【森崎ウィンさんに10の質問】言葉を越えて広がる表現者としての可能性
【10の質問】コーナーでは、各界で活躍するみなさんと「学び」の関係を深掘りします!
日本に限らずハリウッドやアジアで活躍の場を広げる森崎ウィンさん。新しいことに挑戦し続けるための原動力やエンターテイメントの世界ならではの語学の必要性を伺いました。
※2024年3月29日に公開されたインタビューです。
森崎ウィン(もりさき・うぃん)
2024年度よりNHK英語講座「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」のナビゲーターを務める。2018年にスティーブン・スピルバーグ監督映画『レディ・プレイヤー1』で主要キャストとしてハリウッドデビュー。NHK大河ドラマ『どうする家康』徳川秀忠役、ミュージカル「SPY×FAMILY」ロイド・フォージャー役など映画、ドラマ、ミュージカルに多数出演。歌手としても活躍中。
1. ミャンマーに生まれ、小学4年生の時に日本に来られたと伺いました。ミャンマー語、日本語、英語を話されるそうですが、それぞれの言語はどのように身につけられたのでしょうか。
ミャンマーで生まれ育ったので、第一言語のミャンマー語は自然と身につきましたね。その後、日本の公立の小学校に転入し、日本語だけの環境に身を置くことで、日本語を覚えていきました。英語は、ミャンマーで一緒に住んでいたおばあちゃんが家で英語塾をやっていたので、そこでベースとなるものを学んだんです。幼いときから英語を聞いていたので、英語に耳が慣れていて、発音もきれいと褒められますね。
2. 小学4年生だと、さまざまな面で苦労があったのではないでしょうか。
単純に自分の気持ちを相手に伝えられないのは、結構しんどいですよね。人間は言葉というツールを持っていて、それで自分の感情表現をしたりしますが、それができないのが辛かったです。ボディランゲージには限界があって、生活するためには、言葉を学んでいかないといけないというのを、そのときすごく実感しました。小学校では、校長先生が1年間、国語の授業のときは別室で僕に日本語の先生を付けてくれて、ひらがなから学ぶことができました。
―――生活するためには言葉を学ばないといけないということを小学生で実感されたとは…。母語のほかに言語を身につけるのは簡単なことではないですね。
3. 一方で、おばあ様に教わっていた英語ではそういった経験はなかったのでしょうか。
日本に来てからは、日本語を覚えるので精一杯で、英語に触れる機会は減っていました。でも『レディ・プレイヤー1』に出演するにあたり、撮影が始まるまであらためて英語の勉強をしました。それでもイギリスでの撮影では、細かいニュアンスやディテールを伝えるのがとても大変だったんです。でも約4か月間の滞在の半分を過ぎたくらいで、英語で自分らしいジョークを言えたときがとてもうれしかったのを覚えています。みんなが笑ってくれたのがうれしかったですね。
―――言葉が通じた喜びは大きいですよね。
4. 『レディ・プレイヤー1』への出演で英語力はかなり伸びたのですね。
やっぱり必要に駆られて学ぶことが、自分の学びでは大事なんだなって思いました。当時使ってた言葉って、今ぱぱっと口から出ないです(笑) でも、行けばできるんだと思えるのも、ミャンマーでおばあちゃんが幼い時から教えてくれたおかげだなと思います。
5. ハリウッドやミャンマーでも俳優・歌手として活躍されていますが、どういったきっかけで海外に挑戦しようと思ったのですか。
そもそも僕らの仕事って、「海外に行こう!」「この映画に出よう!」と言って出られるものではないんですよね。オーディションに受かって、チャンスをものにすると楽しくて、もっとこういう仕事をしたいと思って、そこに向けてまた頑張るという繰り返しなんです。
僕はいろいろなところに行くのが好きで、日本だとあらゆることを知りすぎて躊躇したり、大人として我慢している自分がいるので、海外なら何も知らないで子どものように飛び込んで行けます。それがとても好きだし、たぶんそんな風に自由な状態になったほうが、僕の良さが一番出るんですよね。慣れない環境のほうが力を発揮できていると思います。
―――言語力を生かせるからという理由が一番ではなく、自分が一番輝けるから、というのが森崎さんらしさなのかもしれませんね。
6. 海外でのお仕事で、自分の良さが出たなと思ったお仕事は?
昨年、ベトナムでライブをしたんですけど、英語がそこまで通じるわけではない場所で、歌って、頑張ってMCをして、という経験をしたら、「俺、結構人を巻き込めるな」という自信がつきました。でも同じことは二度あるわけではないので、その都度、環境に適応しながら自分のベストを出していくために、普段からいろいろな経験を積むことが大事なんだと思います。結局すべてがつながっていると感じるので。
―――チャンスをつかむ、それに向けて努力する、経験から学ぶというサイクルを繰り返しているのですね。森崎さんのお仕事の幅の広さが、どこから来ているかわかった気がします。
7. 海外でお仕事をされる際に、森崎さんにとって語学はどのような存在ですか。
僕らがやっているエンターテインメントって、言葉が通じなくてもつながれる瞬間がたくさんあるんですよね。でもそれは完成されたものの中だけの一瞬であって、作り上げていく過程で「こういう音を出したい」「ライティングをこうしてほしい」とか、結局言葉で伝えないと感動を生み出すことはできないんです。そういう意味で語学って重要だなと感じたので、とにかく英語だけでも、自分が使う範疇でかまわないから身につけないといけないと思っています。言葉を知っているのと知らないのでは、出来上がるものが全然違いますからね。
―――ベストなものを仲間と作り上げるために語学が必要ということですね。
8. 「学び」に関連して、趣味で続けているものはありますか。
カメラです!動画を撮りたくて始めたのですが、最近は写真を撮っています。カメラは奥が深すぎます。昨日撮れた写真がおもしろくて。車を止めた後ろに草むらがあって、素通りしてしまうようなところなんですが、レンズ越しでみるとこんなにおしゃれな写真が撮れました。それで、あらためてものは切り取り方だなと悟りました。
―――お仕事でもそうですが、森崎さんは新しい経験や価値観に出会うことを楽しまれているように感じます。
9. 森崎さんが語学やカメラを続けられる秘訣はなんだと思いますか。
単純に好きかどうかじゃないですか。本当に好きだと勝手にやっているんですよね、人って。僕にとっては、カメラがそうです。英語に関しては、英語が好きというよりもエンターテイメントが好きで、アジアの作品にもっと出たい、脚本からプロデュースしたいという夢があるので、それを叶えるためのツールとしての必要性から学び続けています。
10. 最後に「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」ナビゲーターとしての抱負を教えてください!
海外の作品に出演したときには、英語で表現しきれなくてもどかしい思いをすることもありました。今でもまだ英語を学ぶ身なので、教えるという立場ではなく、学習者のみなさんと同じ目線でやっていきたいです。「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」は、たった5分間に、ためになる英語が散りばめられていて、さらに毎日英語に触れられるというのがよいですよね。僕も一緒に学ぶ気持ちでナビゲーターを務めていきたいと思っています。
みんな、とにかく毎日聞いてね!
―――今日はありがとうございました。森崎さんがハリウッドやアジアで活躍されている背景には、語学が堪能であることはもちろん、エンターテイメントの世界で自分が一番輝ける場所を探求し、挑戦し続ける姿勢があることが分かりました。そして経験を積むほど、作品作りの過程で仲間と言葉で通じ合う必要性を感じ、英語を学び続けているそうです。
そんな森崎さんと、「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」で一緒に学ぶのが楽しみですね。