阪神の“剛腕”湯浅京己は2022年と別人?投球スタイルの変化がデータで浮き彫りに
11日の西武戦で救援失敗…今季初黒星
阪神・湯浅京己が11日の西武戦(ベルーナドーム)で救援に失敗し、今季初黒星を喫した。
森下翔太の先制タイムリーと佐藤輝明の18号ソロで2-0とリードして迎えた9回だ。伊藤将司、及川雅貴と継投した藤川球児監督は、3番手として9回の頭から湯浅をマウンドに送った。
湯浅は先頭の滝澤夏央から三振を奪って1死を取ったものの、続くセデーニョを四球、ネビンを死球、外崎修汰に内野安打で満塁のピンチを招く。ここでベンチは慌てて13セーブを挙げているクローザー・岩崎優を投入したが、源田壮亮に同点タイムリーを許し、最後は炭谷銀仁朗に痛打されて、まさかの逆転サヨナラ負けとなった。
湯浅は2022年に43ホールドを挙げて最優秀中継ぎ投手に輝いたが昨年、難病の胸椎黄色靱帯骨化症の手術を受け、ブランクを作った。今年4月29日の中日戦で684日ぶりの一軍登板を果たし、この日の試合前まで17試合に登板して無失点を継続していた。
通常なら9回頭から左腕・岩崎に任せてもよさそうな展開だったが、右打者が並び、岩崎は5月30日から登板していなかったこともあって指揮官は湯浅を投入したのだろう。結果的にはそれが裏目となり、痛い星を落とした。
成績だけを見れば完全復活を思わせる湯浅だが、タイトルを獲得した2022年とデータを比較すれば完全には戻っていないことが分かる。下の表を見てほしい。
ストレートの球速、空振り率、被打率すべてダウン
湯浅と言えば、キレのいいストレートが最大の武器。平均球速149.8キロ、最速156キロをマークしていた2022年は全体の60%を占め、空振り率12.1%、被打率.171と優秀な数字を残していた。
しかし、今季は平均球速147.3キロ、最速154キロにとどまっており、空振り率4.8%、被打率.222。投球割合は39.9%と大幅に減少している。
フォークも2022年は空振り率19.3%で投球割合32.9%を占めていたが、今季は空振り率7.7%に下がっており、投球割合も19.8%に減っている。
その分、大幅に増えたのが、2022年はほとんど投げていなかったカットボールで、投球割合は36.5%。しかも、被打率.100と優秀な上、空振り率も20.8%と高く、今季の最大の武器となっている。
2022年はストレートとフォークで攻める投球が身上だったが、今季はカットボールでかわす投球を覚えたと言っていい。手術を経たからこその進化かもしれないが、以前とは別人とも言えるのだ。
コントロールにも苦しむ?与四球率も悪化
湯浅の「変化」は他の数値にも表れている。9イニングで奪う三振数を示す奪三振率は2022年の10.4から今季は7.88に低下。変化球が増えたためか、9イニングで与える四球数を示す与四球率も2022年の1.86から4.5に悪化している。
投球コースを見ても、2022年は44.0%だった低めが52.1%に増加。低めに集めるのは投手として望ましいことではあるが、剛速球で勝負していた2022年の湯浅は高めのストレートも武器になっていた。
実際に高めストレートの空振り率は2022年の14.8%から今季は5.1%と大幅にダウン。全打球に占めるゴロ割合は2022年の50.7%から56.8%に増えていることから、バッタバッタと三振を奪っていた以前の湯浅とは違い、打たせて取る技巧派の側面をのぞかせていることが分かる。
さらにボールゾーンの割合が2022年の53.1%から2025年の56.3%に増え、ストライク率は67.3%から61.6%に減少。以前よりコントロールに苦しんでいることもデータが証明している。
投球スタイルが変わろうと結果を出してくれるなら何の問題もないのだが、少なくとも以前のような剛腕のイメージは持たない方がいい。3セーブ17ホールドを挙げていた石井大智が側頭部への打球直撃で登録抹消され、ブルペン陣の再編は喫緊の課題。藤川監督の今後の起用法も注目される。
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記事:SPAIA編集部