唯一無二の馬券師・弥永明郎『伝授』第3回 馬券的にはGⅠより新馬戦のほうが面白い理由&その見立て方
「馬券で勝つ、儲ける」という観点で言えば、俺は不確定要素が多く人気の盲点になる馬が多い新馬戦や2歳未勝利戦は、馬券的にはGⅠより面白い&魅力的だと思っている。
今回は新馬戦の見立て方を中心に、俺なりの見解を書いていきたい。
新馬戦の人気は新聞の印で決まるだけで信用度は低い
今まで一度も競馬で走ったことがなく、過去の成績で能力を判断できない新馬戦というのは、競馬新聞の印が人気に直結する。
その印を打つ側の新聞記者だって新馬戦の予想は未知の要素が多いから、“調教時計が速く出た”“取材して陣営が良いと言っている”“どこの牧場、どこの厩舎、どこの馬主だ”とかで重たい印が重なる。それは果たしてどこまで信頼できるのか?
調教時計を鵜呑みにしてはいけない
そもそも、調教は厩舎によって方針が違う。速いところをよく出すのが好みの厩舎もあるし、あまり出さない厩舎もある。なのに、その数字だけ見て何がわかるのか?
一般的に5Fが63秒や64秒の時計で速いと言っている。だけど考えてみれば、勢いをつけて走らせて、負担重量だって背負っていないので競馬より斤量だって軽い場合も少なくない。
古い話だが、例えばヒシアマゾンが新馬戦の調教で破格の数字を出していた。そこまで目を見張るような時計ならさすがに“これは走るな”と思うけど、それ以外の調教時計は気にしない。
具体的な数字でいうなら1Fが9秒台だったら速いなと思って気にするけど、たとえば11秒8と12秒2と何の差があるのか? せいぜいコンマ4の差しかないじゃないか。しかも、11秒8を出すのは全く難しいことではない。
ではなぜ細かい調教時計を気にするかというと、新馬戦は不確定要素が多くてわからないから調教時計に頼らざるを得ないだけ。俺はちょっとした時計の差に関しては気にしていない。
大型馬だからダメということはない
世間一般では“小柄な馬は仕上がりが早い”“大型馬は仕上がりが遅い”などと言われているが、馬体がデカくたって初戦から仕上がる馬はたくさんいる。ただ大きいと馬体を持て余すために、俗にいう“緩い”状態になってしまうこともある。でもこれは仕上げられなかったというだけで、「馬体が大きい」=「新馬戦で仕上がりが悪い」ということはない。
ちなみに仮に仕上がっていなかったとして、昔みたいに馬の入れ替えがあまりない時代だったら、また仕上げ直して1~2ヶ月後に使うことができたけど、今は一度外に出たら厩舎の入れ替えの関係でいつ戻って来られるかわからない。そんなことをしていたら、どんどんデビューが延びてしまうから、仕上がり切っていなくても使うことが多いのが現実。
他馬のローテーションを狂わせられないし、厩舎も馬の入れ替えが本当に難しいという状況があって、これはしょうがない。馬券を買う側としては、仕上がっていない馬は買わなければいいだけ。それを見極めるのは少し難しいけどな。
枠は外が断然良い
ちなみに枠番に関しては新馬戦に限らず、断然外枠が良いと思っている。これは馬にとって外枠が走りやすいという視点ではない。
俺は、どんなジョッキーでも下手に乗ってしまうかもしれないとの前提で予想しているから、というのが理由だ。
大前提として内から完璧に逃げられるという場合を除いて、内枠だと前が詰まって道中一回ブレーキがかかってしまうことが多い。外枠ならブレーキをかける必要がない。
外枠から外目を通って距離ロスが10mや20m増えたところで、内枠で一回ブレーキをかけて追い出しが遅れるくらいなら外の方が良い。
俺は馬券を買う馬の能力がそのレースの中では他の馬より上だと見通しているから、10m距離を多く走るハンデくらいならカバーできると思っている。それで勝てないようだったら、自分が馬券を買った馬の能力を見誤っていたから諦めがつく。諦めがつかないのは内にいて揉まれて負けたときだ。これは悔しさが残る。だから俺は基本的には外しか買わないし、中山の1200mなんかは大外不利というけど、俺はラッキーだって思うよ。
とはいえ、例外もある。頭数が少なくてバラけるような展開になりそうな場合や、北海道の開幕週とかで圧倒的にラチ沿いが止まらないような馬場なら話は別。
だけど、そういった限られた条件の時を除けば東京でも中山でも外枠だったら喜んで買う。逆に狙っていた馬でも、内枠に入ったなら買い目を少なくする。
次回も新馬戦について書きたいと思っているが、パドックで判断できることを中心に書く予定。パドック派の読者は楽しみにしていてほしい。
弥永 明郎
(やなが・あきお)
唯一無二の馬券師。デイリースポーツ「馬サブロー」の美浦取材班・看板記者。グリーンチャンネル中央競馬中継のパドック解説でもお馴染み。狙った穴馬は決して逃さない「競馬界のゴルゴ13」。業界歴は長く、騎手、厩舎関係者、馬主など人脈も幅広い。