愛知県豊田市は“クルマの町”だけじゃない。芸術や紅葉に色づく秋のローカル豊田へ
“クルマの町”の印象が強い豊田だけれど、実は旅先としても魅力的。モダン建築で有名な美術館から渓谷の紅葉狩りスポット、豊かな自然が育んだ農産物のグルメまで、秋の“お出かけ欲”を満たすスポットがいっぱい!
モダンからレトロまで、中心街と山間部をはしご
豊田市駅から少し歩き、坂を上る。背中が汗ばむ頃、水平垂直の対比が美しいファサードが現れた。上野の『東京国立博物館』の法隆寺宝物館などを手がけた、谷口吉生(よしお)設計の『豊田市美術館』だ。
「日本で最も美しい美術館の一つと評されることもあります。最近は“映える美術館”として、写真を撮りに来る若い方も増えました」と館長の高橋秀治さん。
入館すると、やわらかな光の吹き抜け空間のあとに狭い廊下、広大な展示室や市街を望む風景と、次の空間へ移るのにワクワクさせられる。
「空間に強弱があるのが当館の特徴。市内には妹島(せじま)和世の『逢妻交流館』、黒川紀章(きしょう)の『豊田スタジアム』など名建築が点在するので、建築めぐりも楽しめますよ」
豊田市駅からすぐの西町で、空き家再生に携わっている小野健さんも、実は一級建築士。2020年には元行政書士事務所をカフェの『think(シンク)』(現在休店中)に、2021年には元美容室をドーナツとホットドッグの店『knot(ノット)』に改装した。
「6~7年前から公民で連携し、空き家リノベーションに取り組んでいます。最近、西町は若手の出店が増え、盛り上がってます!」
秋の豊田旅には『豊田市民芸館』もはずせない。館長の都筑(つづく)正敏さんいわく「民藝という言葉が生まれ、もうすぐ100年。ここで暮らしの中に美しいものが隠されていることを感じてもらいたいです」。
第3民芸館では陶磁器や水屋簞笥(たんす)、茶釜などを常設展示。100円で購入したコーヒーを囲炉裏端(いろりばた)で飲みながら民芸品や紅葉を眺めていると、心からくつろげる。
最後は、山間部の足助(あすけ)にある香嵐渓(こうらんけい)へ。もみじのトンネルから待月橋の先の五色もみじ、香積寺(こうじゃくじ)まで、紅葉のグラデーションに息を呑む。
お寺を参拝後、振り返ると山門で額縁のように切り取られた紅葉が。あっ、ここにも芸術があった。
「香嵐渓」渓谷沿いの木々が真っ赤に染まる
巴川(ともえがわ)沿いや飯盛山の山肌を、約4000本のカエデが錦秋に染める。11月1~30日は「香嵐渓もみじまつり」が行われ、17時頃~21時にライトアップ! 週末には竹灯り約1000基が並ぶ「竹灯りの香積寺」など、イベントも多数実施される。
☎0565-62-1272(豊田市足助観光協会)
見学自由
愛知県豊田市足助町飯盛
名鉄三河線豊田市駅からバス42分の香嵐渓下車すぐ
『豊田市美術館』名建築家設計の館内で名建築家の企画展が!
21世紀以降の作品、現代美術を中心に約3700点を収蔵。コレクション展では、谷口吉生設計の美しい展示空間で収蔵品の一部を鑑賞できる。
☎0565-34-6610
10:00~17:00受付、月(祝の場合は開館)と展示替え期間休
常設展300円(企画展は別途)
愛知県豊田市小坂本町8-5-1
名鉄三河線豊田市駅から徒歩15分
『豊田市民芸館』静かな森に囲まれ、用の美に没入
陶磁研究家で豊田市名誉市民の本多(ほんだ)静雄が尽力し、東京・駒場の日本民藝館にあった大広間と館長室を移築。それらを整備した第1民芸館と第2民芸館で企画展を開催する。常設展示の第3民芸館や、平安時代に造られたものを移築復元した穴窯も必見だ。
☎0565-45-4039
9:00~17:00、月休(祝の場合は開館)
無料(有料の展覧会あり)
愛知県豊田市平戸橋町波岩86-100
名鉄三河線平戸橋駅から徒歩15分
『御菓子司かゑで本舗 加東家』新旧・和洋の各甘味に固定ファンあり
玄米を使った干菓子の「かえで」170円ほか、老舗の味を継ぐ和菓子と3代目考案の洋菓子が店の両輪。キャラメリゼされたカリッと食感の表面と、裏ごししたサツマイモの豊かな風味が特徴の「レアポテト」は人気が高く、11月の休日のみ前日までに要予約。
☎0565-62-0168
10:00~17:00、火休(11月は無休)
愛知県豊田市足助町本町4-9
名鉄三河線豊田市駅からバス44分の足助学校下下車、徒歩2分
取材・文・撮影=鈴木健太
『旅の手帖』2024年11月号より