るんだなとか、達観した視点があってその辺も勉強になっています。

【番外編:最近観た作品でグッときた1本】『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』

最近観た作品の中で惹かれた作品があればお聞かせください

鈴木竜也監督

最近ようやく色々見始められて。今話題になってる『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』という、ジャルジャルさん(福徳さんが原作小説を執筆)の作品はちょっとヤバかったです。

圧倒されてるというか。カット割りとかも全然見たことないようなテンポですし、役者さんの芝居もすごいし、内容もすごい裏切られる作品なんですけど、多分ポスターとかもわざとああいう風に作ってんだろうな、何か全部やられたなっていう感じで。

「すごいな、実写の映画は!」って改めて思わされた。結構新しい映画な気がしました。すごい大傑作。あと*『サンダーボルツ』**も普通に面白かったです。

【インタビュー/テーマ:監督と映画】映画の原体験や監督を志したきっかけとは?

【映画の原体験】『バトル・ロワイアル』で映画の闇の世界へ

Q:監督と映画の原体験についてお聞かせください

鈴木竜也監督

『バトル・ロワイアル』はこれが映画なんだなという、映画の闇の世界に入っていったような1本目で。

その前の本当の教科書の0ページぐらいを考えると『ウォーターボーイズ』かなと思っていて。いまだに夏が来るたびに見返すぐらい好きなんですけど、ドラマも含めて。

矢口史靖監督の『スウィングガールズ』とかカット割りとかもほんと秀逸なんですけど、今観ても3段オチに全部のカットがなってるというか。それが本当に血になっているかもしれない。

その前はたぶん「ミュウツーの逆襲」とか、そういう子供アニメ映画みたいなのばっかり観ていたと思いますね。

【映画監督を志したきっかけ】映画監督になる決意をした瞬間はなかった?

Q:映画監督を志したきっかけをお聞かせください

鈴木竜也監督

中学で(北野)武映画とかにはまって、高校までずっとギャング映画とかを観ていて「俺は人と違うぜっ」みたいな感じでスカしてたんですけど。

映画監督になりたいというよりは、映画関連のことを何かやってみたいなというか。好きなものが映画ぐらいしかなかったので。

仙台に住んでいたんですけど、お隣の山形の東北芸術工科大学に行って映画を撮り始めたという。「映画監督になってやるぜ!」みたいな決意をした瞬間って意外となかったと思っています。

他にやれるとか、やりたいことがないからずっとやってるっていう感じで。本当に最近こう「竜也すごいね」とか同級生とかに言われるんですけど、何か辞めたみんなの方がすごいなって僕的に思っていて。やめられる方はすごいし、他にやりたいことが見つかるっていうのは素晴らしいことだと思っています。

【実写からアニメに移行したきっかけ】コロナ禍に電子決済用のiPadで始めたアニメ制作

Q:実写からアニメ映画の監督に移行され経緯をお聞かせください

鈴木竜也監督

学生時代は友達がいなくても学校という環境があるので、チームで映画を作れるという環境があったんですけど、社会人になって東京に出てきて、それで自主制作で作品を作るっていう仲間がやっぱり見つからなくて。

脚本とかだけ書いて5年間ぐらいダラダラ働いてたんですけど。その時にコロナになって、お店も休業だったので、店にあった電子決済用のiPadを勝手に借りパクして持ち帰って。それでアニメを作ってみようかなと突発的に思ったというのがきっかけで。

お金がかからないし、ひとりで短い作品なら作れるかもしれないと思ったのが、始まりだった気がします。

【鑑賞者としての映画との関わり】鑑賞頻度や惹かれる作品の特徴とは?

Q:鑑賞者としての監督と映画の関わりについてですが。作品選びの方、鑑賞頻度をそれぞれお聞かせください

鈴木竜也監督

劇場の方が多く観るのですが、レンタルが観たい時は一気に1日何本も観るみたいな衝動的なところもあり。ここ数カ月の宣伝期間は人生レベルで忙しくて全然観に行く気にもなれなかったんですけど、本来は週1ぐらいで観たいタイプです。

最近は割と話題になっている作品をまず観に行くようにしつつ、それと同時にずっと走っている好きな監督たちもポンポン出てくるので、それは確認したいなみたいな感じで観に行くことが多いですかね。

惹かれる作品の傾向としてはバラバラなんですけど、「新しそうだなぁ」みたいな作品や演出がすごそうだなと思う作品を観に行きますかね。あとはアカデミー賞作品とかは大体観に行くような気がします。

『無名の人生』を鑑賞後に堪能したい鈴木監督の生涯ベストムービー

今回紹介いただいた“鈴木監督の生涯ベスト映画”の数々は、監督自身の創作の源泉であり、初の長編アニメーション映画『無名の人生』にも大きな影響を与えています。

『無名の人生』を鑑賞したあとは、ぜひこれらの作品にも触れてみてください。作品に込められた思いや背景が、より鮮明に浮かび上がり、監督の視点をより深く感じ取ることができるはずです。

映画『無名の人生』は、2025年5月16日より全国劇場にて絶賛公開中。

▼取材・文:増田慎吾

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